明るい仙人さんのレビュー
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このユーザーのレビュー
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モーニング Mourning
小路幸也 / 実業之日本社文庫
気づいたら大人になってしまった人への物語
8
はじめは、ロードムービーだと思いながら、読んでいました。
1961年生まれで、大学生活を一緒に過ごした40代の大人たちが、
1980年代を振り返る物語でした。
自分は、1968年生まれのなので、少し時…代が遅いですが、
この時代の雰囲気がよくわかります。
まだ何者でもない頃のことを、何者に成ってしまった、
また、大人になってしまったことを感じます。
30代では過去を振り返らない、でも40代になると、なぜか過去を考える。
失ってしまったものもあるけど、得たものもある。
今の、普通の日常こそがありがたい、そう思える物語です。
映画なら、エンディングを見逃すな!そういいたいですね。 続きを読む投稿日:2014.10.19
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狛犬ジョンの軌跡
垣根涼介 / 光文社文庫
ミスマッチの意外性
2
「室町無頼」がベストセラーリストに入っていることを知り、この作者の本を読んでみたいと思い、検索しました。
そこで、目の止まったのが、この本です。狛犬とジョン、表紙の絵。本の紹介を読んでみても、どんな物…語か、さっぱりわからない。
でも、ベストセラーを書く人が、つまらないものは書かないだろうと思い、読み始めました。
あっという間に、物語の中に引き込まれました。
いい物語は、一つ一つの出来事が偶然を装いながら、まるで、その出来事が起こるのが必然であったかのように思わせるものだと感じました。
この物語には、ディテールにリアリティを感じるから、登場人物の感じたことを自分でも体験したような気になるんだと思います。
狛犬とジョン、そして、これを背後で支えるリアリティに浸りたい人は、手に取ってみてください。 続きを読む投稿日:2016.09.20
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夜の底は柔らかな幻(上)
恩田陸 / 文春文庫
読み人を選ぶ物語
2
先週、「蜜蜂と遠雷」を読んで、衝撃を受けたので、恩田作品の2作目は、予想のつかない物語にしようと思い、手に取りました。
この物語は、読む人に親切なものではありません。
5W1Hの、いつ、どこで、という…説明がありません。
進行していく物語の中で、読み手の想像力に任されているような気がします。
それにもかかわらず、一度、物語の中に入り込んでしまうと、一気に読ませる力があります。
歯ごたえのある物語を読みたいと思っている方には、おすすめです。 続きを読む投稿日:2017.02.19
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人間の幸福
宮本輝 / 幻冬舎文庫
平凡という意味
1
「骸骨ビルの庭」を読み終えた後に、手にとりました。
「骸骨ビルの庭」では、特異なキャラクターが多かったのですが、この作品では、平凡な普通の人たちが登場します。
しかしながら、読み進めると、この人たちに…は、みな秘密があり、心に闇を抱えて生きている。
平凡や普通というのは、自分だけが思っているだけで、実は、そんなものは存在しないということを感じさせられました。 続きを読む投稿日:2013.09.27
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天主信長〈表〉 我こそ天下なり
上田秀人 / 講談社文庫
本能寺の変の新解釈
1
なぜ本能寺の変が起こったのか。これは永遠に解決されない謎だと思います。だからこそ、いろいろな解釈が生まれます。この本では、読んでみると、この手があったか!という面白さがあります。
ちなみに、私は、岡田…斗司夫さんがニコ生で発言していた、織田信長は、生涯20回以上、謀反を起こされているから、本能寺では、それが成功しただけ、という説明に、納得するところがあります。
歴史は、偶然により生じることが多く、それが後からは、必然のように感じるところが面白いですね。 続きを読む投稿日:2013.10.05
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徳川家康 トクチョンカガン
荒山徹 / 実業之日本社文庫
これが、歴史伝奇エンターテイメント!
1
歴史にifや謎はつきものですが、徳川家康は、関ヶ原で死んでいた。
関ヶ原以降は、影武者が・・・・
隆慶一郎の「影武者徳川家康」は有名で、いまも面白いです。
この小説は、隆氏へのオマージュであると同時に…、挑戦でもあります。
そう、影武者の正体が、違うのです。
はじめは、違和感がありますが、読んでいるうちに気にならなくなり、
作者の術中にここちよくはまっていきます。
そして、山田風太郎にも通ずる、忍者の秘術、そして、柳生とくれば、
読まないわけにはいきません。
そして、期待を裏切りません。 続きを読む投稿日:2014.10.18