チェリー
ニコ・ウォーカー(著)
,黒原敏行(訳)
/文春e-book
作品情報
主演・トム・ホランド(『スパイダーマン』)&監督・ルッソ兄弟(『アベンジャーズ』)で映画化決定!
ニューヨーク・タイムズが2018年の必読書に選出。ワシントンポストなど各紙絶賛!
「ニコ・ウォーカーは服役中の銀行強盗だ。そして必読の作家でもあることを本書で証明した」――ワシントン・ポスト
「会話は音楽的でリアルで、すぐそばから聞こえてくるようだ」――ニューヨーク・タイムズ
戦争から帰った青年はなぜ連続強盗犯になったのか。痛々しい青春小説と荒々しい犯罪小説を交錯させて獄中作家が綴ったベストセラー。
この小説では、人生の転落の軌跡が生々しい言葉で語られる。大学時代の恋人との日々、兵役についてイラクの戦地で目にした凄惨な体験。
PTSDを癒やすためのドラッグ――それが彼を追い詰めてゆく。この世界の底の底へ。
スタッカートする荒い文体と会話――戦争とドラッグと犯罪。破滅するしかなかった青年を痛ましく描き出す。
デニス・ジョンソン『ジーザス・サン』とクエンティン・タランティーノの融合と評され、
アメリカ文学界をワイルドに揺るがしたデビュー作。
著者紹介
ニコ・ウォーカー
アメリカ・クリーヴランド生まれ。2005年から2006年にかけて衛生兵としてイラクに派遣され、7つの勲章を受ける。
しかし復員後にPTSDに苦しみ、やがて2011年に銀行強盗で逮捕され、複数の強盗罪で懲役刑に。デビュー作である本書は獄中で書かれた。2020年11月に出所する予定である。
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商品情報
- シリーズ
- チェリー
- 出版社
- 文藝春秋
- 掲載誌・レーベル
- 文春e-book
- 書籍発売日
- 2020.02.20
- Reader Store発売日
- 2020.02.20
- ファイルサイズ
- 1.1MB
- ページ数
- 384ページ
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この作品のレビュー
平均 3.2 (7件のレビュー)
-
最初に「著者告知」として、
「これはフィクションです。
ほんとに起きたことは一つもないです。
人物は一人もほんとにはいないです。」
とある。
別に特別なことを書いてあるわけじゃないのに、なんだかそこは…かとなくおかしみがある文章。人柄がにじみ出ている感じ? 原文を読んでないけど、きっと名訳!
で、本文に入るわけだけど、新兵(=チェリー)としてイラクに派遣された部分を読んで、告知は真逆で、「きっと大部分が本当のことなんだろうな」と思った。
読んでいて、虚しさが伝わってきた。
「何か意味のあることをしに来てるんじゃなくて、爆弾で怪我するか殺されるかするのが目的で、毎日時間をむだにするのが目的で、ここに来ている」という言葉。
大事な人を亡くした遺族には読ませたくない、と思った。
これって、遺族にとって、考えうる限りで最も聞きたくないことなんじゃないだろうか。多くの人が無意味に死んでいった、だなんて。
「チェリー」って象徴的なタイトルだな、と思った。
誰もが混乱してめちゃくちゃなことをやっているように見えた。
PTSDについてはサラっとしか書かれていなかった。
些末なことはすごく饒舌に書かれているのだけど、本当は何よりこのPTSDこそ語られなければならないことなんじゃないかという気がしたのだけど。
きっとまだ生々しくそこにある問題だから書くのは難しいことなのだろうな、というのがなんとなく想像できた。今もまだ苦しんでいるからなのかもしれない。
読み終わって思ったのは、ついこの間読んだヘミングウェイとほとんど同じことが書かれている、ということ。
この本の著者とヘミングウェイはそれぞれに違う時代の、違う理由で始まった、違う装備の戦争に従軍したわけだけど、書かれていることはほぼ同じだった。
戦争というのは、人を外側だけじゃなく内側からも傷つけていくのだということ。
多くの無意味な死や意味の分からない残虐さがあちこちで無造作に見られるということ。
二人の作品のスタイルは全然違うけれど、二人とも書いていることはそのようなことだ。
最後の謝辞がかなりおもしろくて驚いた。
ふつう本の謝辞って、人の名前がずらずら書いてあって飛ばし読みして終わりなんだけど、この本の謝辞は、素人がどのようにして本一冊分を書いたか、それをどんな人がどんな風にかかわってプロの作品にしたか、がすごく分かりやすかった。
こんなに読ませる謝辞は初めてかも。続きを読む投稿日:2020.11.06
著者がイラク戦争から復員後、PTSDとなり、銀行その他の強盗による服役中に書いたという本書。冒頭、主人公はクスリを買うお金欲しさに強盗を働いている。話は遡り、主人公がクスリのせいで大学を中退し陸軍に入…隊、数ヶ月の訓練後イラクへ派遣、一年後復員するも、次第に薬物中毒となり、やがて銀行強盗に手を染めていく…これ、私小説やん!と思うのだが、著者によると『フィクションであり、実際に起こった事は1つもない』のだそう。主人公のクズっぷりは相当だが、死が日常にある戦場で見たものや、クスリに依存していく様子は、とんでもなく惹きつけられた。
著者は今月、仮出所するとのこと。続きを読む投稿日:2020.11.15
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