東京の幽霊事件 封印された裏歴史
小池壮彦(著者)
/角川書店単行本
作品情報
谷中霊園にかつてあった五重塔焼失の原因は“放火心中”でなく、“殺人放火死体遺棄事件”だという噂。電車が通ると響く女の悲鳴と1962年の日暮里駅で八人の犠牲者を出した三河島事故との関係は? 池を埋めると家が滅ぶという神田お玉ケ池。日本人の意識の底流に潜む“お玉”とは。何度も追突事故が発生する中央線の“魔のカーブ”、事故多発の踏切・・・・・・。川のそばの“出る”と噂の幽霊屋敷、繰り返される連続火災に“助けて、出られない!”という女性の悲鳴、水難者の霊といわれる“黒い人の幽霊”譚、戦時中の練兵場だった公園に現れる女の幽霊と被爆死の関係は?かつて事件や事故のあった場所、恨みを残して亡くなった人の思い、いわくつきの場所を歩き、現代から過去へ思いを巡らす。土地の記憶に耳を傾け、地元の住人に話を聞き、過去の新聞や歴史資料を集め、写真を撮る。消えゆく声なき声を蒐集した、怪談ノンフィクション。東京十四カ所、番外編として神奈川、群馬県の3名所も収録。単行本用にあとがきも書き下ろし。怪談雑誌『幽』に連載された傑作。
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商品情報
- シリーズ
- 東京の幽霊事件 封印された裏歴史
- 著者
- 小池壮彦
- 出版社
- KADOKAWA
- 掲載誌・レーベル
- 角川書店単行本
- 書籍発売日
- 2019.06.28
- Reader Store発売日
- 2019.06.28
- ファイルサイズ
- 38.4MB
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この作品のレビュー
平均 4.0 (2件のレビュー)
-
「幽霊が出る」 怪異を囁かれる東京都内のあらゆる場所、その過去には必ず原因となる事件や事故があり、さらに時代を遡れば、恨みや悲しみが染み込んだ土地の因縁がある。時とともに事件や事故に関する人々の記憶が…風化し、かすかな断片だけが残る。それを核にして、生きている人間のもつ複雑な感情や、社会背景が絡み合って「幽霊」となってゆく――。
そのロジックを、丹念な取材と豊富な史料をもとに解き明かしてゆくノンフィクション。
たとえば佐々木譲の『警官の血』で物語の大きな転換点として描写され、重要な伏線にもなっていた昭和32年に谷中霊園内の五重塔が不審火で全焼した事件。
原因は一般に男女の心中によるものとされている。私自身、谷中近くにあるカフェの奥さんからそう聞いたことがあるが、実は第三の人物による殺人放火死体遺棄事件という一説があるそうだ。心中なら事件は二人で完結する。しかし心中でないなら、事件は犯人が未だ明らかにされないままの凶悪な未解決事件に変貌する。事件が他人事でなくなってしまう恐ろしさにゾッとする第一章「火炎心中異聞」。
さらに、秋葉原にかつてあった万世橋駅。現在では「マーチエキュート神田万世橋」という商業施設に生まれ変わっているかつての駅のほとりにあった、いつのまにか人々の記憶から消えた幽霊屋敷を回顧する第6章「橋のほとりの幽霊屋敷」。江戸時代に景勝地として有名だったという神田御玉ヶ池の、いくつもの時代を経て幾人もの“お玉”が登場し、伝説が作られてゆく遠大な過程を推理する第4章「玉女幻想」。ほかに日暮里や天王洲、新宿やあとがきの国分寺まで、そこに「幽霊」が出る理由を蒐集している。
とどのつまりは「生きている人間が一番怖い」。不思議なことに、この本の中に取り上げられている街に、無性に出かけて行ってみたくなる。読んだ後にはきっと街の印象が変わって見える一冊。
KADOKAWAさんの文芸情報サイト『カドブン(https://kadobun.jp/)』にて、書評を書かせていただきました。
https://kadobun.jp/reviews/3r3ri1cf9xyc.html続きを読む投稿日:2019.08.21
ここ最近、東京都心では日照時間が3時間未満の日が20日以上続いたとかで、なんでも統計を取ってから最長らしい。
ていうか、3時間未満とかいうけど、3時間照ってくれたら歓喜乱舞しちゃうよね、というくらい毎…日雨だ。
その雨、最近大流行りの豪雨はもちろんあるのだが、意外に多いのがやたら量の多い霧雨。
それが朝から夜までのべつまくなしに降っているなんて日、記憶にあるだけでも3日はあったように思う。
でも、そんな音のない霧雨が降る夜は怪談が合うわけで、このウンザリする季節の楽しみだったりする。
というわけで、選んだのがこれw
以前読んだ、この著者の『日本の幽霊事件』がゾクゾクと面白かったので、もう大期待だったんだけど、うーん…、ちょっとその期待の斜め45度にいっちゃったかなぁ~という感じだったw
けっして、面白くないというわけでもなく、ゾクゾクしないわけでもなない。
ただ、なんというか、この著者もずいぶん枯れたなぁ~、みたいな?w
以前の、この手の怪談的な出来事(つまり、幽霊事件か)にずんずん首を突っ込んだルポというよりは、古文書を紐解いてあーでもない、こーでもないと思索をめぐらすみたいな、良くも悪くもそれ相応の年齢の人の書く内容に変わったように感じた。
ただ、この手の本を手にとるのは、自分が梅雨のしとしと雨の夜は怪談が合うみたいに読むように、ゾクゾク感を味わいたくて読む人の方が多いと思うのだ。
それを思うと、この本はそのニーズとは微妙に合わないような?
ただ、この著者の本を何冊か読んでいる人ならわかると思うが、この著者独特の(他の実話怪談の本のように)直接的に怖さを表現しちゃうのとは別種のゾクゾク感、それは依然としてあると思う。
この著者、そこは全然ブレていない。
ブレてはいないのだが、つまり変わった点があって、それが、この著者もずいぶん枯れたなぁ…ということなんだと思うw
それが端的に表れているように感じたのが、お玉ヶ池の章と面影橋の章で、わかりやすいようにちょっと乱暴に言うと、ブラタモリになっちゃっているのだ。
もちろん、この著者の本だから、そこにはお玉ヶ池や面影橋にまつわる怪談や怪事件も紹介されている。
でも、ここではそれはメインのテーマではなく、あくまでお玉ヶ池や面影橋の歴史や由来であったエピソードの一つとして書かれる形となっているのだ。
極端な話、ここに地元のグルメ情報が入っていたら、この著者の本を読みたい人は非難轟々だけど、SNSに載せるネタを探している人からしたらとってもおいしい本になって。本の売り上げは、むしろ上がったんじゃない?なんて思った(爆)
それはもちろん冗談だが、でも、それくらいかつての「怪奇探偵」の頃と比べると変わっているように感じた。
でも、(繰り返すようだが)だからと言って、ゾクゾクしないわけではない。
その場所の歴史(地史)や由来を語る中、さらっと短く語られる怪談、これがその“さらっと短い”がゆえにまさに「怪談」で。いわゆる実話怪談のような、呪いや祟り、もしくは容姿の異様さで怖がらせるのとは全然違う、読んでいて、変にゾクゾクっとくるところがあるのだ。
ブラタモリに近かったりと、この本は今までとは微妙に毛色が違うところがあるのだが、著者の本の特有のお楽しみはちゃんとあるように感じた。
そんなわけで、「おススメ!」と言いたいところ、なのだが。
正直言って、いわゆる実話怪談の本で描かれる、あの怖さを怖いと思う人は、(この本ではなく)そっちを買った方が絶対楽しめると思う。
何よりこの本、結構高いしw
以下は、この本で一番、なるほどなぁ~と感心しちゃった(印象に残った)箇所。
“ダム湖を造った以上は、自殺スポットや心霊スポットになるのは必然のことである。どこの観光地でも経験していることだ”(205ページ)続きを読む投稿日:2019.07.20
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