火星に住むつもりかい?
伊坂幸太郎(著)
/光文社文庫
作品情報
「安全地区」に指定された仙台を取り締まる「平和警察」。その管理下、住人の監視と密告によって「危険人物」と認められた者は、衆人環視の中で刑に処されてしまう。不条理渦巻く世界で窮地に陥った人々を救うのは、全身黒ずくめの「正義の味方」、ただ一人。ディストピアに迸るユーモアとアイロニー。伊坂ワールドの醍醐味が余すところなく詰め込まれたジャンルの枠を超越する傑作!
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商品情報
- シリーズ
- 火星に住むつもりかい?
- 著者
- 伊坂幸太郎
- ジャンル
- 小説 - ミステリー・サスペンス・ハードボイルド
- 出版社
- 光文社
- 掲載誌・レーベル
- 光文社文庫
- 書籍発売日
- 2018.04.20
- Reader Store発売日
- 2018.05.25
- ファイルサイズ
- 0.5MB
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この作品のレビュー
平均 3.7 (236件のレビュー)
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魔女狩り,拷問,公開斬首が日常に
らしさは存分に楽しめます。が,全く罪のない人が拷問され,処刑され
る,という描写(決してエグイ表現はありませんが)にイライラすることは必
至です。
その点はちょっと覚悟して読んでください,と…いう意味の3つ星評価です。
ストーリーのどんでん返しは,うまいという感じは相変わらずです。なるほ
どそう来たか,という。
もう一つ,今回の作品には魅力的な女性キャラがでてこなかったことが個人
的には残念です。続きを読む投稿日:2018.05.26
-
このレビューはネタバレを含みます
平和警察の制度を「集団心理の怖さ」と平たくまとめてしまうのはどうにも雑な気がするので、ちょっと噛み砕いて解釈したい。
レビューの続きを読む
根本には強権力による抑圧体制、恐怖政治があるのであり、「制度の否定が身を滅ぼしかね…ない」という思惑が個人レベルに存在する。それは裏返すと「制度の肯定は自身の安全に繋がる」事なのであり、少なくともうわべでは、現状の肯定が個人レベルで加速していくことになる。加えて本作のような相互監視社会においては、さらに現状否定は抑圧されざるを得ないだろう。ただ、本作の設定で面白いのは、この平和警察制度はあくまで各地で順次試験導入されているものであり、抑圧から免れたい市民は宮城県から引っ越してしまえば良い、という条件が与えられていることだ。即ち、彼らは望んで宮城県内に住み続けている事になる。市民を繋ぎ止めているのは、やはり「極悪人が処刑される」という事に対する熱狂や享楽意識であったように思う。こうした排外意識への熱狂は、正義の大義名分やマジョリティ側の制度、強権の後ろ盾があると尚、後ろめたい感情を正当化する拠り所がある事によってその感情がエスカレートする事がよくわかる。作中序盤で沢山例に挙げられていた中性の魔女狩りはまさしくそうだし、ナチ党ファシズムやスターリン政権下にも似たような風潮はあっただろうと思う。また作中の処刑シーンから察するに、処刑が行われるのはせいぜい2ヶ月に4,5人程度といった具合だっただろうから、政令指定都市仙台市民の多くにとっては、「自身が処刑される」あるいは「身近な、何の罪もない人が処刑された」という経験とは関係がなく、実在する都市伝説を傍観している感覚だっただろうから、余計に熱狂が加速したのではなかろうか。
「悪の討伐」によってスカッとしたい!という感情は我々が潜在的に持つものであり、皮肉にもこの本の感想にすら「最後スカッとしたかった」「みんなで倒す展開が見たかった」といった物がチラホラ見かけられるのもそれを示していると思う。時にこうした大衆意識を逆手に、ポピュリズム的な偏向統治が進行する危険性も認識しておかなければならないなぁ、と思った。
真壁が述べていたように、弱者強者が入り混じって不確定であるから安定しているのであり、強権によって正義/悪を確定すると、正義の暴走を招くということもよく示されていたと思う。そうした暴走の極地として「処刑をされた事が危険人物である何よりの証拠」であるという風なトートロジカルな言説もいくつか見られた。
正義/悪は限りなくグレーで確定するものではなく、どちらか一方に行き過ぎていた時に調整する、程度のことしかできないのだ、と振り子になぞらえて締めくくられる諦観的なラストはとても腑に落ちる物があった。やっぱり真壁すき、すき、大好き。かっこいい。高橋一生とかが演じてくれないかな。かっこいい。続きを読む投稿日:2024.05.22
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