瞽女うた
ジェラルド・グローマー(著)
/岩波新書
作品情報
紺絣に丸笠,手ぬぐい頬かむりの盲目の女性が,門々を巡り歩き三味線伴奏で唄う――関八州・甲信越を中心に活躍した旅芸人,瞽女は,縁起物の門付け唄から人情話や時事ネタの語りものまで,芸能の最新流行を絶えずレパートリーにして渡世を凌いだ.その芸と生業,とりまく社会の姿を掘りおこし,「歌を聴く」文化を考える.
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商品情報
- シリーズ
- 瞽女うた
- 著者
- ジェラルド・グローマー
- 出版社
- 岩波書店
- 掲載誌・レーベル
- 岩波新書
- 書籍発売日
- 2014.05.20
- Reader Store発売日
- 2014.09.18
- ファイルサイズ
- 8.2MB
- ページ数
- 272ページ
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この作品のレビュー
平均 3.4 (9件のレビュー)
-
瞽女という言葉はいわゆる難読語に当たるのだろうか。「ごぜ」と読み、三味線などの楽器を手に家々を回り門口で歌を歌って暮らしを立てる、視覚障害者の女性芸能集団である。「ごぜ」は「盲御前(めくらごぜん)」の…略である。
著者は元々、米国でピアニストとして学位を取ったようである。初来日した1985年に瞽女うたと出会い、その世界に魅了される。以来、日本近世芸能の研究者として、瞽女の研究を息長く続けている。2007年には、『瞽女と瞽女唄の研究』(名古屋大学出版会)という大著を著している。こちらは学術書だが、本書は一般向けに瞽女の世界へと読者を誘う案内書である。
個人的な話で恐縮だが、自分の出身地は、衰退していった瞽女が最後まで残った地域の1つである。父親が盲学校に勤めており、同僚の先生に瞽女の研究をしていた人もいたこともあって、瞽女という存在は何となく知っていた。家には普通の昔話の本に並んで『瞽女のごめんなんしょ昔』という本もあり、瞽女さん=家を回って歌を歌ったりお話をしたりする人、というイメージはあった。だが、本当の瞽女の門付けを聞いた覚えがない。昭和40~50年代には、従来のような形で生計を立てているというよりも、すでに研究対象であったということだろうと思う。
前置きが長くなったが、本書はこうした職能集団がいかにして生まれ、そしていつどのように衰退していったかを語る。いくつかの瞽女うたの楽譜やそれに関する音楽的考察もあり、興味深い。本書には音源は付属していないが、出版社による本書HPにいくつかの音源がリンクされている。
盲女の記録としては、古くは『日本霊異記』に奈良時代の話が収録されている。『今昔物語』にも見られるが、説話集であるこれらに収録される話は、目の見えない人が仏の功徳により開眼したといったストーリーである。
芸能者としての盲女に触れる文献は中世にちらほら見られはじめる。こうした女性たちは人が多く集まる名刹等で芸を披露し、糊口をしのいでいたようである。室町時代には貴族たちに召し抱えられた盲女の話も出てくるが、乞食のような生活を送っていたものも少なくはなかったようだ。
江戸時代になり、こうした盲女たちは「業」を持つようになってくる。身分制度の固定とともに、各階層に奉仕し、対価を得るものが出てくるのである。これらは、武家に仕えるもの、中流社会に音楽を提供するもの、そして町人・農民に唄を聞かせるものに大別することが出来る。富裕層に仕えたものはともかく、民衆の経済力に依存するものは、得てして厳しい条件にさらされた。不安定な生活を支えるために作られたのが瞽女の組合である。組合は各地に成立し、巡業の手配や、弟子の育成、生活全般の支援などを行った。この形のものが、明治期以降も残る瞽女の原型である。
江戸時代は瞽女を含めて、旅芸人の隆盛期であった。経済の発展もあり、人々は訪ねてくる瞽女を迎え、唄を聞き、もてなした。藩から慶弔時に施物があったり、扶持が出る例もあった。厳しい旅生活に耐え、ときに晴眼者から差別的な仕打ちを受けたりしながらも、瞽女たちは社会に受け入れられ、プロの芸能集団として腕を磨いていく。
瞽女が急速に衰退するきっかけとなるのは明治維新である。「近代化」の名の下に、「芸人」への締め付けは厳しくなる。「保護」すべき視覚障害者が互助することは許されず、各地の組合は解体に追い込まれる。
これに加えて、大正から昭和へと時代がうつるとともに、蓄音機が普及していき、東京で作られる「ヒット曲」があっという間に席巻するようになる。瞽女の唄う唄は「古い唄」と認識されるようになり、次第に時代に取り残されていく。
著者の手引きで瞽女の歴史を辿りつつ、HPの音源を聞き、楽譜の曲を弾いてみる。どこか懐かしく、ふくらみがある世界が広がる。
「終わらない終わり」と題された終章では、じっくりと読ませる考察が展開される。
私たちが失ってしまった柔軟なリズム感や細かい装飾音の多い旋律はどこへいってしまったのだろうか。それを取り戻すことは可能なのだろうか。
その問いは、瞽女唄に止まらず、現代文化そのものへのまなざしを促している。続きを読む投稿日:2014.09.15
2005年5月25日。新潟県にある福祉施設で「最後の瞽女(ごぜ)」
と言われた小林ハルが亡くなった。
録音であったが、彼女の唄を聴いたことがある。決して美声では
ない。だが、低く重く響く声は足元を揺…さぶるような迫力があった。
瞽女(ごぜ)。視覚に障害を持つ女性の旅芸人のことである。
本書は瞽女の誕生から晴眼者へと受け継がれた瞽女唄の
変遷を追っている。
小林ハルさんの評伝を読んでいるので瞽女さんに関しては
多少の知識はあったが、その歴史が中世から始まっていた
とは知らなかった。
しかも「瞽女」という言葉は、「盲御前」という呼び方が変化した
ものだったのとは。ちなみに「御前」は女性の尊称である。
大奥にはお抱えの瞽女さんがいたり、近世には各種の規制に
より旅芸人の行動範囲が狭まったりと何かと困難が伴った。
そして、明治維新以降はほぼ日本全国にいた瞽女さんは
廃業を余儀なくされ、昭和の時代には甲信越地方に僅か
の人数が残るだけになった。
政府による規制だけではない。蓄音機やラジオ・テレビの
出現が、瞽女さんたちの生業を難しくさせた。
季節ごとに各村落を巡って、門付けを行う瞽女さんは、娯楽
の少ない時代にはその訪問が待ち望まれたのだろうね。
本書には瞽女唄の歌詞や楽譜も掲載されている。残念ながら
私は楽譜が読めないのだが。
口承伝承の文化であった瞽女唄。今では視覚障害のない
女性が引き継いでいるようだが、それは瞽女唄であって
瞽女唄でないような気がする。
尚、小林ハルさんについては『鋼の女』(下重暁子 集英社
文庫)がおすすめ。壮絶で、過酷な人生を生きた人である。続きを読む投稿日:2017.08.20
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