宵待草夜情
連城三紀彦(著者)
/ハルキ文庫
作品情報
大正九年の東京。祭りの夜に、カフェ「入船亭」の女給・照代が殺された。着物を血に染めて店を出てきたのは、同じ店で働く鈴子。鈴子の恋人・古宮は、彼女が殺したのかと考えるが──。はかない男女の哀歓を描き、驚きの結末を迎える表題作ほか五篇。人の心の底知れぬ謎、深く秘められた情念から、予想をはるかに超える真実が立ち上がる。不朽の傑作ミステリー、待望の新装版。(解説・泡坂妻夫)
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商品情報
- シリーズ
- 宵待草夜情
- 著者
- 連城三紀彦
- ジャンル
- 小説 - ミステリー・サスペンス・ハードボイルド
- 出版社
- 角川春樹事務所
- 掲載誌・レーベル
- ハルキ文庫
- 書籍発売日
- 2015.05.18
- Reader Store発売日
- 2023.01.15
- ファイルサイズ
- 1.4MB
- ページ数
- 307ページ
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この作品のレビュー
平均 4.3 (12件のレビュー)
-
連城ATB1位「花虐の賦」収録
「戻り川心中」と並ぶ最高傑作集。男女の色恋を繊細かつ緻密に描き、複雑に絡み合う美しき反転の数々で読者を魅了する。「花虐の賦」はまさに至極の一作。「戻り川心中」をも凌駕…する驚愕の動機と、鴇子の生き様に強く心を突き動かされる。「未完の盛装」も氏らしい超絶技巧が光る。続きを読む投稿日:2019.11.24
今回も連城作品である、連城三紀彦ファンとして常々利用しているサイトがあり、次に何を読むべきか?刊行年月日からの関連性、作品に共通するテーマ、などなど膨大な情報に溢れており、大い活用させていただいている…。
https://w.atwiki.jp/renjodatabase/ 連城三紀彦データベース(仮)
紹介させていただきます、興味ある方訪問をお勧めします。
ここのサイトにより注目していた作品が今作「宵待草夜情」であり「戻り川心中」からの流れを汲む、明治期から昭和初期を時代背景に据えた男女の愛憎絡まりつつもミステリとしての定石、事象の反転、伏線の妙 など連城短編ミステリの中でも名著と評されているようである。またサイト内にて短編のオールタイムベスト10が公表されていて(ツイッター上でのアンケートを集計したベストのよう)その中でのベスト1が今回「宵待草夜情」収録の「花虐の賦 」である。2位は「戻り川心中」僅差ではあるようだが、戻り川を抑えての1位である!期待値は非常に高かった。
そして読了した訳であるが、総じて「戻り川心中」と並び立つ傑作であった。流麗なる言葉で綴られたひと昔前の日本、現代とは異なる生活環境、現代にも通じる男女の愛憎、ミスリード、伏線、ミステリテクニックを駆使し美しくも哀しい物語を創造し得ている。
個人ではブクログ上でブックリストに連城作品ベスト3を公開している、1位2位は揺るがないが、3位は再考が必要かもしれない。それだけの短編に巡り合えた。以下作品ごとに己の記憶保持のために…ネタバレあると思います!ご注意してお進みください。
「能師の妻」<第1話・ 篠>
この短編集においては主人公の「女」の名前がサブタイトル的に提示されている。各話には必ず女が濃密に絡んでくる、という読者へのメッセージなのか?作者の明確なる意図は読めないが、なんとなく雰囲気は伝わる。この第1話は花葬シリーズの先鋒を切る予定だったようである、花葬ならではの花のモチーフは桜である。冒頭から桜の樹の下から数十年前の遺骸が発見される、その遺骸の謎を追っていくのが本筋である。
伝統芸能「能」の世界において女であるが故の、篠の業の深さやるせなさに胸がつまる。才能溢れる若き芽との師弟関係においても、その関係は余人には理解し難い関係であり、その関係の発展に苦悩しつつ選択せざるを得なかった手段が、さらに救えない。ミステリ的には人体消失であり、解決は仄めかされるに留まるものの、女の生きざまを近代日本の中でこのように描き、報われない人生を晒してくる。一編めで強く心を揺さぶられる。
「野辺の露」<第2話・杉乃>
こちらの構成は独白形式で進んでいく、義理の姉との不貞関係に端をなす、その夫、語り手の実兄の殺人事件、さらにその犯人が不義の子、という絶望的状況下である。義理の姉との不貞に至る描写が、このうえなく煽情的エロティックであり、まず情景描写からシーンを脳内再生することに我を忘れてしまう。しかしながら隠された真実は恐ろしすぎる女の奸計であり、その暗い復讐の焔を抱き続け、やり遂げた女の怨念に戦慄する。ひたすら怖い女の物語であった。
「宵待草夜情」 <第3話・鈴子>
時代は大正ロマンの只中、病に疲れ死に場所を求めさすらう男と、カフェの女給の一時の出会いを描く。刹那的であるようでいて深い親愛に溢れているような、そんな一時を、著者得意の抒情的筆で綴っていく。今作がこの短篇集の白眉である、と思った。個人的趣向であるが、読み進める毎に、ページをめくる度に豊かな色彩を持って情景が頭に流れ込んでくる。川沿いの半地下のカフェ、ステンドガラスの色合い、ランプの暖かな灯り、男の吐血による鮮血の鮮やかさ、一本の映画を視聴するに等しい情報を活字のみで得られた。この感覚は個人的ベスト1「桔梗の宿」以来といっていい。そして連城作品において読者に求められる読解力に気づく、色彩を正確に理解する能力である。これを伴うことによって連城作品を読む深みが格段に増す!間違いないと思う。浅葱色(あさぎいろ)これがどんな色彩かを例を持って理解できるだろうか?色彩の描写には古風な言葉を多用しがちなのが連城作品であり、その言葉には単に色を指定するだけでない深い意味が存在する。
今作では、この「色彩」が物語の本質に深く関わっている、この真相に辿り着くための伏線が巧妙に張られており、真実に気づく風景と色彩とが相まってミステリとしての完成度も男と女の小説としての完成度も両立し得ていた。
今作のトリックについては過去の既読作品で経験があるが、(横溝正史、麻耶雄嵩)その本質については今作の描写が正確無比であるようだ、自分自身も誤解をしていた。宵待草の小さな花弁の儚さが心に刻み込まれた。
「花虐の賦」 <第4話 鴇子>
今作も期待が高かった、そして期待通りの素晴らしい、正に連城作品らしい傑作だった。こちらも時代は大正である。演劇界に突如として現れた新星、女優川路鴇子、演出家絹川幹蔵の自死を巡る物語である。今作に関してはミスリードの巧妙さが群を抜いている。そこから炙り出される事象の反転は連城作品中でもド級の出来栄えであると思う。ベスト1を名乗るだけの出来ではあると思った。
鴇子の一見ぶっ飛んだ行動の裏に隠れていた真実は、辛く切ない。自らの思いを心からの誠意で受け入れてもらえず、破滅の道を選んだ絹川もまた哀しい。ミステリと男女の愛憎絡まる恋愛ドラマを見事に両立させた、作家連城三紀彦らしい作品だった。ただ個人的に残念に思うことがあり、その部分が今回短編集において、宵待草の後塵を拝することになった。鴇子には幼い実子がいたのに…ここを彼女はどう考えていたのだろ?一切筆は割かれていなかった。
「未完の盛装」 <第5話・葉子>
今作は時代が最も新しく、戦後から現代に続く。短編の中に目まぐるしいほどの場面変換があり、何がどうなっているのか?理解が追い付かない?と思っていたら、ドンデン返しがキレイに決まって、最もミステリらしいミステリであった。なんとなくであるが、連城誘拐モノに似たテイストだったかもしれない。
総じて素晴らしい作品が凝縮された最高の短編集だった。一番気に入ったのはタイトルになっている「宵待草夜情」であった。続きを読む投稿日:2023.03.02
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