江戸は両国回向院裏の松坂町。ここにひとりの隠居侍が住んでいた。剣術指南役を務める絹川半四郎である。だが隠居といっても、幸四郎ばりの二枚目にして見るからに粋な姿で、住まいの離れ座敷には日ごと夜ごと、入替わるように女どもがやってくると噂になっていた。 そんな半四郎も剣の腕は確かで、若い頃は将軍御前試合に出場した過去もある。ある日のこと、その腕を見込んだ北町奉行・遠山影元から、驚くべき物を手渡された。奉行の花押とともに“切捨御免”と墨書された奉書紙である。探索方として市井のあれこれを調べて欲しいという・・・
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本所松坂町の質屋の離れに住まう一人の隠居侍。絹川半四郎を名乗るこの男、四十男にしか見えない風貌と粋な出で立ちで、いまだ色恋沙汰のさめやらぬ色惚け侍であった。だが、もう一つの顔があった。剣術指南役を務める半四郎は、なにを隠そう、北町奉行の遠山左衛門尉より斬捨御免状を下された“影目付”として暗躍していたのである。 そんな半四郎に、生まれ故郷・遠州相良に赴いてほしいとの、奉行の命が下った。どうやら藩領の遠州灘に抜け荷騒動の種があり、未曽有の国難になるかもしれないというのだ。国の根幹を揺るがす悪だくみは決して許さぬ──! 闇の真相を探りながら、齢五十三の剣豪が、念流奧許皆伝の衰えぬ太刀筋で多勢の敵に立ち向かう!!
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江戸は両国回向院裏の松坂町。ここにひとりの隠居侍が住んでいた。剣術指南役を務める絹川半四郎である。だが隠居といっても、幸四郎ばりの二枚目にして見るからに粋な姿で、住まいの離れ座敷には日ごと夜ごと、入替わるように女どもがやってくると噂になっていた。
そんな半四郎も剣の腕は確かで、若い頃は将軍御前試合に出場した過去もある。ある日のこと、その腕を見込んだ北町奉行・遠山影元から、驚くべき物を手渡された。奉行の花押とともに“切捨御免”と墨書された奉書紙である。探索方として市井のあれこれを調べて欲しいというのだ。大名屋敷、吉原、町家……。五十の色男侍が江戸を舞台に駆け巡り、問答無用の太刀筋を魅せる期待の新シリーズ、開幕!
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