治療のための精神分析ノート
神田橋條治(著)
/創元社
作品情報
「いのちの核はコトバでないものに支えられながら、ヒトの生はコトバによって支配されている」。著者は臨床の現場で、長くこの矛盾を乗り越えることをみずからのテーマとしてきた。コトバを治療の道具とする精神分析の治療の場で、文字言語を絶対的なものとせず、治療者と患者との間の時々刻々の関係性の変化に目をこらすことで、著者は治療の場に立ち上がってくるいのちの営みを掬い上げる。そうすることで、精神分析用語として知られるコトバの真に意味するところ、治療の本質を説いてゆく。精神分析の世界への導きに始まり、先達の教え(=理論)の咀嚼、さらには独自の技法と修練の方法を紹介するなど、半世紀以上にわたる臨床の集大成ともいえる著者、畢生の書。
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商品情報
- シリーズ
- 治療のための精神分析ノート
- 著者
- 神田橋條治
- 出版社
- 創元社
- 書籍発売日
- 2016.05.20
- Reader Store発売日
- 2016.08.19
- ファイルサイズ
- 2.2MB
- ページ数
- 192ページ
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この作品のレビュー
平均 5.0 (2件のレビュー)
-
【目次】
まえがき
I 精神分析の周辺
アナログとデジタル
出会い
自然は折り合う
文化汚染
いのち
病
自然治癒力
学習から文字文化へ
文字文化の特質
文字文化の挑戦
フラクタル
認識か…ら学習へ
再学習と脱学習
二種の環界
臨界期
いのちへの援助VS人への援助
病因・症状・治療
II 精神分析の入り口
治療や援助
精神分析治療の骨格
無意識と意識と前意識
食と性
絆
退行
三昧
自由連想
愛着障害
認識とコトバ
因果図
葛藤図
「と」
III 精神分析治療の世界
自由と不自由の往復
体験と観察
退行と自然治癒
現実と空想
週七回分析と月一回分析
分析治療の適応と不適応
IV 理論
理論と物語
道具としての理論
再び葛藤図について
前意識
抵抗
防衛
抑圧と解離
投影
攻撃性
転移
逆転移
行動化
治療機序
過去
未来
再び退行について
洞察と統合
徹底操作
終結と中断
V 技法
技法総論
再び治療機序について
聴き方
コトバ
再び逆転移について
治療プロセスの素描[その1]─治療の開始期
抱え
前後での会話
質問
沈黙
起き上がる・確認
身動き
キャンセル
治療プロセスの素描[その2]─「抵抗」と「介入」
介入
再び抵抗について
再び転移について
再び質問について
治療プロセスの素描[その3]─自由連想の充実と「解釈」と「洞察」
解釈
いま・ここでないもの
夢
再び沈黙について
自己開示
フラクタル
VI 修練
初心と初志
コトバの修練と感性の修練
精神分析の外(振る舞い)
精神分析の外(内省)
先達への傾倒
研究会や学会
訓練分析
スーパーヴィジョン
ケース
付録 胎児期愛着障害の気功治療
説明/診断/治療/変法
あとがき続きを読む投稿日:2024.04.11
このレビューはネタバレを含みます
・鳥と霊長類では視力が進化した。五感のなかで視力は対象との距離が遠い。一望が可能なので不肝臓がつくりやすい。ただし、視力は原理的に外界を平面増として捉える。広く淡い感覚情報である。そのことは、弁別の命…名の作業には有利である。
レビューの続きを読む
・人は文字文化が描き出すイメージとして外界を認知する。それが雰囲気として新たな第二の境界となる。いかも文字文化はデジタルであるから、雰囲気というアナログとの間の細かな不一致は常である。「理解とは誤解の一種である」は真理である。
誤解の程度を修正したりより生きやすい誤解に変えたりするのが、認知行動療法の作業の核である。そこから、新たなアナログとの出会いを導き、自然治癒力を発動させるのが治療機序である。
他方、人の環界のうち、文字文化を介して取り込まれ新たな雰囲気となっている部分すなわち誤解に基づく第二の環界を、命名作業によって元の文字文化というデジタルに戻し、ヒトとしてのいのちになじんでいる雰囲気としての第一の環界との出会いの体験部分、すなわち命の「素の体験」と第二の環界との闘争図を作成するのが精神分析治療であり、その手段が自由連想法である。
・いま一つ、遺伝子の積極性を仮説するならば、適合する臨界期ではいのち全体が輝くはずである。ある年齢での幼児の水遊びでの高揚はその例であり、あの高揚の雰囲気が数多く出現するような子育てをしたいし、治療にもこの雰囲気を持ち込みたい。宮崎県の都井岬の野生の子馬が母馬の乳を探って甘える様子は生き生きと愛らしい。他方、北海道の日高牧場のサラブレッドの子馬は生後すぐに飛び跳ねる。
・いのちの学習を導くのは、いのちの近くから列挙すると「雰囲気」⇒「イメージ」⇒「音声言語」⇒「文字言語」⇒「文字文化」の順である。この学習の流れは、感性の後は必要に応じて逆流する。つまり、矢印が逆向きになる。たとえば、文字言語は「内言語」を介して「疑似音声言語」としていのちの学習につながる。他の矢印についても、実例を想像すると感性訓練になるはずである。
精神分析治療で意識化していいのは音声言語以降である。
・抑圧とは、そのままでは葛藤の関係となる精神活動の片方を、意識から遠ざけるコーピングである。
・精神分析概念の多くと同様、投影も当人の表象界における事象であり、結果として生じた認識が先入見となり外界認知を歪めるのが過程の内実である。
そう考えると思考が柔らかになり、治療者側の認知も投影による認知の歪みという先入見の影響下にあるとの影響下であるとの連想が生まれる。
この連想から先入見を排除した認知を志向するのは誤りである。
先入見は全学習の成果である。学習を排した認知とはアメーバの外界認知のレベルへの退行であり、訓練の一環として取り入れることは有用でも、現場でそればかりに徹するのは手間がかかり過ぎるだけでなく危険ですらある。続きを読む投稿日:2016.11.02
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