この作品のレビュー
平均 4.3 (10件のレビュー)
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自国の3百万あるいは被侵略国の犠牲者2千万、どちらにつくか、という分裂(=ねじれ)の感覚を私たちは抱えている。それを理解した上で、そこから抜け出すために、どちらも公共性として串刺しに捉え、法を"決め直…す"
文学、語り口、の切り口から展開していて面白い続きを読む投稿日:2023.03.13
著者は、日本をはじめ敗戦を経験した国にとって、戦後とは「ねじれた時間」だとする。今まで真だったものがひっくり返るからだ。戦勝国の論理が通るようになり、敗れた自国のこれまでの「真」は「虚」になる。いわば…「ねじれ」を中核に抱えて在立する社会となる。おそらくそれが、復興や成熟の原動力にもなるのだろうけど、日本にいたっては「ねじれ」がありながらも、「ねじれ」として認めていない国だとする。たとえば、ついさっきまで「鬼畜米英!」と叫んでいたのが、あっという間に「民主主義万歳!」となり、アメリカを慕うようになった変わり身の速さなどをいっているのだろう。
こうした浅薄な日本がいま進んでいる道が危惧される。本書が単行本で出たのが17年前。その頃は、戦争責任を認め謝罪する政府談話が発表されるような時代だった。その頃にして、著者は日本の来し方といまのあり方に対し、ねじれを認めていない国だとして疑問を投げているのだが、果たしていま、再び続編を書いたらどのように今の日本を論じてくれるだろうか。
先日、新聞で小熊英二が、日本が「慰安婦」問題などに関して、国際理解を得る一つの方法として面白いことを述べていた。日本は、戦前の日本(大日本帝国)と戦後の日本(日本国)がひとつながりだと認識して、自身の過ちだからこそ肯定したがらず、それが他国との軋轢を呼んでいる。でも、戦前と戦後とは違う国なのだととらえ、戦後の日本として戦前の日本のやり口を非難、反省することができるのではないかというもの。
本書の著者がいう「ねじれ」の解消に向けた取り組みといい、小熊のいうように真摯に自国のあり方を見つめることといい、そうした行動を欠いてきた国の何といやしく、まずしげなことか。
本書には「敗戦後論」のほか、太宰治やJ.D.サリンジャー、ハンナ・アーレントといった文学者、哲学者に関する論考もあるのだが、そもそもこれら人々の著作を読んだことがないので、いまいちわからず。続きを読む投稿日:2014.10.18
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