【感想】わたし、定時で帰ります。(新潮文庫)

朱野帰子 / 新潮文庫
(244件のレビュー)

総合評価:

平均 3.8
56
95
64
9
6
  • 残業なんか、やめちゃおう

    私たち、平成世代の気持ちを代弁しているよう。

    「働き方改革というが、そうそう簡単に残業を減らすのは難しい。」そんな意見をよく聞くし、無理矢理減らした残業は、どこかにしわ寄せがいっているかもしれないことも確かだ。

    一方で私は、『クリエイティブな仕事を続けていくためには、日頃のインプットを継続すること、またそれによって自分の引き出しを増やしていくことが大事。』そう考えて仕事をしているので、「仕事を定時で終えて帰る」のは優先的なことで、毎日定時で帰ろうと、特急で仕事をしている。(もちろん、帰れない日もたくさんあるのだが。)

    「わたし、定時で帰ります」は、タイトルが私の気持ちをそのまま言ってくれていて、書店に並んだときからワクワクした本だ。

    主人公の結衣は、仕事中毒だった父親を反面教師に、毎日定時で帰ることを信条としている。結衣が教育係として指導している新卒の新人・来栖も同じく『定時で帰る』価値観を持っているのだが、そのほかの社員は『残業するのは当たり前』の仕事スタイルが定着していて、定時に帰る二人をよく思っていない。
    そんなときに、『残業しなければ絶対に片付かない』と言われる大きな緊急案件が入ってくる。周囲は、「残業して乗り越えよう」というやる気に満ちた雰囲気。「そもそも残業前提なのはおかしいのでは」と格闘する結衣。果たして、結衣は残業しない仕事スタイルを貫けるのか…、この職場の意識を変えることができるのか。という話。

    職場としては、定時で帰ってOK。でも、残業をする人はたくさん。これは、職場あるあるではないだろうか。
    もちろん、仕事量が多過ぎて、残業するしかないという人は多くいると思う。

    しかし、それでも。残業しない工夫をしているか、終わらせようという確固たる意思を持っているか、その仕事量を客観的に分析して上に掛け合っているか。そして、上に立つ人間は、皆が残業しなくていいように考えて管理する責任があるのではないか。
    残業の多い職場ほど、仕方ない、と諦めが蔓延しているように思う。感覚が麻痺している職場だってありそうだ。

    就活をする人はブラック企業ではないか、ということを極度に気にする。どこの職場だって変わらなければいけない部分なのだ。

    自分はどうゆうふうに働くか、を問うてくる。
    そして、また同時に、自分の仕事への努力(仕事を早く終えるための方法の一つは、処理速度をあげることですよね)、スキルアップについても、問う一作だ。
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    投稿日:2019.04.28

ブクログレビュー

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  • まよひが

    まよひが

    残業を強いられる環境をインパール作戦になぞらえてるところが面白かった

    グロさんのキャラがよい

    福永さんにムカついてムカついて…
    程度はともかくとして、こういう上司っているよね…

    投稿日:2024.05.01

  • 04きれこんぶ

    04きれこんぶ

     黄色と黒が勇気の印だった時代、その頃の働き盛りは時間を気にせず働いた。昆虫の世界でも、安全の世界でも黄色と黒は危険を示す色合いだ。それを手にする心境はもはやワークハイ中毒状態なのかもしれません。24hの文字をあちらこちらに目にするのを違和感なく感じてきたのは、今では異常だったと思う。
     他人の苦悩など気にも留めない残党は、少子化の後押しもありまだ組織に縋っている気がします。老害が自覚され物言える管理職が社会を担うにはもう少しでしょうか。
     ストーリー展開の要素には、働きすぎや苦楽の落差が生む家庭への影響や健康面への影響、恋愛・結婚など多岐にわたる多面的な状況も読み取れました。
     続きがあるようですので楽しみです。
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    投稿日:2024.04.13

  • aoi sora

    aoi sora

    転職し仕事がキツ過ぎる毎日、自分の気持ちのままのタイトルに惹かれ、これだ!と購入、あっという間に速読。仕事をすることをこんな風に文字化され共感の嵐、極端な場面もあるが、ワークライフバランス大事。
    この初版は平成31年2月。5年前の景色だから、少し違和感あるかなーと読む前躊躇したけど、全く。
    会社の変化のあゆみは遅くとも、新しく入ってくる人で、会社の新陳代謝も進むのかな。初版から5年進んだようで、今はまだまだ進んでないなーと読み終わったときのまず感想。そうだ!会社のために自分があるのではない、自分のためにこの会社でありたい。(平成かなり前半入社のわたしより)
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    投稿日:2024.04.03

  • りの

    りの

    この本に出会う前に見た過労死のニュースがとても衝撃的でなかなか頭から離れなかったのが、図書館で本を探している時に見つけた”わたし、定時で帰ります”にたどり着きました。

    この本の内容は日本社会にありふれているであろう自体で特に変わったことはないけれど、主人公が登場人物と真っ当に向かい合ってるからこそ理解できること、考え方の違い、価値観、時代の変遷がわかりやすく綴られていてとても読みやすい本でした。

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    投稿日:2024.04.02

  • 甘いパンよりしょっぱいパン

    甘いパンよりしょっぱいパン

    このレビューはネタバレを含みます

    東山結衣
    ネットヒーローズ株式会社。晃太郎とは二年前に分かれている。二十八歳。
    制作部ディレクター。

    三谷佳菜子
    結衣にひそかに「皆勤賞女」と呼ばれている。転職組。

    来栖泰斗
    結衣が教育係をしている新人。高学歴を引っさげて入社してきた。容姿もよく、仕事の覚えもまあまあ早いが思ったことをすぐ口にする。なにかあるとすぐに辞めるという。

    種田晃太郎
    結衣より三つ年上の社員。同じチームのサブマネジャー。転職組。
    結衣の元婚約者。

    福永清次
    マネジャー。晃太郎が前に勤めていたベンチャー企業の社長。

    王丹
    結衣が仕事帰りに寄る上海飯店の女店主。中国語の翻訳を依頼している。

    吾妻徹
    結衣と同じチーム。仕事はマイペースで進める。

    諏訪巧
    結衣と一年前から付き合い始めた。結衣が担当した企業の公式サイトを、巧の会社が引き継ぐことになり、営業を担当していた巧と打ち合わせする間にしたしくなった。

    種田柊
    晃太郎の九歳年下の弟。社外人二年目で会社を辞めて以来、食事とトイレと風呂以外、もう二年自分の部屋から出ていない。いわゆる引きこもり。アカウント名〈愁〉。

    結衣の父
    今年で六十四歳。

    結衣の母

    東山忠治
    二十四年前に亡くなった結衣の父方の祖父。

    賤ヶ岳八重
    結衣の二歳年上の先輩。結衣が新人時代の教育係。産休を取っていたが、双子(空と海)の出産後産休を6週間に短縮し、育休をとらずに職場復帰する。

    牛松翔
    星印工場株式会社のウェブ担当者。

    丸杉宏司
    福永を引き抜いてきた執行役員。
    突然退社し、福永には何の情報もなかった。

    石黒良久
    結衣より二つ年下の三十歳。創業時からのメンバー。管理部ゼネラルマネジャー。「グロ」と呼ばれている。砂糖中毒。

    武田
    星印工場の広報課長。牛松の上司。

    三橋
    巧の部下。

    灰原忍
    取締役社長。三十歳の時に、当時勤めていた会社を辞め、大学時代に所属していたサークルの後輩らを誘って起業。その中には現役大学生だった石黒もいた。

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    投稿日:2024.04.01

  • のぼのぼ

    のぼのぼ

    このレビューはネタバレを含みます

    読み始めてすぐ、「あれ?この話知ってる・・・?」と感じて、吉高由里子さんの顔が頭に浮かんだ。そうか、これ昔ドラマ化されてたんだっけ。

    主人公(30代正社員、女性、独身、入社10年目くらい、まだ管理職ではない)は、会社を定時で帰ることをモットーにしている。それは信念があってのことで、ただの怠け者というわけではない。生産性を上げることに努力もしている。しかし会社は、「基本残業ありき」の雰囲気があり、主人公を白い目で見ているひともいる。
    ある日、ブラックな働き方を」強いる上司が現れ、主人公は全力を尽くすも、残業を余儀なくされる生活となる。
    決して「自分さえよければいい」という考えではなく、「みんなが定時で帰れる会社にしたい」という入社当時の思いを持ち続けており、主人公は捨て身で策を講じる。
    後半になるにつれ、ついつい読むペースが速くなる。ちょこっと恋愛要素もある。
    こういうひといるよなー、っていうひとがたくさん登場する。あっと言う間に読めたし、最後の展開は私は笑ってしまった(婚約者との両家顔合わせの日の出来事のこと)

    途中、「インパール作戦」(戦時中の話)が出てきて、勉強になった。引用というか、ストーリーにめっちゃリンクしているので、意図せずも記憶に残る・・・!
    (参考)インパール作戦 wikipedia
    https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%91%E3%83%BC%E3%83%AB%E4%BD%9C%E6%88%A6

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    投稿日:2024.02.27

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