【感想】アウシュヴィッツの図書係

アントニオ・G・イトゥルベ, 小原京子 / 集英社文芸単行本
(147件のレビュー)

総合評価:

平均 4.4
69
45
10
2
0
  • 絶望の淵でいかに生きるべきかを問う感動作

    読書すら禁止のアウシュビッツ=ビルケナウ強制収容所。たった8冊の本を命を懸けて守る少女ディタ。絶滅収容所とも呼ばれるその中では、常に死の恐怖と隣り合わせ。1日に何千という命が何の躊躇もなく流れ作業のごとく殺されていく。さらに暴力、飢え、チフス、コレラ、悪臭、シラミ、強制労働。生きていくこと自体が辛い中にあって、人間らしさや希望を保つ原動力となるのは紙の本や教師たちの話す物語、生きた本だ。勉強や本が嫌いという日本の子どもたちにぜひ読んでもらいたい一冊。そして90歳近い現在のディタの生き様にも感服。続きを読む

    投稿日:2019.11.02

ブクログレビュー

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  • minia

    minia

    実話をもとにしたフィクション。だが、ほぼノンフィクションに近いと思う。

    辛く悲しい気持ちで読み進めたが、これは人類である以上、知るべき内容だと思う。

    知ることしかできないということは、知ることならできるということ。

    まずは知ることから。
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    投稿日:2023.11.03

  • 暁月

    暁月

    このレビューはネタバレを含みます

    アウシュヴィッツには行ったことがあった。この本の主人公であるディタが収容所に送られるほんの少し前の年齢くらいのときに。当時のことはもうよく覚えてないけど、メガネと髪の束と暗い収容所の空気だけをよく覚えてる。
    アウシュヴィッツの物語を読む度見る度に、ここで生き延びようとした人たちの生命力に驚きを覚える。運命による抑圧をどうにか跳ね飛ばそうとするその気力に、人間の底力を感じて、毎回涙が止まらなくなる。一方で、運命によって退けられてしまった人たちへの共感と悲しみも。自分はここにいれられてどちらの側に行くだろう。右と左にわけられるだろう。子供がこんなところに入れられて、果たして1日でも正気でいられるだろうか。子供のために体を売れるだろうか。
    戦争の愚かしさをこうやって目の当たりにする度に、今でも世界で続けられている同じようなことに絶望する。戦争によって人間性を奪われるすべての人たちに悲しみを覚える。どうやったらやめられるんだろう。どうして人は忘れるんだろう。
    せめて自分はどうにかして愚かしい人間であることを忘れずに、せめて足を踏み外さないように、生きていければなと思うばかり。

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    投稿日:2023.08.18

  • haru

    haru

    アウシュヴィッツ強制収容所内にあった秘密の図書館の物語。
    史実に基づいていて、巻末では「その後」も紹介されています。

    言動によって結果として描かれる登場人物たちの内面が、とてもリアルに浮かび上がってきました。
    そこにあった日常。そこにあった日々の営み。心の動き。会話。助け合い。絶望。希望。

    リーダーであるヒルシュの存在に心惹かれました。
    彼のあり方、彼はなぜそこにいて、その役割を担うことを決めたのか。

    どのような場所にあっても、自分が大切にしたいことを大切にし続けていくにはどうしたらよいのかを問われる物語であるように感じました。
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    投稿日:2023.06.18

  • アワヒニビブリオバトル

    アワヒニビブリオバトル

    第80回アワヒニビブリオバトル「出張!アワヒニビブリオバトル@天神さんの古本まつり」で紹介された本です。チャンプ本。
    2021.10.17

    投稿日:2023.05.07

  • Robin

    Robin

    たった八冊の本が、荒野どころか地獄の真ん中で、どれほどの意味があるのだろうかという問いに、ウィリアム・フォークナーが冒頭で答えを示してくれる。
    ⭐⭐「文学は、真夜中、荒野の真っただ中で擦るマッチと同じだ。」⭐⭐

    話の構成は上手く作られていて、現在と過去(アウシュビッツ前とアウシュビッツBⅡb区画に来てから図書係になるまで)が交差しながら、語られる。
    登場人物たちの感情は、冷静に表現され、その分、比喩表現などが上手く使われており、心の動きはよくわかる。
    この世界で感情表現に重きを置かないのは、もっともかもしれない。事実、山のような死体が自分の横を通って行くのにも慣れてしまう日常だったのだから。
    翻訳の力もあるかもしれないが、普通の小説以上に読みやすい。
    前半、収容所内にも関わらず、やや学園ドラマ的なムードが続き冗長さも感じたが、いよいよBⅡb区画に死神が訪れ、ヒロインのディタは家族やたくさんの仲間を失う。
    それまでの、異常な日常の中で彼らが求めた「ささやかな日常」(読んだり、書いたり、学んだり、身だしなみを気にしたり、恋心を抱いたり)を思い返すと胸が詰まった。人はどうにかこうにか飢えをしのぐだけでは生きていけない。ボロボロの本はもちろん、皆で歌う唄、そしてちっぽけな石鹸の匂いや安物の髪留めでさえ、心のよりどころとなり得る。
    だが悪魔の所業は、いとも簡単に彼らの希望の光を踏み躙った。ガス室の描写はもちろんないが、数頁前に登場していた人物の台詞が蘇り、哀しみが聞こえてくる。そしてディタがいた家族収容所も閉鎖され、目の前には死しか見えない過酷な強制労働の日々が続く。
    ユダヤ人というだけでなぜ?

    アイヒマンなど歴史的に知られているナチスの人物も登場する。しかし、彼らもナチズムのプロパガンダに狂わされてしまった“普通のドイツ人”だったのかもしれない。

    幸せをつかむディタだが、プラハで今度は、ソ連共産党に夫とともに苦しめられる。
    時代は繰り返すのか?いや、たとえ繰り返したとしても、ディタのような賢く強い人間を根絶やしにすることなど出来ない。そして必ずや正義は息を吹き返す。
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    投稿日:2023.04.30

  • kitakitapon

    kitakitapon

    [文学は、真夜中、荒野の真っ只中で擦るマッチと同じだ。マッチ一本ではとうてい明るくならないが、一本のマッチは、周りにどれだけの闇があるのかを私たちに気づかせてくれる。]
    まさに本書の冒頭に掲げられたこの言葉を噛みしめる内容だった。
    フィクションの皮を被ったドキュメンタリーと言ってもいいのだろう本書。何故人はそんなにも残酷になれるのかとうち震える反面、そんな環境の中でも本を教育を守った主人公達の尊厳に畏敬の念をおぼえる。
    きっと文学でも漫画でも映画でもなんでもいい、人は何かを見て心を震わすこと無しには生きていけないんだろうな。
    続きを読む

    投稿日:2023.03.17

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