【感想】インディアスの破壊についての簡潔な報告

ラス・カサス, 染田秀藤 / 岩波文庫
(16件のレビュー)

総合評価:

平均 3.8
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4
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  • 気骨のある告発

    16世紀のスペイン人司教が、新大陸=インディアスでのスペイン人たちによるインディオに対する非道な行いを、ときのスペイン皇太子に報告・告発した文書。著者には「インディアス史」という大著もあるが、そちらはとても読んでいられないと思い、こちらに手をつけた。

    以下のような記述がある。「同様に、次にあげる法則(レグラ)に注目しなければならない。つまり、インディアスにおいて、キリスト教徒たちが赴いた所ではいつも、罪のないインディオたちは既述したような残虐非道、すなわち、忌まわしい虐殺や虐待や圧迫を蒙り、しかも、キリスト教徒たちは数々の新しい、また、より恐ろしい拷問を次々と考えだしてますます残虐になっていったという法則である」新大陸まで行くような連中はもともとがならず者ぞろいであったろうが、周りの人間の行い、または、己の過去の行いから影響を受けてエスカレートするのか。インディアスという、彼らにとっての世間から隔絶した環境では、修正も効かずにますます異常が当たり前になっていく。

    しかし、スペイン人の皆が倫理的にも当然の行為としてインディアスを破壊したかと言えば、それもまた一面的で、一方にラス・カサスのような告発者もおり、新世界での征服者たちを牽制するような立法も(全く不十分ながら)されていた訳だ。むしろ、にもかかわらずこれだけの事態になったのが恐ろしい。

    インディオたちを虐殺した連中も、擁護した人たちも、当然にヨーロッパ人中心の考えである。一部に、「悲しき夜」(ノーチェ・トゥリステ)のような反撃はあるが、本書に描かれるインディオたちは余りにも能無しに見えてしまう。

    悪行に加担しないことだけでも組織への裏切りとみなされるであろう状況で、告発ができたラス・カサスの気骨たるや。その源が信仰心と思うと、キリスト教が侵略の道具であっただけに皮肉ではあるが。
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    投稿日:2017.03.12

ブクログレビュー

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  • さやまる

    さやまる

    銃・病原菌・鉄に出てきたので、図書館で見つけて読んだ。なぜか「戦争は女の顔をしてていない」に続けてハードなものを読んでしまった。ショッキングすぎるので心に余裕があるときでないと勧めない。

    なんでこんなひどいことができるのか理解出来ない。
    征服者側からしたって、わざわざここまでしなくたって効率よく利益を享受する手はあったんじゃないか。
    そもそもゴロツキが派遣されていたのだろう。
    宣教という名目があって良心的な修道士がいただけ救いだ。
    魂の救済という言葉が白々しく感じられる

    虐殺と並ぶ程度に、布教が道半ばに終わったことが罪だとされているかのような記述が気に入らない

    これを読み終わってもう一度銃・病原菌・鉄を読もうかとも思う。
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    投稿日:2023.11.18

  • 司書KODOMOブックリスト(注:「司書になるため勉強中」のアカウントです)

    司書KODOMOブックリスト(注:「司書になるため勉強中」のアカウントです)

    255
    [キリスト教化と文明化の名の下に新世界へ乗り込んだスペイン人征服者によるインディオの殺戮と搾取―。残虐非道が日常化した植民地の実態を暴露し、西欧による地理上の諸発見の内実を告発した植民地問題の古典。十全な解説を付した改訳決定版
    。]

    目次
    インディアスの破壊についての簡潔な報告
    エスパニョーラ島について
    エスパニョーラ島にかつて存在した諸王国について
    サン・フアン島とジャマイカ島について
    キューバ島について
    ティエラ・フィルメについて
    ニカラグア地方について
    ヌエバ・エスパーニャについて
    グアティマラ地方とその王国について
    ヌエバ・エスパーニャ、パヌコ、ハリスコについて
    ユカタン王国について
    サンタ・マルタ地方について
    カルタヘーナ地方について
    ペルラス海岸、パリア海岸、トリニダード島について
    ユヤパリ川について
    ベネスエラ王国について
    大陸にあってフロリダと呼ばれる地域の諸地方について
    ラ・プラタ川について
    ペルーにある数々の広大な王国と地方について
    新グラナダ王国について
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    投稿日:2023.08.16

  • djuax

    djuax

    インディアスの人々は悪意や二心を持たない。きわめて恭順で忠実な民。謙虚で辛抱強く温厚でおとなしく、争いや騒動を好まない。口論したり、不満を抱いたりすることもなく、怨みや憎しみ、復讐する気持ちを抱くこともない。インディアスの人々は身体が細くて華奢で、ひ弱なため、重労働に耐えられず、病気に罹るとたちまちに死んでしまう。キリスト教徒(スペイン人)はそうしたインディアスの人々を男女・子ども合わせて1200万以上、残虐非道な形で殺害した。インディアスの人々の方からキリスト教徒に害を加えたことは一度もなかった。インディアスの人々に神の存在を知らせ、キリスト教に導く絶好の機会だったのに、彼らから救いの光を奪ってしまった。カルロス5世陛下がこれら悪事を根絶され、神が陛下に授けられた新世界を救済なさることを期待する。ラス・カサス
    ※虐殺のあった地域。エスパニョーラ島(現ハイチ&ドミニカ共和国)、ジャマイカ、キューバ、ユカタン、グアテマラ、ニカラグア、ベネズエラ、ペルーなど。

    **以下、閲覧注意**

    首枷をはめて重い荷物を背負わせ、疲れたり気を失ったりすると、鎖を外すのが面倒なので、首筋辺りに剣を振り下ろし首を刎ねた。大勢の人の両手を切断し、それを縄に括り、横にわたした長い棒にぶら下げた。棒には70組の手がぶら下げられていた。大勢の女性や子どもの鼻を削ぎ落した。人々を殺してはその肉を猟犬のエサとして互いに売買した。

    子どもや老人だけでなく、身重の女性や産後間もない女性までも、見つけ次第、腹を引き裂き、身体をずたずたに斬りきざんだ。母親から乳飲み子を奪い取り、その子の足をつかんで岩に頭を叩きつけたキリスト教徒もいた。絞首台を組立て救世主と12名の使徒を称え崇めるためだと言って、13人ずつ1組にして絞首台に吊り下げ、足元に薪を置き、それに火をつけて彼らを焼き殺したキリスト教徒もいた。ある邪悪なキリスト教徒はひとりの娘を犯そうと思い、彼女を無理やり連れ去ろうとしたが、母親が娘の手を放さなかった。すると彼は剣で母親の手を切り落とした。しかし娘は言いなりなろうとしなかったため、娘を剣でめった突きにして殺した。

    ※ラス・カサス『インディアスの破壊についての簡潔な報告』1552

    ※日本。豊臣秀吉、九州平定の折、キリスト教徒が九州で寺社の破壊や日本人の貧民を奴隷にして海外に売りさばいていることを知る。同年、キリスト教宣教師追放令を発布、キリスト教の布教を禁止した。1587

    *高知にスペインの軍船(ガレオン船)が漂着。スペインの軍船の水先案内人が口を滑らせる。「スペイン国王はまず宣教師を現地に送り込んで布教させてから征服する」。サンフェリペ号事件1596
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    投稿日:2023.04.28

  • 石井信之

    石井信之

    人はケダモノ同様の「獣性」を内在しているということを嫌というほど見せられた。。

    生命は「永遠」であることと、宇宙に「法」があることを信じたい。

    投稿日:2023.03.12

  • 白藍

    白藍

    吐き気を催す邪悪。
    十六世紀におけるスペインのキリスト教徒が南北アメリカ及び中南米で行った殺戮の記録。修道士ラス・カサスがその虐殺を本国の王に伝え、やめさせるよう書き連ねた。
    海からやって来たスペイン人たちを、心から歓待したインディオ。スペイン人たちはその彼らを切り刻み、殺害し、苦しめ、拷問し、破滅へ導いた。彼らが持つ金が欲しかったがために。
    例えば人口三百万のエスパニョーラ島は殺戮が行われた後インディオは二百人に、人口五十万のバハマ諸島は、十一人にまで減っていた。
    インディオを奴隷として船に積み、水も食料も与えず、死ねば海へ捨てた。その後ろを行く船は、死体を追うだけで海図も羅針盤もなしに航海を続けられたという。
    また、インディオを兵士として使い、食料を与えない代わりに敵の体を食べる許可を与えた。スペイン人たちにとっては敵でも、インディオたちにとっては同族であるのに。
    それぞれの地域の領主や王に対しても暴虐な扱いがなされ、けれど敬意が表され彼らには絞首刑が行われた。ということはつまり、敬意を表されなかった普通のインディオにはそれ以上の惨たらしい殺され方をしたということであり……。
    おぞましい一冊。
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    投稿日:2021.01.26

  • 0107springsteen

    0107springsteen

    酷すぎる話で、これにより中南米は無茶苦茶にされ、その影響は今に及んでいると理解すべきだと思う。
    それでもこういう話は例えば日本の安土桃山の末期にもあっただろう。
    つまり、罪を犯した人間の子孫は、いつまでもその責を負わざるを得ないのだと。何で、いつまで私達が対応しないといけないのか?という疑問ももっともなようで、でもやはりそれに値する重罪を犯したんだ、ご先祖さまたちは。過去からの恩恵も罪も背負ってこその現在なんだと。続きを読む

    投稿日:2020.09.14

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