【感想】愚か者、中国をゆく

星野博美 / 光文社新書
(34件のレビュー)

総合評価:

平均 3.7
6
14
8
3
0
  • 旅行好きであれば面白いかも

    1980年代最後の、中国の列車旅行の様子が詳細に記録されている。著者の20代前半の瑞々しい感性が際立っている。この時代、一番中国と日本の格差が開いた時期であろう。中国大陸の人民が、ようやく資本主義に目覚めた頃で、第二次天安門事件の前後、本書を通じて、現在と対比すると大きく変わってしまった中国の事を考えさせられる。1990年「本命年」日本名「黒い雪の年」が上映されたが、その映画と重なるものがある。続きを読む

    投稿日:2015.09.05

ブクログレビュー

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  • 座頭

    座頭

    星野さんの、ふと目にした光景や出来事を、そういうものなのだと納得するだけでなく、なぜそうなるのか理解しようとする姿勢が大好き。

    中国や中国文化を愛する心、また鋭い観察力と共感力に溢れていて、星野さんが出会う全ての人々が愛おしく、時に憎らしく感じる。
    まるで自分がその場にいて、その空間で同じ時間を過ごしている…星野さんの文章を読むと,いつもそう感じます。

    そして何より、星野博美さんの書く『別れ』のシーンが大好きだ。人だけでなく、街、記憶、時間、光景、そういったあらゆる概念との 別れ を、星野さんは本当に繊細に表現する力がある。
    続きを読む

    投稿日:2022.12.30

  • gakudaiprof

    gakudaiprof

    1987年の中国旅行記である。35年ほど前である。中国の列車のフィールドワークとして読んでみてもとても面白い。これだけの中国の列車の旅について書かれた本はないであろう。ニュースでは帰省の混雑のみ報道されているがそれが一面でしかないということがわかる本である。続きを読む

    投稿日:2022.12.21

  • riodejaneiro

    riodejaneiro

    このレビューはネタバレを含みます

    転がる香港に苔は生えないの著者による中国旅行記?だが、2008年発売だが内容は1980年代後半で、今はもうなくなってしまったであろう光景、似たものがまだ残りつつも大分改善されてしまった状況など臨場感を持って書かれていて興味深い。まあ旅行記というよりは、切符争奪戦と道中何を思ったか、感じたかといった内容に主眼が置かれている。

    著者の紹介ページでは日本にいる時から中国が気になって人民服を買い求めて着てたとのことなので、なかなかの中国への傾倒ぶりだったようだ。しかしまあ今の中国はそのころとは全く別の国といっても差し支えないぐらい変わってしまったんだろうな。今とは違う種類の違う破茶滅茶なエネルギーが溢れていた頃に一度訪れてみたかった。

    P.57
    金をかけなければかけないほど、旅は刺激に満ちたものになる。何でも金、金、金の世知辛い世の中で、旅先では冒険が安価で、時にはタダで買えるのである。これほどお得な話はない。欲しいものが効果ならどこかで諦めるかもしれないが、安価になればなるほど刺激が増すため、歯止めが利かなくなる。(中略)旅という非日常の中では、日常の中で通用する「高くて有名なブランド品を身につける」感覚が、「金では買えない貴重な体験をする」に替わる価値となるからだ。

    P.59
    香港に住む我々留学生たちは、中国を修行の地とみなしているようなところがあった。中国でどんな無茶をして一皮剥けてきたかで自らのステージを上げようと誰もが腐心していた。(中略)深圳や広州に行くなどというのはガキのおつかい、北京や上海でさえ素人の行くところと見なされる始末だった。
    できるだけ遠くへ。できるだけまだ行っていない場所へ。私たちは好むとこの混ざるとにかかわらず、そんなプレッシャーを互いに与えあっていた。
    どれだけ冒険をして特異な体験をしたかが賞賛の対象となるのだから、実は二年前、ツアーに参加して軟座(一等座席)に乗ったことがあるという事実だけは口が避けてもいえなかった。(中略)白状しようものなら、「反乱分子」と糾弾されそうな空気させ流れていた。

    P.75(深圳に到着して)
    滑走路に転用できそうなほど広い、どこまでも続く道に見渡す限りどこまでも続く駅前広場。(中略)その広大な面積の中にいるからさほどの密度は感じずに済んでいるが、おそらくものすごい数であろう、さほど用事があるようには見えない人々の群れ、それらは間違いなく、香港には存在しないものだった。
    人ごみを見るのは香港で慣れている。しかし香港の場合、人ごみには必ず理由があった。クリスマスのイルミネーションやビクトリア港に打ち上げられる花火を見に行くとか、来港したイギリスのエリザベス女王をの姿を一目みたいとか(中略)、しかし中国の人々の群れには、理由が見えなかった。
    この、「理由の見えない人々の群れ」という光景は、その後も私個人にとっては、中国を考える際の重要なキーワードの一つになっていく。

    レビューの続きを読む

    投稿日:2022.12.11

  • ハルモヤ

    ハルモヤ

    素晴らしい旅の記録である。時間をおいて、その後の中国の変化から、さらに気がついた事を掘り下げているのが素晴らしい。また、異文化コミュニケーションについて深く考えさせられる。

    投稿日:2022.07.31

  • kouhei1985

    kouhei1985

    旅先の中国よりも、旅そのものに主眼が置かれていて、旅行中に変化する相棒との関係や、著者の「旅論」が語られる。

    『転がる香港~』以降、感傷的になっているが、相変わらず考察は深い。中国鉄道の硬座(二等座席)がこの世の地獄のように書かれているのが興味深い。87年当時のことなので、自分の知っている2010~2012年よりもずっとマナーが悪くて自由だったのだろう。怖いもの見たさに一度経験してみたかった気もする。続きを読む

    投稿日:2022.07.01

  • たまみ

    たまみ

    この人の書いたものは、そこに出てくる人々の言葉が活字ではなく生の言葉として感じることが出来る。
    いきなりだけど、著者はマイケルのことが好きだったのね。

    今では所謂ホテルや高速鉄道が中国でも当たり前で、当時のような外国人ならではの旅行スタイルもなくなり、一つの歴史を読むような感じ。他の著者でも読んだことあるが、硬座での旅はハンパなくキツイらしい。更に、無座というのもあったらしい。
     

    続きを読む

    投稿日:2020.07.11

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