【感想】デービッド・アトキンソン 新・観光立国論―イギリス人アナリストが提言する21世紀の「所得倍増計画」

デービッドアトキンソン / 東洋経済新報社
(121件のレビュー)

総合評価:

平均 4.1
35
53
15
3
0
  • 相手の立場に立って考えよう

    観光産業を振興することが日本のGDP縮小への一番の対策であるとする本作。

    GDPは人口の量にほぼ依存しており、避けられない少子化が既に起こっていること、そして移民政策は日本人の感情的にも経験的にも受け入れがたく(ヨーロッパ諸国を見ていると副作用も大きい)ことからGDPが下がるのは必然。そこで提唱されているのが「短期移民」、つまり観光客だ。

    マクロ経済による観光産業の規模、他国との比較による日本のいかしきれていないポテンシャルを、理性的にロジカルに説明していく。観光地としての4大要素は「気候」「自然」「文化」「食事」で、日本は全て備える稀有な国なのに、安全や便利など的外れなアピールばかりしていると。

    全体を通して感じたのは日本人は他者の視線になってものを考える習慣が乏しいということだ。他者にわかってもらうことが当たり前だという感覚が共通してあるような。そこをイギリス人で京都に長年住む著者が指摘してくれている。面白いのは、思いやりを大事にする日本人だからこそ、むしろ相手の立場になって考える客観性に乏しいというパラドックス。一見矛盾して見えるが、本質をついている。

    その意味で、観光論というだけでなく、普段の仕事でも相手の立場に立ってものを考え、相手の欲しいものが提供できているのか、自分に置き換えて読むことができた。
    参考になる点の多い良著。
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    投稿日:2016.06.01

  • 隠れた観光大国ニッポンに贈る提案書

    観光立国になる為の4つの要素とは何か!?
    その4つをすべて持つ潜在的な観光大国ニッポン。あまりにも潜在的な力を活かすことが出来ていない現状を少しでも改善することが出来れば、人口が減少する日本においても更なる経済成長を実現することができるという、日本を愛するイギリス人による渾身の提案書です。
    日本で信じられている「観光立国の前提条件」の勘違いについても、ズバっと切り込んでいます。正直、耳が痛い。
    評者は、日本は観光で食べていかねばならないような国ではないという認識をずっと持っておりましたが、決して外国人に媚びへつらうような感覚を伴わなくとも、正しく求められている課題に取り組むことさえ出来れば、充分に新産業を日本において飛躍的に発展させることが出来るだという確信を本書を通じで得ることが出来ました。
    また、本書を通じて、観光産業に対する自分の認識の甘さと偏りに気がつかされました。
    大げさかもしれませんが、新しい日本の将来を切り開くための啓蒙書とも言えます。
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    投稿日:2015.12.28

ブクログレビュー

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  • sobam

    sobam

    「おもてなし」が観光のクオリティを上げるという考え方は的外れという指摘は、今まで感じていた違和感に対するカウンターとして爽快だった。
    地域産品の海外販路拡大とかクールジャパンでも常々「ありのままの私達を絶賛してくれる人に売りたい」という意識ばかり感じていたけど、観光分野でも同じだったのか。。
    これはもう日本人の対外的な特性なのか、未熟なだけなのか。
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    投稿日:2023.09.11

  • nya

    nya

    「自画自賛のアピールはマイナス」

    海外旅行経験のないよーな田舎の連中は観光業から手を引くべきだとつくづく思った本。

    投稿日:2023.07.30

  • 蒼

    Pivotのトークなどを見ていても、著者の人間性にはあまり共感はできないが、的を得ている指摘は多く、今後の参考になる本だと思う。

    国、行政レベルの提言が多いため個人でどうするかというのは個々人で考える必要はあるものの、インバウンド観光を考える上で、実際にお金を落とす外国人の目線を持っているイギリス人の著者の言葉と知見は参考にしたい。続きを読む

    投稿日:2023.05.19

  • しんいちろう

    しんいちろう

    日本のおもてなしは押し付けと捉えられる可能性があり、必ずしも外国人観光客のニーズとはマッチしていないことや、文化財を活用しいかに滞在を長くさせるかが重要という点がなるほどと感じた。
    また京都はフィレンツェのような街かと思ったが全然違ったという外国人ジャーナリストのコメントが印象に残った。まさにそのとおり。
    文化観光と方々で言っているが、もっと真面目に文化財で稼いでいくことに注力すべき。
    続きを読む

    投稿日:2023.05.02

  • urotanke365

    urotanke365

    読みたいリストに入れっぱなしだったが、図書館で見つけて手に取った。
    非常に面白かった。

    日本はなぜ観光立国を目指す必要があるのか、そのためには何が足りないのか、どうすれば良いのか、をデータで根拠を示しながらロジカルに説明してくれるので、とてもわかりやすい。

    「おもてなし」の勘違いなど、なるほどと思うところが多かった。

    この本が発行された2015年から8年が経った。コロナ禍という、当時は想像も出来なかった事態が起こり観光業はダメージからの回復途上だが、そんな今だからこそこの本の指摘は重要度を増すと思う。
    続きを読む

    投稿日:2023.01.19

  • よしもり

    よしもり

    このレビューはネタバレを含みます

    日本における観光業界について現状、そして理想までの解決法などが著者視点から分かりやすく書かれてあった。
    欧米への需要開拓。
    観光資源4要素(気候、自然、食事、文化)の重要性
    大量消費型の観光業ではなく、質を大切にする。
    ゴールデンウィーク型の観光業のあり方の問題点。
    日本人のおもてなしの勘違い。
    これらが私が大事だと思ったポイントだ。

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    投稿日:2022.12.27

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