【感想】ロスト・ケア

葉真中 顕 / 光文社文庫
(272件のレビュー)

総合評価:

平均 4.2
106
107
40
7
0
  • ミステリーだけど

    介護にまつわるある事件を、様々な角度から様々な登場人物が語る形式で物語が進む。
    ミステリーとしての展開は間違いなく面白い。読後感も悪くない。
    でも、何とかしたいと思う何かが心に残ったままで胸が痛い。
    謎解きの先にとてつもなく重いテーマがそっと差し出される、優しくて悲しい物語だった。
    著者の初の長編作品だそうだが、次回作が出たら必ず読みたい。
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    投稿日:2013.10.02

  • 現実にリンクした社会派ミステリーの良作

    老人介護を主題にした社会派ミステリーと一言で言い表すのは簡単ですが、主題と物語のバランスが素晴らしく、読み応えがあり、一気の読了でした。登場人物の検察官の大友とその「旧友」佐久間との関係が主題、物語にもう少しうまく絡んでいれば、という気がしないでもありませんが、無い物ねだりかもしれません。正直に言えば、今現在少々この主題に足を取られつつある我が身としてこの物語は全く他人事では無く、多分多くの人々にとってもそうであるであろうと思われるこの問題を見事に描写したこの作品を多くの人に読んで欲しいと思います。続きを読む

    投稿日:2016.05.17

  • 現実ですよ。

    私も寝たきりの父親を30代の時から介護しています。
    内容はまさに現実。一見豊かである日本ですが
    その陰ではすごく大変な思いをしている人がいる。
    ますます高齢化社会が進むこの国に重大な問題を投げかけていると思います。
    物語のテンポも良く一気に読めました。
    ぜひ皆さんにも一読して頂きたいと思います。
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    投稿日:2014.04.23

  • 究極の介護とは?

    地獄のような在宅介護の果てにある究極の介護、今の日本の介護を巡る問題をえぐり出しているという意味では骨太の社会派ミステリーと言える。その中にある本格ミステリー的なだましの要素はスパイス的な感じに捉えた方がいいかもしれません。とは言え、構成は緻密で、ほとんど無駄な部分はないことに驚かされます。読後の爽快感を求めるような類いの話ではありませんが、引き込まれるような文章力で一気に読んでしまいました。在宅介護の経験がない方には特に読んでいただきたいと思います。ここに書かれている現実は決して誇張されたものではないので・・・続きを読む

    投稿日:2015.04.05

  • 死んで嬉しいわけない、けれども…

    もともとはブログ「俺の邪悪なメモ」で人気を集めていた著者が、
    「第16回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞した作品。

    地方裁判所で死刑の判決が下されようとしている犯人の〈彼〉は、なぜか微笑みを浮かべていた…
    戦後最多の犠牲者43人もの高齢者を殺した連続殺人犯、死刑判決の男がなぜ笑っているのか。

    男も裁判もどこかおかしい。傍聴席に座る被害者遺族たちは、少なからず救われた表情をしている。
    日本の介護事情の実情を、祖父の介護を経験した当事者である著者が、ミステリーという方法であぶり出した。

    サイコパスなわけでも、衝動に任せた犯行でもなかった犯人は、いったいなぜ異常なまでの殺人を繰り返したのか。
    決してあってはならない殺人事件に違う光をあてようとする名作。
    続きを読む

    投稿日:2016.03.03

  • 身につまされる

    介護の難しさ 悲しさ 辛さ 人間何時かは死を迎える
    何事もなくその時期が来ればいいが、そう行かないのが現状であります
    まさにこの小説はそこを突いたストーリーでした
    内容は濃くて、その都度納得しながら一気に読みました
    いま、何処かの家庭で現実にこの小説と同じような事が進行形である
    同じ境遇の方が読んだら、考えさせられる内容です
    続きを読む

    投稿日:2013.10.24

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ブクログレビュー

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  • アンシロ

    アンシロ

    このレビューはネタバレを含みます

    社会派ミステリはあまり読む事がなくて、太田愛さんの作品以来。こちらは介護をテーマにしていて、自分自身の親もそういう年齢に差し掛かっているので現実を突きつけられるかのようで怖かった。

    作品は犯人は「彼」と表現され、検事、介護施設大手フォレストの社員、被害者家族の視点でストーリーが進んでいく。犯人の目的は予想がついてはいたが、タイトルになっている「ロスト・ケア」を行う為に犯行を繰り返していてサイコでも残虐な殺人鬼でもない犯人像は他の作品とは違う。

    佐久間はフォレストを退職する時に得た介護利用者名簿を使って詐欺を始めた。名簿自体を横流して金を得ていたがそこに施設情報や職員の勤怠情報まで一緒に渡してるのは結構違和感があった。足がつかないように最小限な情報しか普通は渡さないのでは?

    検事の大友の補佐をしている椎名が数学や統計学に強いという設定は出来過ぎ。終盤にある事件の現場に残されていた佐久間のデータを分析して色んな可能性が分かるのだが、水を得た魚のようにストーリーが進んで犯人に辿り着いた。犯人が実は?…ってのもそこでヒネリいるかな?笑。

    序盤からたくさん伏線を敷いてストーリーをまとめているが、テーマがリアルだけに出来過ぎな設定でリアル感が薄れてしまっていると思った。でも、ドラマや映画だとそれも盛り上がる演出としてちょうど良さそう笑。

    本の帯に映画の松山ケンイチと長澤まさみが載っていたのでかなり意識して読んでいました。松山ケンイチが犯人とバレバレだと思うので小説とは違うストーリー展開?映画も観てみたいと思いました。

    レビューの続きを読む

    投稿日:2024.04.14

  • fairytale

    fairytale

    介護業界の闇を知り、まさに”社会の穴”を痛感した。
    介護する側もされる側も、貧富の差を問わず全員が救われる世の中になってほしい。
    大友と佐久間の善人っぷりとクズっぷりが対照的なのも、話の展開に良いスパイスとなっていた。続きを読む

    投稿日:2024.04.07

  • みゆき

    みゆき

    映画が上映されている時から気になっていたので本を購入して読みました。
    他人事ではなく将来自分も経験することになるかもしれない介護について深く考えさせられる本でした。
    欺波という人物、彼という自分それぞれで話が進んでおり構成が面白かったです。
    映画のポスターや予告から犯人が誰か分かっていたので分からないまま読み進めて行きたかったです。
    機会があれば映画も観たいと思いました。
    続きを読む

    投稿日:2024.03.27

  • tamumasa

    tamumasa

    観てはいないが、映画の方は、小説のその後みたいなんだろうか。意外ととは失礼かもしれないが、キチンとしたミステリー。

    投稿日:2024.03.26

  • マチルダ

    マチルダ

    このレビューはネタバレを含みます

    ずっと読みたいと思いつつも怖くて読めなかった。年月が流れ、今やっと読めた。
    あなた達なら出来ると全ての人達から言われ、最初は使命感で誠心誠意お世話をしていたが、年月が経つに連れ、この生活はいつまで続くのか神経は擦り減っていった。介護に終わりを望むことはいけないと分かっていても望んでしまう。開放された今も、思い出すと罪を感じる。もっと尽くすべきだっただろうと。自分が死ぬまでこの気持ちは消えない。

    レビューの続きを読む

    投稿日:2024.03.24

  • みなみ

    みなみ

    このレビューはネタバレを含みます

    私をはじめ、多くの人が斯波の人生が導き出した答えに共感をしてしまうと思う。身近に介護が必要な老人はなく、私自身も介護は未経験だけど、未曾有の高齢化社会に直面し、そしておそらくしばらくは老人を支える側になるであろう世代の1人として、深く考えさせられる作品だった。この作品を読んで『安楽死を合法化せよ』と直ぐに答えを出すのは短絡的であるとしても、作品の中に散りばめられた、家族の絆は呪いになること、介護される側する側双方の尊厳、安全地帯にいる人間とそれ以外の場所にいる人間それぞれの行く末…そういった要素と安楽死の危険性を天秤にかけながら丁寧に考えて行くべきテーマであると思う。
    小説としては、犯人をミスリードさせるような構成で、続きが気になりぐんぐんと読めた。

    松山ケンイチも好きなので、次は映画で同作を見てみよう。

    レビューの続きを読む

    投稿日:2024.02.28

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