【感想】安倍官邸と新聞 「二極化する報道」の危機

徳山喜雄 / 集英社新書
(11件のレビュー)

総合評価:

平均 3.5
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  • 成熟した言論のためのケーススタディ

    同じできごとについて報道しているはずなのに、
    新聞によって、受ける印象は全く違うことが多い。それは、著者によると

    新聞の論調とは、ファクト(事実)にそれぞれの立ち位置(社論)による解釈が加えられ、独自のコンテクスト(文脈)が形成されてつくられるものだ。

    とのことだ。
    著者は朝日新聞社記事審査室幹事である。
    朝日新聞の論調ができあがるのに、著者の働きも大きいのだろう。

    だが、本書は「朝日新聞として」安倍首相の報道政策を論じるのではなく、
    安倍首相(と彼の在任時期に起こったできごと)についての報道を「素材」として
    ジャーナリズムのあり方について考えるという趣旨のものである。

    分析していく中で、著者は、報道の「二極化」に気付く。
    安全保障や原子力などの重要課題について
    「朝日、毎日、東京新聞」の報道は似た論調であり、
    また、「読売、産経、日経新聞」が似通った論調であることが多いという。

    それは今に始まったものではないだろう。
    そして、著者の言いたいことは、どちらかが(朝日側が)正しいということではない。
    著者は複数の新聞を継続的に読み続けることをすすめる。
    その理由として、本文がある。
    同じできごとでも、新聞によってこんなにも違うのだから。
    序分に見られる次の文に深く考えさせられる。

    憲法改正や原発の存廃など国論を二分するテーマで、両者の主張が鋭く対立、
    議論が二項対立化し、双方ともにいいっぱなしで終わっているケースが多く見られた。
    つまり、深い議論や、第三の可能性を探るといった成熟した言論が成立しにくい状況になっている。

    という部分である。
    「双方とも言いっ放し」「第三の可能性を探る議論が成立しにくい」
    確かに、その通りである。

    朝日新聞は吉田調書や慰安婦問題など、
    「報道のあり方」以前の問題を厳しく問われる事態となった。

    その慰安婦問題などは、問題の朝日の記事にしても批判した産経などにしても、
    「双方とも言いっ放し」の最たるものではないだろうか。
    本来深い議論がなされ、成熟した言論が待たれるところであるはずなのに、
    イデオロギー的であったり、扇動的であったり、攻撃的であったり、まるで噛み合っていない。

    これは、メディアに責任があるのは間違いないが、
    やはり、二項対立的思考に陥らず、「第三の可能性」を模索すべく
    読者一人一人が深く成熟した思考をしていく必要があるだろう。
    続きを読む

    投稿日:2015.02.17

ブクログレビュー

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  • kun92

    kun92

    大上段に構えたテーマは、メディアが二極化して、しかも言いっ放しではあかんやろと。

    だが。

    もう安定の朝日新聞品質。

    ダブスタ、ナロナムブル、ストローマン、レッテル貼りなどなど。
    自分たちが世論を作るんだと言う傲慢。

    自らの正義によう姿が、隣国にダブる。
    だからダメなんだ。
    続きを読む

    投稿日:2019.12.28

  • mfin

    mfin

    安倍内閣がどのようにメディアを効果的に活用しているか、その手法が書かれていると期待したが、単に大手新聞紙の読み比べ程度の内容で、期待はずれだった。
    時間の無駄だった。

    投稿日:2016.01.15

  • みねさん

    みねさん

    朝日新聞と読売新聞で記事の扱い方が違うことを改めて認識した。一紙だけ読んでいると、片寄った世の中しか分からないのではないか。

    投稿日:2015.08.01

  • rucho

    rucho

    このレビューはネタバレを含みます

    新聞は読みませんが、テレビやネットに氾濫する言論がたんなるアジテーションになりさがっているように感じる昨今。本書では、立場の表明に腐心し、不都合な情報や批判に耳をふさぐそんな体質が新聞社にも蔓延していることを指摘しています。

    憲法や経済、外交問題など、国民の生活を大きく左右しうるのに、議論は一向に深まらない。ただ、賛成と反対の立場があって、思索を深めるプロセスを怠り、あとは多数決で決まるだけ。言論の腐敗と政治の腐敗が悪循環している現在の社会は、我々が感じている以上に恐ろしい状況なのではないでしょうか。

    著者は朝日の社員のため、論調は朝日寄りですが自社の記事にたいする批判が目立ちます。記事の捏造など、不祥事がつづく自社に喝を入れるのがこの著作の目的の1つかな。

    著者は複数の新聞を読むことを勧め、それが有効なのはわかりますが、それだけの時間はさすがにとれませぬ…。でも、偏った情報は益するどころか害悪になることを肝に銘じようと思いました。

    レビューの続きを読む

    投稿日:2015.02.08

  • imaht2

    imaht2

    サブタイトルにある「二極化する報道」。私自身も、多分世の中も、その傾向に陥っているのではないか。複数紙を購読することは難しいけれど、今はWEBでも各紙の社説や論調を知ることは可能だ。いろいろな意見があること、それぞれのテーマへの知識、そして第3の道を考えること。なかなか難しいけれど、責任ある大人として、心がけていかなければ。
    メディアを巧みに使おうとする権力にしてやられては、口惜しい。
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    投稿日:2014.12.15

  • わっさん

    わっさん

    なかなか一般人が複数紙を購読して、報道内容を比較し、そこから真実を見つけるのは難しい。

    字面を追うだけで、内容はよく理解できなかった。同じことを何度も繰り返されてうざい時もあれば、そうでない時もある。こちらの気持ち(もっと分かるように説明してくれ)という気持ちと一致するかしないかか。

    「ジャーナリズム・・」とあわせて読むと、なるほどとうなづける(特種=リークなど)。

    先に読んだ「集団的自衛権・・」の論調があまりにも朝日新聞のようなので、てっきり朝日の記者かと思ったら、東京(中日)新聞記者だった。そこからのつながりで読んでみた。

    以下、引用省略
    続きを読む

    投稿日:2014.12.14

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