【感想】犯罪心理捜査官セバスチャン 上

M・ヨート, H・ローセンフェルト, ヘレンハルメ美穂 / 東京創元社
(20件のレビュー)

総合評価:

平均 4.2
6
9
3
0
0
  • 北欧ミステリ、侮り難し

    作者が海外ドラマ「刑事ヴァランダー」の脚本家で翻訳が「ミレニアム」のヘレンハルメ美穂というかなりミーハーな理由で買ってしまった本書。

    はじめは主人公のセバスチャンと警察の2つの視点で進行するのだがとにかく助走が長い。母親の電話から少年の遺体発見、国家刑事警察の殺人捜査特別班が到着して捜査し出すのが全体の1/10と結構遅い。しかしここまで来てもまだ主人公のセバスチャンは捜査チームには加わっていない。その間作者はセバスチャンの駄目っぷりをこれでもかと描くのだが、そのどれもこれもが自信過剰な俺様振りと女性を口説いて寝る事に明け暮れるエピソード。その性格破綻者が母親が亡くなったのをキッカケに実家に帰ってきたところで元同僚の特別班リーダーのトルケルと偶然出会った事から物語はようやく動き出す。セックス依存症で協調性ゼロの主人公が同じく個性派揃いの殺人捜査特別班の面々とぶつかり合いながら捜査を進めて行く頃には最早セバスチャンの性格にも慣れてきて、次に彼が何をやらかすのかなあとか誰を口説こうとしているのかが気になり出す。(笑)また不思議なもので捜査の大事な局面で彼の優秀な一面や優しさが垣間見え出すと変に嬉しくなって来るのだ。

    先にも書きましたが本作も海外ミステリ物の御多分に洩れず導入部が長くペースが遅い。それは主人公を含む登場人物一人一人の心理描写や事件捜査をかなりキッチリと描いているためですが、下巻に入ると加速度がついて来て捜査が走り出し最後は二転三転するドンデン返しまで用意されいるので安心して読んで頂きたい。またセバスチャンが捜査に係わるキッカケになった個人的事情についても最後の最後で見事なオチが用意されているので楽しめます。

    北欧ミステリ、侮り難し。またまた楽しみなシリーズが増えました。次巻の速やかなる刊行をお願いします。
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    投稿日:2014.09.13

ブクログレビュー

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  • じゅう

    じゅう

    スウェーデン作家「ミカエル・ヨート」と「ハンス・ローセンフェルト」の共著の長篇ミステリ作品『犯罪心理捜査官セバスチャン(原題:Det fordolda、英題:Sebastian Bergman、米題:Dark Secrets)』を読みました。

    「ヨナス・ヨナソン」の『国を救った数学少女』に続き、スウェーデン作家の作品です… 北欧ミステリが続いています。

    -----story-------------
    〈上〉
    「息子が帰ってこないんです」警察にかかってきた一本の電話。
    少年は心臓をえぐり取られた死体で発見された。
    センセーショナルな事件に、国家刑事警察の殺人捜査特別班に救援要請が出された。
    四人の腕利き刑事。
    そこにひとりの男が加わった。
    「セバスチャン・ベリマン」、かつてのトッププロファイラー。
    だがこの男、自信過剰で協調性ゼロ、アドレナリンとセックス中毒、捜査中でも関係者を口説いて寝てしまう、はた迷惑な奴だった。
    スウェーデンを代表する脚本家がタッグを組んだ、注目の北欧ミステリ。

    〈下〉
    殺された少年は以前に通っていた学校でいじめられ、裕福な子どもが通う高校に転校していた。
    母親、ガールフレンド、友人、担任と、証言を得るうちに変化していく少年の姿。
    一方、トラブルメーカーの「セバスチャン」が加わったことで、殺人捜査特別班には波紋が広がっていた。
    被害者も証人もそして捜査陣もみな秘密をかかえるなか、「セバスチャン」自身も実はある事情を隠して捜査に加わっていた。
    登場人物の強烈な個性が光るシリーズ開幕。
    訳者あとがき=「ヘレンハルメ美穂」

    *第3位『IN★POCKET』2014年文庫翻訳ミステリーベスト10/読者部門
    -----------------------

    2010年(平成22年)に発表された「犯罪心理捜査官セバスチャン」シリーズの第1作… スウェーデンを代表する脚本家の二人「ミカエル・ヨート」と「ハンス・ローセンフェルト」がタッグを組み、傍若無人、傲岸不遜、自信過剰で協調性ゼロ、女たらし(セックス中毒)の犯罪心理学者を主人公に据えて描かれた作品、、、

    主人公の「セバスチャン・ベリマン」だけでなく、他の登場人物も非常に魅力的だし、ストーリーも波乱に富んでいて、とても愉しめる、面白い作品でした。


    ストックホルムにほど近い静かな町ヴィステロース、「息子が帰ってこないんです」ヴェステルロース警察にかかってきた一本の電話、それがすべての始まりだった… 行方不明だった16歳の男子高校生「ローゲル・エリクソン」は心臓をえぐり取られた死体で発見された、、、

    地元ヴィステロース警察の刑事部長「シェスティン・ハンセル」要請を受けて、国家警察の殺人捜査特別班の「トルケル・ヘーグルンド」をリーダーとする、「ウルスラ・アンデション」、「ヴァニヤ・リトネル」、「ビリー・ロセーン」の4人の個性的で腕利き刑事が捜査に乗り出した… そこにひとりの男が加わった、男の名は「セバスチャン・ベリマン」、殺人捜査特別班のかつてのトッププロファイラーだが、この男、自信過剰で協調性ゼロ、アドレナリンとセックス中毒、捜査中でも関係者を口説いて寝てしまう、はた迷惑な奴だった。

    殺された「ローゲル」は家庭に恵まれず、以前の高校ではいじめに遭い、裕福な子どもたちが通うパルムレーフスカ高校に転校したという過去があったが、転校先でも友達が少なかったという… 母親の「レーナ」、ガールフレンドの「リサ・ハンソン」、友人の「ヨハン・ストランド」、校長の「ラグナル・グロート」、担任の「ベアトリス・ストランド」と、証言を得るうちに次第に浮かび上がり、変化していく少年の姿、、、

    捜査が進むにつれ、パルムレーフスカ高校には隠された問題があることが分かってきた… さらに、「ローゲル」の心理士「ペーテル・ヴェスティン」が殺害され、家が放火されるという新たな事件まで発生した。

    一方、相手かまわずトラブルを起こす嫌われ者の「セバスチャン」が加わったことにより、殺人捜査特別班には穏やかならぬ波紋が広がっていた… 被害者も証人たちも、そして捜査陣もみな、それぞれの秘密をかかえるなか、「セバスチャン」自身も実はある事情を隠して捜査に加わっていた、、、

    捜査が進むうちに少しずつ明らかになる被害者の少年「ローゲル」の姿と、ひととつひとつ暴かれていく周辺の人々が抱えるさまざまな秘密、そして意外な真相に至る事件の展開… いやぁ、面白くてラストまで集中力が途切れることなく読めましたね。

    事件捜査の主役は捜査特別班のメンバーなので、警察小説とも呼べるのでしょうが… そこに、邪な動機から捜査に加わることになった「セバスチャン」が、物語全体を引っかき回すところが、本作の特色ですかね、、、

    ねじれにねじれた人間性が影響して、「セバスチャン」は、他のメンバーからは総スカンを喰らいつつも、そんなことには一向にへこたれることなく、独自の解釈で捜査の方向性をリードして解決に導きます… 終盤、「セバスチャン」が「ヨハン」を無事に保護するシーンは印象的でしたね、、、

    そして、目的である、自身の子どもに関するプライベートな情報も入手しちゃうのも流石… でも、エンディングで明かされた事実は、「セバスチャン」にとっても、読者にとっても衝撃でしたね。

    本シリーズ… 是非とも次作以降も読みたいです!!



    以下、主な登場人物です。

    「セバスチャン・ベリマン」
     心理学者。元国家刑事警察の殺人捜査特別班のプロファイラー

    「リリー」
     セバスチャンの妻。故人

    「サビーネ」
     セバスチャンとリリーの娘。故人

    「シェスティン・ハンセル」
     ヴィステロース警察の刑事部長

    「トーマス・ハラルドソン」
     ヴィステロース警察の刑部

    「イェニ」
     トーマスの妻

    「トルケル・ヘーグルンド」
     国家刑事警察の殺人捜査特別班のリーダー

    「ウルスラ・アンデション」
     国家刑事警察の殺人捜査特別班の鑑識官

    「ヴァニヤ・リトネル」
     国家刑事警察の殺人捜査特別班の刑事

    「ビリー・ロセーン」
     国家刑事警察の殺人捜査特別班の刑事

    「ミカエル」
     ウルスラの夫

    「ヴァルデマル」
     ヴァニヤの父

    「ローゲル・エリクソン」
     十六歳の少年

    「レーナ」
     ローゲルの母

    「リサ・ハンソン」
     ローゲルのガールフレンド

    「アン=シャーロット」
     リサの母

    「ウルフ」
     リサの父

    「ヨハン・ストランド」
     ローゲルの親友

    「ウルフ」
     ヨハンの父

    「フレドリック・ハンマル」
     ローゲルの前の学校の上級生

    「レオナルド(レオ)・ルンディン」
     ローゲルの前の学校の同級生

    「クララ」
     レオの母

    「ラグナル・グロート」
     パルムレーフスカ高校の校長

    「ベアトリス・ストランド」
     ローゲルの担任。ヨハンの母

    「アクセル・ヨハンソン」
     パルムレーフスカ高校の元用務員

    「ペーテル・ヴェスティン」
     パルムレーフスカ高校と契約している心理士

    「アンナ・エリクソン」
     セバスチャンの子どもの母
    続きを読む

    投稿日:2023.04.06

  • ikezawa

    ikezawa

    200ページくらいまで主人公が女性と寝て、明け方ひっそりと立ち去ってただけなので、ちょっと大丈夫かな?主人公最低だな(褒め言葉)でなんとか読んでた。
    プロ意識高めのチームに合流してからは見せ場もあり、改めて「コイツ最低だな(褒め言葉)」で下巻へ続きを読む

    投稿日:2022.09.23

  • take9296

    take9296

    心臓をえぐり取られた少年の死体。センセーショナルな事件に、国家刑事警察の殺人捜査特別班へ救援要請が出された。四人の腕利き刑事+かつてのトッププロファイラー、セバスチャン。だがこの男、自信過剰で協調性ゼロ、アドレナリンとセックス中毒、捜査中でも関係者を口説いてしまう、はた迷惑な奴だった。

    今まで読んでいなかったシリーズを読んでみることにした。登場人物一人ひとりの描写が丁寧なのに、読みやすい。下巻に続く。
    続きを読む

    投稿日:2022.04.17

  • キヨハラ00

    キヨハラ00

    筋書きだけで文句なく面白い。しかし、それだけでない。
    「記憶は主観的だ。ところが夢は客観的なのだ。容赦がない。」
    「人の感情を理解することというのは、一般にいわれているほど大事なことではない。興味深いのは感情ではなく、人を駆り立てる力のほうだ。」
    こんな記述がセバスチャンの心理描写であったり過去の台詞だったりして現れる。けだし至言。刺さる。けれども、そんな記述はすっとばしても読み進むことはできる。そこがエンタメとして大事。

    セバスチャンがセックス依存症で、人を言い負かしたり嫌な気持ちにさせることばかりしているという人物像は歓迎できなかったが、やり過ごすことはできた。

    途中まで読んで2年弱放置したのでざっくり読みなおしたが入り込んでしまうと上巻を読み終えるまで眠れなくなり、就寝時間が遅れた。
    続きを読む

    投稿日:2022.02.23

  • fattycatlover

    fattycatlover

    ネットで見かけて。

    協調性ゼロ、自信過剰、厭味三昧、
    女性と見ればベッドに連れ込む
    プロファイラーのセバスチャン。
    しかし、愛した娘と妻を失い、
    毎晩夢にうなされる失意の日々を送っていた。
    そこへある事情から、
    少年の殺人事件で古巣に戻ることに…。

    (下巻へ続く)
    続きを読む

    投稿日:2020.12.16

  • agnes

    agnes

    再読、シリーズ上下計8冊しばらく楽しめる。次作をたのしみに。
    これほど主キャラクターがいやなやつというのも珍しいが、おもしろい。

    投稿日:2020.05.22

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