【感想】仕事に効く教養としての「世界史」

出口治明 / 祥伝社
(165件のレビュー)

総合評価:

平均 3.8
31
63
41
6
2
  • 実は勤め人だけではなく、高校生にもおすすめでは?

    世界史の個々の出来事を、複眼的に世界全体の流れの中でとらえている。学者の様な一つ一つ証拠の積み重ねは無いが、著者の豊富な知識と、海外での駐在経験に裏打ちされた肌感覚による記述が、説得力の源泉となっている。軸は、宗教、技術、社会システム、思想、経済等、多岐にわたり、全体の流れの中で、歴史の必然を感じさせる。現代部分の記述は少ないが、これは未だ評価が確定していないからかもしれない。現在起こっている、一面的に不条理だと思う事も、その背景には理由があり、多面的な分析をすれば自ずと理解出来る事は、考えさせられる。続きを読む

    投稿日:2014.04.28

  • 中国の歴史は遊牧民との戦いの歴史、そして日本にも影響が

    ライフネット生命の出口氏は読書家として有名だがそれにしても読んだ歴史書が5千冊以上とは。しかも訪れた外国の都市が1000を越えるらしい。その出口氏がヘロドトスの言葉を借りて歴史を学ぶ意義をこう述べている「人間は性懲りもなく阿呆なことばかりやっている。いつも同じ失敗を繰り返している。だから、自分が世界中を回って見聞きしたことを、ここに書き留めておくから、これを読んだ君たちは、阿呆なことを繰り返さないように、ちゃんと勉強しなさいよ」この本は出口氏が半世紀の間に、人の話を聴き本を読み旅をして、自分で咀嚼して腹落ちしたことがすべてであり、この本を書くために新たに読んだ本はなくだから文献も示されていない。それで読んでると時々この出来事は実はこうだったと独自の考えが顔を出すのがおもしろい。

    世界史から日本史だけを切り出せるかから始まり、終章でもう一度世界の視点から日本を眺め直す。中国、キリスト教など定番の切り口もあるが例えば交易の重要性や人工国家アメリカとその元になったフランス、そして遊牧民の生んだ帝国など面白い切り口がある。

    中国を理解する四つの鍵、最初の鍵の中華思想が生まれたきっかけ。中国の歴史書は新しい王朝が前の王朝のことを書くので滅ぼされた方がだいたい悪者になる。これは孟子が発明した革命思想が元になっており「天命によって王朝があらた(革)まる、王族の性がかわる(易)」から易姓革命と呼ばれ要は新しい王が正当性を残すため歴史が書かれた。古代王朝周は紀元前1046年頃から始まり内乱で紀元前771年に生残った東周が洛陽に移り春秋時代が始まる。周は12代300年続いていてその間周辺国に贈った青銅器には周の文王や武王の立派な業績の話が書かれていたことがこのときやっと理解され、諸国の王が周はすごいんだと勝手に尊敬の念を抱いてしまう。東周は小さな国だがそこに権威を認め周の王室は特別な存在だと周りが勝手に持ち上げたのが中華の始まりだった。中国が「俺はジャイアン」といったわけではなくのび太やスネ夫がジャイアンを持ち上げたのが本来の中華思想の始まりだと。今ではちょっと違うかも。

    二つ目の鍵は諸子百家、法治国家と官僚制が中国の主流でただそれだけでは大義の様なものがない。そこで建前として庶民に広められ支配者にも都合が良かったのが孔子の儒家だ。現実に中国の体制を支え続けたのは法家なのだが今の中国は法律はあっても実際のところ運用がどうなっているのか分かりにくい。

    三つ目の鍵は遊牧民と農耕民の対立と吸収の歴史。統一と分裂の歴史という一般的な見方に加えるとわかりやすい。中原に入ってきた遊牧民が豊かな国土に慣れ、侵略した農耕民に吸収されていく。中国政府がウイグルの独立を認めず弾圧をするのもわからなくはない。中原の歴史的な最大の的は常に遊牧民だったからだ。2世紀から3世紀の寒冷期に天災や飢饉が続き後漢は滅びた。この時期遊牧民は南に攻め入るがこれが中国の匈奴であり西に行ったフン族がゲルマン民族の大移動を引き起こした。三国志の時代から晋に変わりその晋も遊牧民に追われて南に逃げる。華北はその後北魏を経て隋が統一し唐になるまで遊牧民王朝、択跋帝国が続いた。そして中国人ではない北魏が易姓革命の代わりに使った大義名分が仏教でこの時代に石仏が多く作られている。聖徳太子が書を贈った相手は遊牧民の王で国家仏教と奈良の大仏も遊牧民国家の影響だったんですね知りませんでした。漢民族の帝国は宋で女真族の金に南に終われまとめてモンゴル帝国に滅ぼされる。次いで漢民族の明、満州族の清と続く。出口氏は中国は歴史的に見るとあまり侵略的ではなかったという。ベトナムや朝鮮半島は元々自分たちの勢力範囲という認識なので遠慮なしだがこうしてみると漢民族は遊牧民に征服されるたびに飲み込み同化してきた様なのだ。

    そして最後の鍵は始皇帝のグランドデザイン、文書行政を統一し、中央集権の群県制を全国に行き渡らせ皇帝が法に基づいて中央から地方に派遣した官僚に支配させる。中国共産党もこのスタイルを踏襲している。儒家がすすめた高度成長は共産主義の裏で生き続け相変わらず金儲け。なかなかシビアな見方だ。

    モンゴル帝国のクビライの進めたグローバリゼイションに対し、漢民族の明は一時インド洋を制覇した鄭和の大船団をとりやめその費用を遊牧民からの攻撃を防ぐために使った。万里の長城だ。ぽっかり空いたインド洋に後にヨーロッパの船団が入り込む。大航海時代に海外植民地を増やしたヨーロッパ列強がついに東洋を追い抜かしアヘン戦争でついに東西のGDPが逆転し中国は長い暗黒の時代を迎える。毛沢東の共産党が統一した後も大躍進や文化大革命など国民窮乏化政策を20年以上続けた。そして日本は漁父の利を得た。
    続きを読む

    投稿日:2014.11.07

  • まさに教養としての世界史

    世界史を久し振りに学んだ気分だが目から鱗が落ちるような内容だった。教養としても雑学としても活きる知識だと思う。かなり読みごたえがあったがそれが苦にならず、先に進むのがもったいないくらい面白かった。今の日本の立ち位置を理解するためにも読んでおいて損はないだろう。続きを読む

    投稿日:2014.10.13

  • 俯瞰的な歴史を知るきっかけに

    人類全体の歴史の流れを世界全体で記述されています。
    中国だけ、ヨーロッパだけのような地域ごとに歴史ではなく、中東で起こったことがどのようにヨーロッパに影響したのか、というような関係性を丁寧に述べられています。
    筆者が歴史学者ではないという点も専門的になりすぎないというプラスに働いていると思います。
    続きを読む

    投稿日:2014.09.12

ブクログレビュー

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  • なおす

    なおす

    微妙!!
    話し言葉で書かれているので読みにくい。
    つまり〜、のようにまとめられていることに作者の考えが入りすぎていて、客観性がなくイマイチ。

    あとは、自分の前提知識がなさすぎて読むのが難しかったです
    これは反省。
    すみません。
    続きを読む

    投稿日:2024.01.23

  • おぬま

    おぬま

    図書館で借りた。
    出口先生の世界史の本。口語体で分かりやすく噛み砕いてくれるのが著者の特徴。入り口が女性天皇だったり、時系列ではない構成はちょっと特殊かもしれない。
    基本的には、世界史の重要トピックを数点チョイスして、そこから話を広げていった、という印象を感じた。興味を持った章から読んでも良さそうだ。

    世界史に興味を持つきっかけにする1冊、世界史好きがなんとなく読む読み物としての1冊、十二分に世界史を分かったつもりの人がさらに深める1冊、そんな方々に薦めれる。
    続きを読む

    投稿日:2024.01.13

  • usaco

    usaco

    ライフネット生命の出口さんの本。

    教養が足りない、歴史をきちんと勉強してこなかったコンプレックスもあり読んだ。

    歴史を学ぶ、歴史が好きという人は、長いスパンで物事を考える力があり、ちょっとしたことで一喜一憂しない強さがあると思う。
    先人たちから学び、歴史的な文脈から物事を考えられる。
    日々勉強だ。教育は大切だ。

    一方で、偏りのある人も多い印象。出口さんは保守派。
    宗教の捉え方やアメリカに対しての考えはあまり共感できず。
    ロシアの問題とかも、もっと歴史を学べば、意見をもてると思った。

    過去の歴史をGDPから捉える、国民国家の幻想の話もおもしろかった。
    続きを読む

    投稿日:2023.08.18

  • hasat4

    hasat4

    世界の歴史が繋がって分かる本。頭の片隅に残っている高校の世界史で出てくる人物や用語がたくさん出てくるけど覚える必要なく読み進めるのは楽しい。

    投稿日:2023.03.21

  • 本の虫

    本の虫


    今回の題材は世界史ですが、教養という概念そのものに深さを感じました。
    単にビジネスマンとしてこの世界史の事象を知っておいてください!という本ではなく、筆者本人がこの歴史に対してどう考えるのか?なぜなのか?
    という一般解に対して、自分なりの回答を持っている点が素晴らしいです。
    続きを読む

    投稿日:2023.02.25

  • フーテン

    フーテン

    日本の今の現状が悪くなった訳では無く、平和で安定していた時代の方が稀であるという見方は衝撃的でした。

    投稿日:2023.02.05

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