【感想】知略の本質 戦史に学ぶ逆転と勝利

野中郁次郎, 戸部良一, 河野仁, 麻田雅文 / 日本経済新聞出版
(11件のレビュー)

総合評価:

平均 4.2
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  • 終章の結論にズッコケた

    我々の提唱する「知略」は二者択一ではなく、「中庸」を採ると宣言するが、要は「あれもこれも」のいいとこ取りで、これまでの壮絶な戦史 - ギリギリの決断と試行錯誤の連続である - を丹念に分析した結果がこれとは馬鹿にするにも程がある。
    民衆を大砲の盾にしたソ連や、大砲を山に引き上げるため民衆に自己犠牲を強いたベトナムなど、ほぼ無尽蔵に人的資源を使い捨てできる国と、そうでない国とを同列に語ることも無理があれば、スターリンの行動規範や戦いぶりを成功例として称揚しているのも大いに疑問が残る。

    スターリンは実践知に優れたリーダーではなかった。
    モスクワを離れずにいたのは、足下でクーデターが起こるのを警戒したせいで、国民の愛国心を鼓舞するような意図を持っていたなら、それまで逮捕されるのを恐れて引きこもったりはしないだろう。
    ジェーコフなど新しい人材を抜擢したのも、それまで猜疑心に駆られて元帥を含む将官クラスをほとんど銃殺してしまっていたためだし、ヒトラー以上に現場の視察を行なわず、指揮のあれこれにイチャモンをつけ、軍事行動の遅滞を招いていた。
    スターリンの独裁下においてさえ、勝てたというのが実態なのだ。

    むしろ4つの戦史から見えてくるのは、各国の表裏一体の強みと弱みで、弱点の克服は容易ではないということだろう。
    アメリカの戦略文化である迅速な殲滅戦は、上手くいけば湾岸戦争やイラク戦争の初期のような圧倒的で完璧な勝利を生むが、イラク戦後の占領統治やベトナム戦争などの非正規戦では、強みは一転して弱みに変わり苦戦する。
    別にラムズフェルドが特別なのではなく、誰がトップになっても合理的で必然的な戦略を、現場はなんとか逆転させ、COIN作戦へと転換するため悪戦苦闘するが、結果は必ずしも好転させることはできなかった。
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    投稿日:2020.03.07

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  • rakuta

    rakuta

    独ソ戦やバトルオブブリテンにおける趨勢の転換、ベトナムのフランスからの独立やアメリカとの戦争におけるベトナムの戦い方、イラク戦争におけるアメリカ軍の戦い方の変遷といった実例を通じ、戦略、そして知略やリーダーシップについて分析している。野中氏が35年生まれで、一番若い麻田氏が80年生まれと、かなり年代にバラエティのある4人の著者が章別に分担執筆しているが、内容・文体はよく統一されている。
    内容は多岐にわたるが、ヒトラーも気まぐれなだけでなく戦争経済を考えて戦略を練っていたこと、スターリンも兵站や補給の重要性をよく理解していたこと、米軍は正規軍どうしの戦闘ではベトナムでもイラクでも常に強力であったこと、トランプ政権を(一時的に)支えたマティスやマクマスターといった軍人が湾岸戦争や対イラク戦争の前線で活躍していたことなどが印象に残った。
    知略の本質を考察する終章は、事例を展開するそれまでの記述に比べると抽象的かつ難解であるが、「失敗の本質」の出版以降、戦略に関する数々の考察を繰り返してきた著者たちの現在の到達点と思えば、繰り返し読んで理解に努めることは意義があると思われる。
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    投稿日:2021.03.04

  • taru-mitsu

    taru-mitsu

    成功経験も失敗経験も、その経緯を言語化しておくことは大切なんだということを、改めて感じさせられた。
    ただ、多くのケースは、目的の不明瞭さが、失敗を導くこともわかっているのにね。
    わかっていてもできないのが、人間の性なのか。続きを読む

    投稿日:2021.01.04

  • eisaku0330

    eisaku0330

    201228読み応えある 何度も再読して血肉化したい 失敗の本質シリーズ
    1.失敗の本質=組織の失敗を学んだ
    →「成功の秘訣」は「知の創造」にある
      情報→知識→[本質・直観]→知恵
       暗黙知
       形式知
       実践知
    2.管理過剰を批判 バブル後のつけ
      リスクとる、人材・仕組み・風土を喪失 再構築が必要
    3.独ソ戦 読み応えある
      ヒトラーvsスターリン トップの資質のレベル差
      ソ連の犠牲者は甚大 2,600万人!
    4.組織の価値理念 「人命を守る」
      ゼロ戦は防御が手薄 パイロットの軽視 損耗激しく長期的には劣勢
    5.理念価値観の重要性=本音
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    投稿日:2020.12.28

  • しょうへい

    しょうへい

    知略の本質を知るため、読みました。知略とは、情況と文脈に応じて具体的戦略を実践していくことです。知略の4つの要件は①共通善(共通する目的意識)②共感(相互主観性)③本質直感④自律分散系(実践知の組織化)でふ。知略の本質を洞察し理解すれば、どんな場面でも戦略を賢く実践できます。
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    投稿日:2020.10.31

  • kouhei0210

    kouhei0210

    久しぶりの野中先生の戦略・知略の本。
    頭に汗をかくような、難解な内容ではありますが
    最終章は、読みごたえがあって非常に有用な
    内容でした。内容を絶対に頭に写真としてのこして
    おきない内容です。
    SECIモデル。実践知リーダーの必要な6つの能力
    知略の4つの要件。
    これは覚えておきたい。
    続きを読む

    投稿日:2020.09.06

  • t4learning

    t4learning

    レニングラード攻防戦、バトル・オブ・ブリテンをはじめ、おそらく戦史オタクでないとなかなか知らないであろう内容をこの本で読むことができた。しかし、これだけ詳細に書いてあるのはさすがでした。

    投稿日:2020.08.02

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