【感想】日本野球をつくった男――石本秀一伝

西本恵 / 講談社
(2件のレビュー)

総合評価:

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  • 日本野球の基礎を築いた男の生涯

    1975年、広島カープ、セ・リーグ初優勝の日の記憶。夕方のニュース番組では病床から半身を起こして泣いている老人の姿が映し出された。
    それがカープ初代監督の石本秀一氏だった。
    今でも「カープ初優勝の日」と聞くと、なぜかこの情景が浮かんでくる。

    そのくせ、私は石本秀一氏について今まであまり知らなかった。設立直後の貧乏球団で監督業に専念できず、金策に奔走していた苦労人という程度のイメージしか持ち合わせていなかった。
    本書はその石本氏と野球の関わり合いを戦前の広島商業中学監督時代から、過去の資料をもとに記述しているものである。
    readerのページ数に少々驚いたが、紙の書籍では約600ページにもなるらしい。

    読み始めてすぐに引っかかったのが、夏の甲子園大会初優勝について「関西までしか来たことがない優勝旗が中国山脈をこえて広島にやってくることに。」という表現。通常は「中国山地」であり、「中国山脈」とは言わないし、そもそも甲子園から広島まで中国山地を越えることはない。
    ここで少々読む気が失せてしまった。

    率直に言えば、この著者はライターとしては文章も下手だと思う。
    何試合も延々と広島商業のアメリカ遠征での試合経過を書いているのに、登場選手名から想像するに、在米日本人で構成されていると思しき相手チームの素性が明らかにされていない。
    また、戦前のプロ野球が世間的にはうさん臭く思われ、六大学野球などよりも低く見られていたことなど、時代背景が描かれることが少ない。
    石本氏の家族の様子がほとんど見えてこないので、人物像が野球に関することしかわからない。
    など欠点が多いが、淡々と、事実とみなせることのみを膨大な資料から抽出して記述している大変な労作である。

    おそらく資料の渦に飲み込まれんとしながらまとめ上げたと思われるもので、単純に一つの資料から採り上げるのではなく、なるべくいくつもの資料を載せるようにするなど客観的な記述になるようこころがけていることが垣間見える。
    読み進むにつれて、普段の生活に無頓着でありながら、緻密な選手育成や試合運びをする石本氏の姿が浮かんでくる。

    ともかく、石本秀一氏が広島カープのみならず、タイトル通り「日本野球をつくった男」の一人であることはよくわかった。
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    投稿日:2019.01.14

ブクログレビュー

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  • tosyokan175

    tosyokan175

    今年の日本シリーズはホークスvsジャイアンツで、地方vs中央という図式なのですが、中央へのコンプレックスをまったく感じさせないぐらいに野球というスポーツは地元密着型コンテンツになっている昨今です。でもちょっと前までは、プロ野球は巨人軍を中心とした、あるいは日本テレビの地上波放送をプラットホームとしたシステムでした。だから、本書のヒーロー 石本秀一なんて知らなかったし、国民リーグなんて正史からも零れ落ちた歴史だったのだと思います。標準語の野球ではなくて、広島弁の野球、大阪弁の野球、博多弁の野球、名古屋弁の野球をよく丹念に拾い上げてくれました!えらいぞ、作者!カープ女子とか言って、広島カープのパワーを最新のマーケティングの成果みたいに語りがちですが、その源は、樽募金に至るまでの石本さんの必死のやりくりがあるんじゃ!今まで知らなかった胸熱の大著でした。野球という月の裏側を見た気分です。続きを読む

    投稿日:2019.10.22

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