【感想】強き蟻

松本清張 / 文春文庫
(17件のレビュー)

総合評価:

平均 2.9
0
2
9
2
1
  • 後妻のドロドロした欲望が

    清張の小説としてはサラッと読み流しのできる本です。後妻の夫が亡きあとの計画がドラマ的で、最後は大どんでん返しとなる結末が面白かった。再三テレビ映像化されたのが良く判る。

    投稿日:2015.01.04

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  • raga-movie

    raga-movie

    強欲が人をたぶらかせ命の尊厳も軽視する。そこに正当性など毛頭なく、非人道的自己肯定は他者から見ると狂気に映る。俗世はそんな都合良く事を運ばない、神の忠告は他者の嫉妬や憤怒に代謝される。松本清張のドラマは人びとの煩悩がサスティナブルに交錯する。だからこそ面白い。続きを読む

    投稿日:2023.08.24

  • じゅう

    じゅう

    「松本清張」の長篇サスペンス作品『強き蟻』を読みました。

    『宮部みゆき責任編集 松本清張傑作短篇コレクション〈上〉』、『宮部みゆき責任編集 松本清張傑作短篇コレクション〈中〉』、『宮部みゆき責任編集 松本清張傑作短篇コレクション〈下〉』、『眼の壁』、『時間の習俗』、『霧の旗』に続き「松本清張」作品です。

    -----story-------------
    欲望が犯罪を生み出す!
    夫の遺産を狙う「伊佐子」のまわりには、欲望にとりつかれ蟻のようにうごめきまわる人々。
    男女入り乱れ愛欲が犯罪を生み出す異色の長篇!


    遺産目当てに三十歳も年上の会社重役と結婚した「沢田伊佐子」。
    女盛りの肉体を武器に、奔放に生きる彼女のまわりにはまた、欲望に身を焼かれて蟻のようにうごめきまわる人々が群がってくる。
    一方、そんな人々を冷やかに、密かに眺める者もいる―欲まみれの男女が入り乱れ、犯罪が犯罪を呼ぶ異色のサスペンス。
    -----------------------

    雑誌『文藝春秋』の昭和45年1月号から翌年3月号に連載された作品、、、

    いやぁ、凄い作品でしたね… 主人公「伊佐子」の欲深さや周囲の人間の欲望が渦巻くドロドロした物語でした。


    東銀座の「みの笠」で水商売をしていた「伊佐子」は、30歳以上も年上のS光学取締役「沢田信弘」に嫁ぎ、渋谷の松濤で生活している、、、

    「伊佐子」の今後の人生計画からすれば、夫にあと3年くらいで死んでもらうのが理想的と考えており、肉体の若さを保ちたい「伊佐子」は、20代の男たちと遊びの交際をしていた… ある時、「伊佐子」の遊び相手「石井寛二」が交際相手の殺人容疑で逮捕され、「石井」の仲間から弁護料を負担するよう求められた「伊佐子」は、食品会社副社長で過去から関係を持つ「塩月芳彦」に援助を交渉し、弁護士の「佐伯義男」を紹介される。

    ここから大きく運命が転換し始めます、、、

    弁護士「佐伯」の協力を得て、「石井」の件の始末をはかろうとする矢先に「信弘」が心筋梗塞を発症し入院… 夫不在の生活の中で「伊佐子」は「佐伯」と関係を持ち、政治家の叔父の後ろ盾を失い利用価値の無くなった「塩月」との関係を断つ。

    そして、「伊佐子」は自身の財産の確保のため「信弘」に遺言書を作成させ、最適な時期に最適な条件で夫に死んでもらうために心臓に負担をかけてはいけない夫に罠を仕掛ける… 首尾良く心筋梗塞の発作で夫を死に至らしめたが、、、

    熱海の旅館を「佐伯」と共同で購入するが経営に失敗、借金の穴埋めに期待していた遺産は… 「伊佐子」と「佐伯」の関係は… 「伊佐子」が利用した男たちの復讐により全てが失われます。


    地味な登場人物ですが、速記者の「宮原素子」が「信弘」の遺産に関しては重要な役割を担っていました。


    三人の男が連携したわけではないのですが、、、

    「塩月」が旅館の売買で罠を仕掛け、「信弘」が遺言書を作り直し、そして、「石井」が「伊佐子」と「佐伯」の関係を永遠に切り離す… という、復讐が成功することにより、ある意味スッキリしたエンディングでしたね。
    (殺したり、殺されたり… が絡んでいるので、素直に受け入れるのには抵抗感もありますが)

    でも、なんでかなぁ… あんなに強欲なのに、意外と「伊佐子」というキャラクターに嫌悪感を抱かなかったなぁ。

    ある意味、人間らしい… 人間の本性を素直に表したキャラクターだからかもしれませんね。




    以下、主な登場人物です。

    「沢田伊佐子」
     S光学重役夫人。
     夫の前では愛情を口にしているが、その裏では・・・。

    「沢田信弘」
     伊佐子の夫。
     工学博士号を持つ、S光学の技術的功労者。

    「塩月芳彦」
     政治家など有力筋の人脈を持つ副社長。
     多芸で器用。

    「佐伯義男」
     塩月が伊佐子に紹介した弁護士。
     兄は病院の院長。

    「石井寛二」
     五反田のアパートに住む、証券会社のセールスマン。

    「宮原素子」
     沢田家に来た若い速記者。

    「豊子」・「妙子」
     ともに信弘の先妻の娘。
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    投稿日:2022.09.06

  • anakenn50

    anakenn50

    このレビューはネタバレを含みます

    先日、大きな書店に久しぶりに行ったら、角川文庫の横溝正史の作品の一部が昔のカバーで限定発売されていた。
    僕には、懐かしく、嬉しい限りである。
    文学のようなものを、暫く続けて読んだので、松本清張の「強き蟻」を購入した。
    池波正太郎と松本清張は、僕にとっては、どちらも何を手にしても安心出来る作家である。
    30歳も歳の離れた夫に後妻に入った伊佐子は、性欲も物欲も激しい女である。
    少し前に読んだ有吉佐和子の「悪女について」を思い出した。
    欲望を達成するために、病の夫を故殺して、その報いを受けることになるのだが、小説としては面白いけれど、やはりもっとミステリ色を出して欲しかった。
    ここでは、破滅に至る契機が、浮気相手との睦言を録音したテープになっているのが、皮肉といえば皮肉だろうか。
    最終章で、口紅の色の違いや、スリッパの泥など、とても瑣末なところ唐悪事が露見しているのが、なるほどと思わせられた。 
    解説を読むと没後20年だそうである。
    しかし、昨年も清張原作のドラマをいくつか見たし、光文社文庫では、定期的に新刊を刊行している。
    今まで、新潮文庫と文春文庫が中心だったが、光文社文庫のラインナップも魅力的である。

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    投稿日:2022.01.09

  • minerva-48

    minerva-48

    S工学という会社の重役の後妻となった伊佐子。30歳も歳が離れた結婚は、遺産目当てであった。多情ゆえ多くの男と関係をもつ伊佐子は、愛人の恋人の死亡により殺人の嫌疑をかけれ、愛人の口封じのために弁護士を雇う。夫は、会社の経営上の理由から重役を退かされ、2度目の心筋梗塞を発症し弁護士の兄が経営する病院に入院する。夫は自費出版の自叙伝執筆のため、速記者を雇う。伊佐子は、弁護士とも深い関係に発展する。夫と前妻との間の娘姉妹を警戒し、心筋梗塞を再度起こさせるべく自宅療養に切り替え、まんまと夫は死亡。しかし、そこから一気にどんでん返しが起こるという結末。文末に掲載の解説も、一味違った趣向で面白い。続きを読む

    投稿日:2021.01.19

  • ichigosamba

    ichigosamba

    このレビューはネタバレを含みます

    *遺産目当てに三十歳も年上の会社重役と結婚した沢田伊佐子。女盛りの肉体を武器に、奔放に生きる彼女のまわりにはまた、欲望に身を焼かれて蟻のようにうごめきまわる人々が群がってくる。一方、そんな人々を冷やかに、密かに眺める者もいる―欲まみれの男女が入り乱れ、犯罪が犯罪を呼ぶ異色のサスペンス*

    さすがは松本清張氏!と言う重厚さ。何と言っても、登場人物一人一人に肉感があります。伊佐子の清々しいまでの厚かましさと悪女っぷりもさることながら、最後の章のどんでん返しの鮮やかなこと!速記担当の女の聴取書からの、伊佐子の愛人の供述…!! 今までと同じペースでさくさく読み進んでいたものの、急にその展開来るか?!と目を疑いました。やられました。お見事です。

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    投稿日:2019.05.09

  • seiyan36

    seiyan36

    この作品は1970~71年に発表されたとのこと。
    清張は1909年生まれなので、61歳位の時に書かれた作品である。

    主人公の伊佐子は、高齢の夫の死を望みつつ生活している、とんでもない女である。
    が、こういった事例は実際にありそうで、それほどとんでもないことではないようでもある。

    清張の作品は、まだ数冊しか読んでいないが、全うでない方法で良い思いをしている輩が、全うでない終わり方をするというパターンが多そうなきがする。
    そこに、爽快感がある。
    続きを読む

    投稿日:2016.09.11

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