【感想】生きるとは、自分の物語をつくること

小川洋子, 河合隼雄 / 新潮社
(118件のレビュー)

総合評価:

平均 4.0
31
39
25
4
0
  • タイトルがすべてをあらわしている

    小さく、弱い存在へと寄り添う物語をつくりつづけてきた小説家の小川洋子と
    他人が物語を見つける/回復する手伝いをしてきた臨床心理士の河合隼雄。

    人が生きていくうえで、難しい現実とどう折り合いをつけていかなくてはいけない。
    そのとき、ありのままでは受け入れられず、心のかたちに合うように、
    その人なりに現実を物語化して記憶していっているはずだと小川はいう。

    小説でひとりの人間を描く時、作家はことばやお話しという形で取り出して、
    それぞれの積み重ねてきた記憶を再確認するのだと。

    一方で臨床心理におけるカウンセリングは、
    カウンセリングに来た人が、悩み迷い失いつつある自分の物語を発見し、
    その物語を生きていけるような「場」を提供することだと河合はいう。

    結局どちらもひとりの人間がことばと物語でもって、
    いかに生きるのか、生きてきたのかを見つめることなのだ。
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    投稿日:2016.05.31

ブクログレビュー

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  • 橙色の屋根

    橙色の屋根

    とても良い。常々思っていた疑問の答えがここにあった。
    小川洋子氏との対話形式なのでストンと心に落ち着く。
    もっともっと対談して欲しかった。小川洋子氏の長いあとがきが良い。繰り返し読んでいこうと思う。

    投稿日:2024.05.11

  • kaido

    kaido

    河合さんの本を読むのは2冊目ですが、このおじさん好きだわ。大人が失った、子どものときに持っている力に着目されているところとか、深くお聞きしてみたい。それとか、相手の存在を受けとめる力も見習いたい。
    の方のそういう人間力の根っこに、文学とか人文学的な関心とか経験が大いにあるんだなと実感する。まさに、生きることは、自分の物語をつくること であると、自分に対しても他人に対しても思いながら人と関わっておられるのだなと思った。
    「博士の愛した数式」は映画で観たのみですが、そういう河合さん的な、子どもの力に着目するような読み方をしたら面白そうだと思った。
    続きを読む

    投稿日:2024.05.03

  • じーま

    じーま

    このレビューはネタバレを含みます

    そう。「個」というものは、実は無限な広がりを持ってるのに、人間は自分の知ってる範囲内で個に執着するからね。私はこういう人間やからこうだとか、あれが欲しいとか。「個」というのは、本当はそんな単純なものじゃないのに、そんなところを基にして、限定された中で合理的に考えるからろくなことがないんです。前提が間違ってるんですから笑


    日常の中で、何気なく人を励ましてるつもりでも全然励ましたことにはなってなくて、むしろ中途半端に放り出してるってことがあるんでしょうね。
    それはつまり切ってるということです。切る時は、励ましの言葉で切ると一番カッコええわけね。「頑張れよ」っていうのは、つまり「さよなら」ということです笑

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    投稿日:2024.04.21

  • ハルカ

    ハルカ

    私がその域に達していないのか、
    なんだかあんまりしっくりこず。

    宗教や日本のルーツがお二人の経験談と絡み合う。

    様々な信仰対象や歴史的背景があって
    今の我々が形成されているんだから
    しっくりこなければいけない気がするんだけど、
    言語化できぬ。。

    河合先生の「望みを失わず傍におれたら、もう完璧」がよかった。
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    投稿日:2024.04.16

  • うさぎ

    うさぎ

    「博士の愛した数式」の小川洋子先生と、臨床心理学者 河合隼雄先生の対談集。

    人と人との関係は、寄り添い合うこと。人を助けようとする人は使命感に燃える強い人が多いけれど、そこに力関係があってはいけない。どんな人に対しても、スッと相手と同じ力になることで生まれる繋がりがある。

    一神教の世界では、神様の存在が大きいから、人間は神の創りたもうた世界を物語を生きている。日本のような多神教の世界はたくさんの物語が生まれる。

    「源氏物語」の光源氏は、女性に光を当てる役。

    【厳密さと曖昧さの共存】
    日本は境界が曖昧。一流企業の並ぶ街に、ガード下の飲み屋など、街の境界も曖昧な国。
    機械は整合性のあるもので、矛盾する世界の中で折り合いをつけて生きていくのが人間。その折り合いの付け方、物語の描き方にこそ人の個性が現れる。生と死、身体と精神、意識と無意識を結びつけるのが物語。生きるとは、自分にふさわしい、自分の物語を作り上げてゆくこと。

    【やさしさの根本は死ぬ自覚】
    お互い限りある人生なんだ、という意識を共有することが、魂同士の人間関係構築には大切。その自覚があればお互いを尊重しあえる、相手のマイナスを受け入れられる。
    続きを読む

    投稿日:2024.03.20

  • shuzo music&book

    shuzo music&book

    充実の対談集。
    「博士の愛した数式」の逸話と「源氏物語」の解釈が新鮮。
    日本の曖昧さと西洋の厳密さが興味深い。
    私はアースされているから大丈夫という河合先生の心構えを見習いたい。

    投稿日:2024.02.17

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