【感想】私が殺した少女

原りょう / 早川書房
(135件のレビュー)

総合評価:

平均 3.5
16
46
42
12
5
  • 原寮の直木賞受賞作で沢崎シリーズ第2弾

    まずは衝撃的な題名である。この題名だけでいろいろと話を想像してしまうのだが、その意味は物語の途中でわかってくる。今回、主人公の沢崎は最初から振り回され、読者もおなじく何が起こっているのかかわらずスピーディーな展開に巻き込まれる。だた後半、犯人がわかってからの動機についてはもう1つ弱いようには感じた。が、それを差し引いても無駄を削ぎ落とした文章やそこで語られるセリフが、本当ハードボイルドしていて、なかなかここまで独自の探偵ものを描いた日本の小説は少ない。しかも小説の中ではほとんどすべての地名や店名などが実名で出てくるため、かなりリアル。 私はこの2作目から読んだ為、最初は沢崎の勤める「渡辺探偵事務所」ととの関係がよくわからなかったのであるが、事務所の責任者である渡辺は行方不明ということで、むしろメインの話より個人的には沢崎の過去の方に興味が湧いた。ぜひ若かりし沢崎の話を描いてもらいたい、沢崎の人となりがどう形成されていったのか興味がある。まあ、ハードボイルド小説の主人公は、ポリシーはあるがどこか皆な偏屈だから。
    作者は、遅筆家で有名であるが、最新作をぜひお願いします。
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    投稿日:2013.09.24

  • 淡々と…

    ハードボイルド語り口なので
    嫌いな方には、長編だし
    途中でイラッとするかも。
    ほとんど無感情な話口で
    物語が進む分、ラストの
    どんでん返し等、驚きは
    薄いです。
    僕は読んでるうちに、この
    淡々と話す主人公口調が
    心地よく感じましたけど。
    伏線ではない無駄な描写も
    多いですが、そこがまた
    登場人物の何気ない動作等を
    連想して、読み手の空想力を
    かきたてるのにいい感じかな。
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    投稿日:2013.12.07

  • 直木賞受賞の傑作ハードボイルド。

    探偵沢崎シリーズ第二弾。
    ヴァイオリンの天才少女が誘拐された事件に巻き込まれた沢崎。彼がやがて辿り着いた真実とは…。

    錦織・橋爪・相良など、前作からのキャラクターも健在。猟犬・沢崎のハードボイルドな生き様と、前作にも増して暗く・思い雰囲気が、重厚なミステリーを形作っている良作。今回は設定上、音楽的な内容も関わり、フリーのジャズピアニストという作者の経歴も多分に活かされていておもしろい。
    結構な長編なのだが、ボリュームに比例しない読みやすさは著者の推敲の賜物か、驚異的。
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    投稿日:2013.10.11

  • かっこいいおっさん、探偵沢崎!

    ショッキングなタイトルと違ってホラーものではなく、中身は物静かな探偵のハードボイルド小説。
    以前から各所のオススメミステリーでも名前が上がってたので、今回、「本好きこそ押さえておきたいこの賞作品特集」で半額セールだったので手にしてみました。
    一本の事務所への電話から誘拐事件に巻き込まれ、誘拐犯の一人として逮捕された挙句、身代金の受け渡し人として事件に協力する羽目になる。
    スタイリッシュな展開で、探偵沢崎を中心に事件の全貌が見えてくる。本作がシリーズ2番目で警察に疑われた理由も前作での出来事が絡んでいますが、前作読んでなくても問題ないです。
    中々の長編小説ですが最後まで楽しめました。
    1989年頃なので色々と時代的な設定が皆さんがおっしゃるように昭和満載です。
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    投稿日:2014.07.14

  • 本格的なハードボイルド小説

    寡作な作家だと思います。本格的なハードボイルドが読みたくて、購入しました。話の内容は少し時代背景を感じさせますが、読みごたえのあるハードボイルド小説です。

    投稿日:2015.04.08

  • 巻き込まれ型ハードボイルド探偵小説の良作

    渡辺探偵事務所の沢崎に、一本の仕事の依頼の電話がかかってきます。その依頼からその事件に関わることになり、男としての信念(ハードボイルドではそこが重要)に従い、探偵沢崎の捜査の行き着いた先は・・・
    ロバート・B・パーカーの「初秋」にも通じる、男の本当の強さと優しさ的な話を読みたい人にはお勧めです。
    今の時代には受けないのかも?!
    それでも、自分は探偵沢崎が好きだったりします。
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    投稿日:2015.11.18

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ブクログレビュー

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  • 永杜

    永杜

    依頼の電話があって出かけたのに、警察に囲まれた。

    初っ端からすごい疑いをかけられています。
    協力するか否かの選択も、したくないものがありますが
    料金を説明して仕事とするのがすごいというか…w

    身代金の受け渡し、入った邪魔に、呼び出し電話。
    あからさまな罠もあり、どうなってこうなるのか。
    容疑者多数に、首を突っ込んでくる兄も。
    背負うには辛すぎる真実が分かった時
    おろしていいというのに、ほっとします。
    続きを読む

    投稿日:2024.02.09

  • 0107springsteen

    0107springsteen

    作家がお亡くなりになったというニュースを聞いて再読。
    チャンドラーにあまり通じていないので、それらしいのか判断できかねるんですが、オチへの流れがちょっと慌ただしいというか推理モノとしては弱いのかなぁという感じが。
    でもそういうのではなく探偵につきまとう雰囲気が重要というかもしれませぬ。
    ただ当たり前ですけど昭和・平成の始め感がすごい、この作品のテイストを良くも悪くも決定している気がしますなぁ。
    続きを読む

    投稿日:2023.08.01

  • おびのり

    おびのり

    久しぶりにじっくりとサスペンスを堪能しました。
    ハードボイルドミステリーでしょうか。

    感傷や恐怖の感情に流されない探偵・沢崎が誘拐殺人事件の犯人を追います。
    将来を嘱望されたヴァイオリンの天才少女が誘拐される。要求された身代金は6千万円。
    沢崎は、その身代金の受け渡しに 巻き込まれてしまう。
    身代金受け渡しに失敗した彼は、彼女の生存に責任を感じながらも、冷静に犯人を絞り込む。多くの関係者が絡み、ストーリーが緻密で繊細。
    結末には、違和感が残りますが、関わった人達の心情を描きながら核心に近づく魅力的な作品でした。

    作家原尞氏も直木賞受賞の本作も 全くノーマークでした。本とコさんご紹介、的確で素敵なレビューありがとうございました。
    続きを読む

    投稿日:2023.07.21

  • 2co-dobin

    2co-dobin

    前から読んでみたかった探偵沢崎シリーズです。
    登場人物のだーれも携帯を持っていない、そんな時代の話。
    本作で沢崎氏は、誘拐事件に巻き込まれて右往左往させられるのですが、
    電話で連絡をとる場面が多々あって、それが全部公衆電話で、沢崎氏は
    テレカにすら、なんとなく拒否感を持ってて。
    どうしても、今読むと陳腐なかんじは否めない。中途半端な時代ものみたいで。
    今更ながら携帯電話の起こした変化の凄まじさを実感します。

    そんで、ハードボイルドですよ。探偵っすよ。今読むと陳腐なところもあるけど、
    文句なしにカッコいいんですよね。酒と煙草と車。
    探偵って、警察からも依頼人からも、いいように利用されたり
    スケープゴートにされたり、めっちゃ弱い立場なんだけど、沢崎氏は矜持を失わず
    警察に脅されようがヤクザに邪魔されようが、殴られ蹴られされても自分の進むべき方向を見失わないんです。んで、彼の日常は一切、語られない。心情も、思いも。
    タフでなければ生きていけない。
    おすすめです。古いですけど。
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    投稿日:2023.07.05

  • ベスパー

    ベスパー

    このレビューはネタバレを含みます

    様々なことが回りくどく語られていくが、結局は兄弟喧嘩の弾みで死んでしまった少女、殺してしまった少年を庇うためのことだったとか、ちょっと感情移入はできなかった。

    レビューの続きを読む

    投稿日:2023.06.03

  • NO Book & Coffee  NO LIFE

    NO Book & Coffee NO LIFE

     今月4日、作家の原寮さんが逝去されました。2018年発表の『それまでの明日』しか読んだことがなく‥、えっ、これがまさかの遺作!
     本作は、1989年刊行の直木賞・ファルコン賞W受賞作品です。優れたハードボイルドという証なんでしょうね。

     本書は、探偵の沢崎がシリーズ化された第2作とのことで、沢崎が「私」という一人称で語る、ヴァイオリンの天少女の誘拐事件を軸にした物語です。
     なるほど、沢崎の特定の感情に流されず、強靭で時に冷酷な言動の描写や、天候、実在の街並み、家屋周辺や室内に至る詳細な表現から〝硬派〟という印象を受けます。
     読み手は、探偵である沢崎視点で事件と様々なエピソードに触れ、緻密な新展開が続くスピード感があり、飽きさせません。

     誘拐犯は誰? 事件の真相は? と最後のギリギリまで焦らされながら、突然解決に向かう終末の展開に‥。ん? (読み手の私は)沢崎に置いてかれた? と若干の「狐騙されモード」もありました。
     タイトル『私が殺した少女』の「私」に、いろんな人を当てはめられる意味合いを感じ、そこにも著者のねらいがあったのかなと考えました。

     巻末の(あとがきに代えてー敗者の文学)「ある男の身許調査」、原尞さんによる「私がはじめて原尞に会ったとき〜」で始まる文章は、寡作である著者の半生を語るもので興味深かったです。
     心よりご冥福をお祈り致します。 合掌‥
    続きを読む

    投稿日:2023.05.15

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