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杉本苑子 / 文春文庫 (2件のレビュー)
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総合評価:
崩紫サロメ
6
加害者の家族、被害者の家族
自分の息子が少女を殺してしまう。故意にではなく、喧嘩をして突き飛ばしたら死んでしまったのだ。 少年の母は、少女の死に衝撃を受けるとともに、平然としている息子に対し、この子は何かが欠落しているのではない…か、と感じる。 何か、少年犯罪の話のような始まり方。 母親の方はともといい、豊臣秀吉の姉であり、主人公的なポジションだ。 少女を突き飛ばして死なせた少年は秀保。 別の弟・秀長の養子となっている。 タイトルはいかにも歴史ものであるが、読んでいくと 犯罪加害者の家族の物語のような印象を受ける。 ともは、息子や弟の見せる冷酷さや残忍さに戦慄する。 だが、そんな息子たち(どの子も何かが欠けたような子なのである)や 弟(秀吉)をそれでも愛しく思い、何とか守ってやりたいとも思う。 本書の巧いところは、「身内故の甘さ」と「身内故の厳しさ」の両立、葛藤。 うちの子がそんなことをするはずがない。 いや、でも、小さい頃から他人は知らないような残酷な面を見てしまっている。 いや、でも・・・。 時には、被害者までも心の中で責める。 三男・秀保に殺された少女の兄に対して (執念深すぎるのではないか)とすら思ってしまう。 また、ともは、自分の身内の兇行について「血筋なのではないか」と、 我が身をも忌まわしく感じる。自分の産んだ子が、自分の血を分けた弟が・・・。 この「血」の感覚は、現代の犯罪加害者の家族の手記などからも感じる。 だが、「犯罪の遺伝子」などは存在しないはずだし、精神疾患を遺伝であると言ってしまえば、 やはり科学的とは言えないし、問題があるだろう。 だが、忌まわしい罪を犯した身内と同じ血が流れていることに対し、 科学では割り切れない思いを持ってしまうのは現代人でもあることだろう。 加害者の家族が被害者の家族に対して執念深いなどと思ってしまう勝手さ。 精神の異常が血を介して伝わる信じていることによる苦しみ。 これは、実際にはあることなのだろうが、 たとえ小説あっても現代物では書きにくいテーマなのではないかと思う。 ともの血縁たちの悲劇は、史書に伝えられるとおりの展開(多少のアレンジはあり)であるが、 血縁が誰かを殺すこと、血縁が誰かに殺されることへの、 言葉にならない絶望感を、巧く言葉にしているところがすごいのだ。 さて、電子版にもあとがきが収録されており、本書とNHK大河ドラマ『おんな太閤記』をめぐる話である。 歴史、物語、著作権・・・様々なことを考えさせられる話で、これも一読に値する。続きを読む
投稿日:2014.11.25
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すたうお
豊臣秀吉の姉である「とも」の目線で豊臣家に関わる人たちについて書いた本です。 ともは自身の家系に潜む狂気の血におびえながら、弟である秀吉、子である秀次、秀勝、そして秀保について語っています。 著者…が女性であるとそうですが、登場人物に女性が非常に多いです。 元々、秀吉の側室が多いし、秀次もそれに輪をかけて、側室が多いです。そうした人物の乳母まで出てくるので、あっちこっち戻りながら読まないと分からなくなることもしばしばありました。 ↓ ブログも書いています。 http://fuji2000.cocolog-nifty.com/blog/2013/07/post-1fdb.html続きを読む
投稿日:2015.12.05
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