【感想】獣の奏者 I闘蛇編

上橋菜穂子 / 講談社文庫
(460件のレビュー)

総合評価:

平均 4.5
232
153
29
3
1
  • あらゆる人に読んでもらいたい王道の物語

    無駄がない、正面から書かれたまさに王道の物語。
    ストーリー、文脈の蓄積によって初めて伝わる「ものがたり」の力をまざまざと思い知らされた本当の名作。
    あっという間に4冊読み切ってしまった。

    私自身、一癖ある物語が好きだったりして(村上龍の「半島に出よ」とか大好き)、王道の小説ってあまり読んで来なかったのだけれど、
    この上橋菜穂子さんの文章は、無駄がなく、文学的な表現に耽溺することなく、かといって物足りなさもなく、あらゆる文章表現のお手本にしたいくらい。

    表現力はいわずもがな、この作家の凄いところは、いや、全部がすごい。
    「闘蛇」「王獣」という架空の獣の生態と、「真王(ヨジエ)」「大公(アルハン)」の政治の世界を巧みに組み合わせる構成力、
    子供の視点と親の視点、種族の視点を多角的に描ききる人間そのものに対する深い洞察、
    何よりも主人公エリンをはじめとした苦難に立ち向かう人々の苦悩と、ぎりぎりで譲れないところで発揮される人間としての強さ、
    親、子、師弟、友人の間に芽生えるとても深い愛情と責任感。

    自分ではいかんともしがたい状況に置かれ、理性で考えれば先に暗い結果しか想定できなくても、
    それでも自分の胸の底にある確信を信じて突き進む勇気。

    「人は、自分たちがなにをしていて、それがどんな結果を招くのか知るべきだと思う。どんな知識も、隠されるべきではないと思う。
     人という生き物が愚かで・・・どうしようもなく愚かで、知識を得たときに、それを誤った道に使ってしまうとしても、それでも」

    という一節が深く心に残った。
    この本には、自由ということは何なのか、生きるとはなんなのか、知るということ、知ることへの渇望が描かれている。

    児童文学のように扱われることがあるようだが、児童文学ではなく、子供にも読んでもらって様々なことを感じてもらいたい本。
    特に後半2冊は30代以上でないとわからない視点が多いように思う。
    あらゆる人に読んでもらいたい名作です。
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    投稿日:2014.12.01

  • 激動のファンタジー歴史巨編

    現実には存在しない野生生物が闊歩し、争い渦巻く国家が背景にあるファンタジー。

    人間と動物はなぜそこに在(あ)るのか?
    決して人間に懐かない神獣と意思を通じさせる主人公は、争いの渦中にいやがおうにも身を投じさせられていく。
    主人公がもの凄い運命の流れに飲み込まれていく様が、凄まじいほどに続きを読ませれと促す。

    高速で全巻揃えた。
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    投稿日:2013.10.01

  • エリンの世界にどっぷり、一気読み

    NHKのアニメでやっていたり、ファンタジー好きの友人から勧めらていましたが、複数巻に躊躇し、トライしていませんでした。しかし試しに1冊買うと一気読みでした。

    母の影響から、自然や生き物に親しみと興味を持っていたエリン。少女は母との別れ、新たな出会い、母の面影を感じながら?、
    自分の夢に向かって自分の意思をもって進んでいく。
    自分の意思で、選択し進んだ先に待っていたものは。。
    なにかのセリフですがやらずに後悔するよりは、やって後悔したほうがいいですよね。(エリンは後悔しなかったでしょうが)

    作者が最終巻のあとがきで、最初<闘蛇戦><王獣編>で完結した物語だったと語っています。
    その後エリンが再び呼吸しはじめ、<探究編><完結編>でき、今度こそ完結したとか。私もこの終わりが好きです。ぜひ最後まで読んでほしいです。
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    投稿日:2014.04.15

  • 良質、硬派なファンタジー

     女性の書き手さんに「硬派」というのもおかしいけれど。

     ライトノベルにこだわらず、あるいはライトノベルは苦手だけど、ファンタジーが読みたいな、という人に。

     のめりこみますよ。

     小野不由美さんの「十二国記」シリーズもそうだけれど、なんだか女性の方が「硬派なファンタジー」、書けてる気がします。

     どちらの方も、多作ではないのが悲しいです。

     1作に込められているエネルギーを思えば、無理もないと思いますけど。
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    投稿日:2013.09.25

  • 何度も読み返す大好きな本

     書店で初版本が平積みされているときは、残念ながら開いて文章が好きではないなと思い閉じてそのままにしてしまいました。
     が、数年後TVアニメ化され、初めて本を手に取りました。
    その時から何度も何度も読んでいます。
    ハードカバーに始まり、文庫本。電子書籍化されたときは感動でした。
     読者に人間社会について考察させつつ、賢い少女が悩みながらも明るく成長していくこの物語が大すきです。
    外伝の刹那はまだ電子書籍化されていませんが、1~4巻すべて素敵なお話です。
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    投稿日:2013.09.24

  • 素直に「面白かった!」と答えれれる本です。

    久しぶりに異世界ファンタジーものを読みました。
    感想は…?と聞かれると「面白かった!」と素直に答える事でしょう。物語に不思議な魅力がありました。
    主人公のエリンが持つ好奇心が「なんでも知りたい」という子供時代の自分と重なり、懐かしくもあり、恥ずかしくもあり…。来月は第2巻にチャレンジします。

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    投稿日:2014.01.30

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  • とり子

    とり子

    獣の奏者-闘蛇編-/上橋菜穂子作

    最初から涙涙。聡いエリンと冷静沈着ジョウンさん。とても良いコンビに胸が躍った。これからの展開が楽しみすぎてどんどん読んでしまう。とても面白い。
    上橋菜穂子さんお話は抑揚や展開の幅がとても広くてすごいといつも思う。登場人物もそれぞれに個性がはっきりしていて賢く、どの人物もとても好き。続きをすぐに読みます。続きを読む

    投稿日:2024.04.21

  • 卯月さくら

    卯月さくら

    幼い頃にNHKの教育アニメで見てた作品。
    上橋菜穂子の世界に憧れた作品でした。
    心が傷ついてしまったエリンと蜂飼いのジョウンとの出会い。すいすい読めました。

    投稿日:2024.03.28

  • m

    m

    文字からひたすら想像力を働かせて現実とかけ離れた世界に入り浸った 自分では全く想像の及ばない別世界に完全に入り込んで戻らずに読み進めた後の余韻も心地良かった ファンタジーの頂点だと思う

    投稿日:2024.03.22

  • Karen✲*゚

    Karen✲*゚

    小学生の時に見たアニメの朧げな記憶と共に読了。エリンのまっすぐで健やかな動物への愛情、お母さんへの憧れと尊敬、ジョウンさんや先生達の素敵な気遣いと愛情…全てが尊かった。
    (メモ)2巻目も216ページまで読んだ。続きを読む

    投稿日:2024.03.06

  • あ

    エリンの波瀾万丈な人生を追体験するような気分で読めます。何があっても最後は前を向くエリンの信念に心を打たれます。

    投稿日:2024.02.20

  • たぬきつね

    たぬきつね

    一貫して、獣はそして人はどう在るべきか、一つの考え方を示してくれる。そのメッセージを、これ程魅力的なストーリーに乗せられる作者にただ脱帽です。

    投稿日:2024.02.19

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