なぜ働いていると本が読めなくなるのか
三宅香帆(著)
/集英社新書
作品情報
【人類の永遠の悩みに挑む!】
「大人になってから、読書を楽しめなくなった」「仕事に追われて、趣味が楽しめない」「疲れていると、スマホを見て時間をつぶしてしまう」・・・・・・そのような悩みを抱えている人は少なくないのではないか。
「仕事と趣味が両立できない」という苦しみは、いかにして生まれたのか。
自らも兼業での執筆活動をおこなってきた著者が、労働と読書の歴史をひもとき、日本人の「仕事と読書」のあり方の変遷を辿る。
そこから明らかになる、日本の労働の問題点とは?
すべての本好き・趣味人に向けた渾身の作。
【目次】
まえがき 本が読めなかったから、会社をやめました
序章 労働と読書は両立しない?
第一章 労働を煽る自己啓発書の誕生――明治時代
第二章 「教養」が隔てたサラリーマン階級と労働者階級――大正時代
第三章 戦前サラリーマンはなぜ「円本」を買ったのか?――昭和戦前・戦中
第四章 「ビジネスマン」に読まれたベストセラー――1950~60年代
第五章 司馬遼太郎の文庫本を読むサラリーマン――1970年代
第六章 女たちのカルチャーセンターとミリオンセラー――1980年代
第七章 行動と経済の時代への転換点――1990年代
第八章 仕事がアイデンティティになる社会――2000年代
第九章 読書は人生の「ノイズ」なのか?――2010年代
最終章 「全身全霊」をやめませんか
あとがき 働きながら本を読むコツをお伝えします
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商品情報
- シリーズ
- なぜ働いていると本が読めなくなるのか
- 著者
- 三宅香帆
- 出版社
- 集英社
- 掲載誌・レーベル
- 集英社新書
- 書籍発売日
- 2024.04.17
- Reader Store発売日
- 2024.04.17
- ファイルサイズ
- 0.7MB
- ページ数
- 288ページ
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この作品のレビュー
平均 3.6 (40件のレビュー)
-
2024年を迎えてから読書の冊数がガクンと落ちた。厳密に言えば、読んではいるけれども最後まで読みきれない。これまでは隙間時間が10分でもあれば本を開いていたのに、今では片道1時間以上かける通勤電…車の中でさえ本を読む気になれない。読まなきゃ読まなきゃと思ううちに、月日は流れ、葉桜が目立つ時期になってしまった。
時間はある。また、読みたい気持ちもある。ただ、読むためのエンジンが駆動しない。現に本を開き読み始めさえすれば、次が気になり読み進めてしまう。だが本を開く行為そのものが億劫で、読み始めるのに膨大な労力を要する。
これはいったい何なのか──
さて、縁は異なもの味なものとは言い得て妙で、本との出会いは不思議なものだ。面白い本を求めているときに限ってめぼしい本が見つからない。逆にふらっと立ち寄ったときに「これは…!」という本に出会ったりする。
本書はまさにその一冊だ。
前置きはこのくらいにして、なぜ私は本を読むことができなくなったのか。分析するに、
1) 時間がない
2) 仕事による疲労
の二つの要因に分けられると考えた。しかし考えても考えても、①読書する時間はあるし、②疲労困憊するほど働いているわけでもない。
では、なぜ本が読めないのか。これにはさまざまなアプローチがあると思うが、本書は歴史的な文脈からこの問題を徐々に紐解き最終的には社会的な側面からアプローチを試みている。その過程が正しいのかは別として、非常に興味深い手法であり一読に値する価値がある。
私たちが読書をする目的を考えてみよう。勉強するため、情報収集、仕事へ役立てるため、単純に趣味として、などなど高邁なものから凡俗なものまで多岐にわたる。それぞれにそれぞれの良さがあり、どれが良いと区別できるものではない。しかし、どのような意識を持って読書するかによって読書の「仕方」が変化するのは事実だ。そして、現代の社会人が読書できなくなったポイントはここにある。
大衆による読書という知的慣習は日本開国に遡る。欧米諸国に追いつき追い越せを果たすために、明治政府は国民へ教育の重要性を説き読書を推奨した。だから昔も読書をする習慣は存在していた。当時の日本国民は資本主義が流入し長時間労働が蔓延する中で本を読んでいたのだ。そしてこの慣習は今もなお続いている。
要するに現代の読書は何かしらの答えを探すための読書であるのだ。出版業界の業績は下がりつつあるが、その中でも「自己啓発系」のジャンルは堅調である。それは自己啓発本が何らかの答えをくれるからだ。
その根底には「コスパ」「タイパ」の考え方が潜んでいる。無駄なく効率よく情報を集めたい、答えを知りたい。そんな下心が見え隠れしている。つまり私たちは無駄が嫌いなのだ。
本書では、小説などの本から得られる芋蔓式の知識をノイズありの知識と定義付けし、反対に、読み手が知りたい情報そのものをノイズのない知識と位置づけをしている。読者は、前者を不要なものと捉え、後者に至上の価値をおく。
しかし、そんな偶発的な知識を切り捨てて良いものだろうか。そうして得た知識が役に立つものであれ役に立たないものであれ、恩恵を与えてくれるのは確かだろうし、そうした厚みが精神的な余裕へとつながる。これを俗に「教養」と言う。
そう、私たちは「教養」が大事なものであるとは頭で理解しつつも、そんなものに労力を費やしている余裕はない。答えは今すぐに知りたいし、教養を培ったところで何の役にも立たない(可能性の方が高い)。
だから私たちは気軽に情報の手に入るSNSにのめり込むのだし、直接的な解が導出されない文学作品を読む気力が起きない。実用的な情報を絶えず求めるウォーキングデッドさながらだ。
しかし、私はこれを書いていて思うのである。即物的な情報は結局はすぐに廃れる。新聞と同じだ。新聞はありとあらゆる情報が記載されているが、一年と経てばただの紙屑でしかない。激動の荒波に耐えうる本質的な知識は長い時間をかけて収集し、知識と知識を掛け合わせて自らが見つけ出していくしかない。つまりそれは「知恵」だ。
皆さんも胸に手を当てて考えてみてほしい。ついこの間仕入れた実用知を現実世界へ上手く使うことができただろうか。おそらく多くの人が失敗に終わったことと思う。
なぜなら、状況に応じて実用知を使い分けていないからだ。のべつまくなしに「チシキ〜」「チシキ〜」とさまよい求めてみても、そっくりそのまま適用できるわけではない。情報や知識は状況に応じて「加工」する必要があるのだ。
にもかかわらず私たちは実用知を「加工」せずそのまま使おうとする。だがその試みは得てして失敗に終わりがちだ。だから私たちは次から次へと情報を求め続ける知的ゾンビへと化してしまう。
言うなれば知識は食材だ。新鮮なうちに適切な調理をすれば美味しい料理になる。しかし、腐った食材を調理しても美味しいものはできない。また、いかに新鮮でも調理法を謝れば美味しくはならない。
一方で、知恵つまり料理の技術があればどうか。食材が新鮮であればなおのこと、たとえ多少劣ったものであったとしても調理法ではいくらでもよくなる可能性がある。
要するに知恵とは既存の知識に付加価値をつける技法なのだ。
知恵の前段階には「教養」が存在し、教養の前には「ノイズありの知識」が存在する。そして、ノイズありの知識の前には「ノイズなしの知識」が横たわる。私たちはこの「ノイズなしの知識」を仕入れて満足している。本当に重要なのはその先の先だというのに。
これまで私が切り捨てたモノの中にどれだけ高価ものが眠っていたことか。それを思うと、本の隅から隅まで暗記するほど読みたくなる。
まあそれこそ本当に読む気が失せるんだろうけれど。続きを読む投稿日:2024.04.15
話題になっているので、手に取ってみました。
読む前は、なぜ読めなくなるのかについて精神論や脳の仕組みからの話があるものと思っていましたが、読んでみると戦後の日本の歴史の流れから人々の慣習や意識がどのよ…うに変わっていったかを追う構成になっており、意外な内容でしたが、考えたことのない視点だったのでとても興味深かったです。
自分が生きていない時代のことは、へー!と新しく知ることばかり。
歴史で習っていることは、一部の動きや流れで、それに振り回されたのか大衆が動かしたのか、一般庶民についてはそこにフォーカスして動きを知ろうとしないと掴めないものなのかなと思いました。
自分が生きている間の話は、単語での説明は考えたことはなかったですが、肌感覚でなんとなく感じていたことが言語化されていました。
全編を通して、本への愛情を感じるものでしたが、本を読みながらちょっと嫌な予感がしていたのですが、あとがきを読んで確信と変わりました。
自分は、本の感想をこうして記録することは好きですがSNSで語り合うことは苦手で、それをしている人たちの界隈すら苦手です。
本が記号的になっている感じがしたり、人間関係は複雑なのでおべっか感想とか賛賞とかあったら嫌だなと思っています。本、作品そのものに真摯に向かうものだけではない、そのほかのことを気にしたり慮ったり、言いたいことが言えないことになるのは嫌だなと。
でも、この本の中でちょこちょこ触れられていましたが、本の文化が栄えるのであれば手段を選んでいる場合ではないし、いろんな形で盛り上がれば良いと思うので、わざわざ絡みにいって否定したりはしません。
半身の話は、理想ではありますが実現に至るまでの現実的な著者の考えや意見(どこから取り組みを始めるか、農産業は、医療従事者は、など?)が足りていない点に、少し頼りなさを感じ本の失速を感じました。
ただ現状のホワイトカラーの人の会議まみれの無駄な時間の働きは嫌だなと思うので、変えたらどうかという意見が出るのは良いことと思います。
この本が話題になれば、いろんな人の頭の中に著者の「半身」の考えが浸透して、そこから人それぞれ少しずつ行動や意識が変わっていったら…と社会が変わる可能性もあるのではと期待ができる気がして、本のロマンだなと。
本と大衆の動き、当たり前ですが相関関係があるんだな〜と。
文庫化を待たず単行本が発売されたタイミングとか流行っているタイミングで手に取ることがその本をより理解できる(本の内容だけでなく、なぜその本がこのタイミングで出版されたのか)と思っていましたが、今まで以上に、芥川賞・直木賞の受賞作はリアルタイムで享受した方が良いのかもと思わされました。旬のうちに。
働いていると本が読めなくなる理由に、スマホの悪影響があるのではないかと、気になるのでその視点の可能性もほのめかしてもらえたらより面白くなった気がします、個人的に。
脳の興味の奪い合いでスマホ一強の時代というか…脳の仕組みからもどういうものなのか知りたいです。
本だけでなく、LINEなど返事はしていないのにSNSは更新したり読めたりできることについても、似たようなことが言えるのかなぁ。。続きを読む投稿日:2024.05.07
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