水道、再び公営化! 欧州・水の闘いから日本が学ぶこと
岸本聡子(著)
/集英社新書
作品情報
水道民営化とは、地域窮乏化政策だ! 欧州の水道再公営化運動が生んだ、新たな民主主義から学び、日本の水道を、グローバル資本から守る。一九八〇年代以降、民営化路線を歩んできた欧州の水道事業。しかし杜撰な管理や財務の問題にスポットがあたり、再び、水道を公営化に戻そうという大きな流れが市民運動を起点に巻き起こっている。昨今、注目されている欧州の左派ポピュリズムのうねりの中核は、実は「水道の再公営化」を求める権利運動だったのだ。水は、人々の共有財・公共財<コモン>である。資本が利潤をあげるための対象として水を扱えば、たちまちその地域は窮乏化していく。民営化で疲弊した欧州の人々の怒りが地方自治体を動かし、「ミュニシパリズム」や「フィアレス・シティ(恐れぬ自治体)」など、新しい民主主義の形を作り出しているのだ。その成果である、水道事業の再公営化はなんと178件。水を再び自分たちのものへと取り戻す欧州の運動から日本が学び、各自治体において民営化をストップさせるにはどうすればいいのか。日本人でありながら、欧州・民主主義の最前線に立つ著者が、日本再生のためのカギを明かす。
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商品情報
- 著者
- 岸本聡子
- ジャンル
- 教養 - ノンフィクション・ドキュメンタリー
- 出版社
- 集英社
- 掲載誌・レーベル
- 集英社新書
- 書籍発売日
- 2020.03.22
- Reader Store発売日
- 2020.04.17
- ファイルサイズ
- 0.5MB
- ページ数
- 224ページ
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この作品のレビュー
平均 4.1 (15件のレビュー)
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水道、再び公営化!
ヨーロッパでの動きをもとに、水道事業の民営化に対して一石を投じる本書。
フランス、イギリスが水道を民営化された状態からいかにして公営化に至ったかが記載されている。また、水や住居な…どの<コモン>を民間企業に任せることの危険性を論じている。論点としては、一つは水貧困の問題である。水貧困とは、家計支出のうちの水道料金の割合が一定以上の世帯を指すが、水道料金という固定費を民営化=企業の収益状況により値上げが起こるものとしてしまうと、貧困層の生活が苦しくなるというものである。実際に、民営化直後に水道料金を4倍に引き上げる企業も存在し、その結果、貧困層はトイレを毎回流さないなどの対応で水道料金の支出を減らすということを余儀なくされているが、そのような対応が人権を棄損するものではないかという論調のもと、市民団体が再公営化の運動を始めた経緯などが記載されている。また、単純に民営化の方が高くかかるということも述べられている。水メジャーは地方公共団体とコンセッション契約というものを結ぶ。このコンセッション契約は、地方公共団体がお金を民営業者に支払って水道事業を委託するものであるが、その委託料金には、水道事業を行うにあたり民営業者が資金調達する際の金利や民営業者の役員報酬などが過大に支払われていると糾弾されている。資金調達する際の金利は、市民の税金によって賄われており、全体として公営化した方が安い場合は、何のメリットもない。さらに、民営化によって危機対応時のリスク管理も切り詰められる傾向にあり、倒産リスクのある一民間企業が水道事業でリスク管理をおざなりにした場合、割を食うのは市民である。
上記の対応として、ヨーロッパではミュニシパリズムという新たなムーブメントが起きている。地方都市などと市民団体などが連携し、民営化されたコモンを再公営化することや、地産地消を標榜する動きである。規模の経済を理由に民営化された事業の収益は結局のところ国外の流出しており、現在、リスクだけが転嫁されている状況になっているコモンを扱う事業を、再び市民の手に取り戻すという考え方である。ミュニシパリズムは地域主義と混同されることがあるが、地方都市間での国際協調がある点で、地域主義とは異なる。ミュニシパリズムのベースとして、国家という枠組みを超えた多国籍企業による民営化に対抗するためには、地方都市や市民団体もまた、国家という枠組みを超えた連帯が必要であるという考え方がある。まさしく、マルクス・エンゲルスが共産党宣言で労働者の国際協調を訴えたように、地方もまた、国際協調を通じて多国籍企業に対抗すべきではないかというところがミュニシパリズムの現代性であろう。筆者は、国家が多国籍企業に対して利益誘導し、草の根の地方政治を蔑ろにしてきたツケを今払うことになっていると語る。実際、日本においてもトリクルダウン論法を下に、法人税減税や特区構想を行っているが、果たしてこの動きは富めるものがさらに富めるようになるわけではないのかという論点がある。そうした動きに対抗する手段として、ミュニシパリズムは新たなムーブメントとなっている。しかし、ここまでくるともはや国家という想像の共同体に何の意味があるのかとも思えてくる。現在、テロリズムやゲリラ戦によりWW2とは別の形で世界大戦が起こっていると話す政治学者もいる。これまでの政治の主役であった国民国家という概念の終わりの始まりを、そこに見ることができるかもしれない。続きを読む投稿日:2021.05.04
海外での民営化した水道事業の問題はニュースで聞いていたが、再公営化の流れは知らなかった。事業を請け負った水メジャーが酷いことは間違いないが、民営化反対である著者の立場からの一方的な主張が入っているよう…にも見える。
欧州で保守層や新自由主義陣営が掲げる小さな政府と日本の利益誘導型の政権与党の考え方は必ずしも一致しない。放っておいて国内で水道民営化が進んでいくようには思えない。また、保全管理や監査などしっかり規定することで民営化がうまく回るのではないかとも思う。続きを読む投稿日:2023.07.07
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