臨3311に乗れ
城山三郎(著)
/集英社文庫
この作品のレビュー
平均 3.7 (10件のレビュー)
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日本ツーリスト (現・近畿日本ツーリスト) の創業メンバーである馬場勇の伝記を中心とした、当時の社員たちの活躍を描いた小説。城山三郎著、近畿日本ツーリスト刊行と書いてある。
終戦間もないころの話であ…り、旅行業界のベンチャーとして、貸切列車の設定、新たな観光ルート開拓、オンラインシステムの導入など画期的なアイデアを次々と導入していくところには感動を覚える。
その反面、ときには社員を無給で働かせ、社員の妻まで駆り出すそのブラック企業ぶりはハチャメチャだが、役員含め全員がそんな感じなので、綺麗事はともかく時代を変えるのはこういう人たちなのかなとも思う。
それにしても当時の修学旅行の強行軍には驚きで、定期運行の列車に押し込まれ、時にはホームで何時間も乗り継ぎを待ちながらまでして東京から関西に出掛ける、そのバイタリティはどこから来ていたのだろうか。続きを読む投稿日:2018.07.26
近ツリの社史を、前身の日本ツーリスト社長 馬場勇をメインにして描いた、いわゆる経済小説。著者の入念な資料調査と、機微な人間関係のタッチは良かったと思う。ただ個人的には、宮本常一と近ツリの結び付きにつ…いて、もう少し話が聞きたかったところではある。
観光研究の教科書では、往々にして、「マスツーリズム」から「サスティナブル・ツーリズム」へなどと、短絡的な言葉遊びが展開されているが、かかる「マスツーリズム」の内実を細かに描出した本に出会ったことがなかった。本書は、戦後から70年代までの国内における旅行業事情、言い換えれば、当時のマスツーリズムの諸相をまざまざと見せつけてくれる一冊であった。
日本ツーリストは、兎にも角にも、事業拡大の道を歩んでおり、まさに青天井の如く事業所設立に力を入れている。企業理念も、企業戦略も何もない、只々、大量生産・大量消費の方式で、力をつけていった企業としても過言ではないだろう。他方で、このマス的な企業方針に傾倒していったのは、交通公社(JTB)に対するやっかみに依るところが大きかったものと思う。国営企業のJTBは、お上のお陰で潰れることはないし、営業の際に信用を勝ち取れる。また、国鉄との結び付きで、旅行商品を生産しやすかったという環境もある。国営企業であるJTBに打ち克つには、なるたけの馬力で、顧客を獲得せねばならない。「国営企業 vs 私企業」という構図のもとで、(負の遺産ともいえる)マス的な観光形態が形成されたのではないかと感じた。その意味で、JTBの功罪は大きいだろう。また、旅行業界の「ブラック化」が進んだのも、この「官民」の闘争の成れの果てとも言えそうである。まあ、近ツリが、社員の家族を巻き込んでまで事業を遂行していたという話は、ちょっと引いたものである。なお、大量生産・大量消費とは雖も、1970年代頃にはSITの兆しが見えていたようで(p. 207)、近ツリが、コンピュータを導入した管理運営を世界に先駆けて実施しているのは興味深い。
「観光」という言葉の使用が、近畿交通社に端を発している話(p. 127)、渡鹿野の置屋のはしりが、これまた近畿交通社であったという話(p. 120)、馬場が学閥を忌避していたにも拘らず、学生バイトは東大生ばかりを雇っていた話、日本ツーリストが「添乗員」経験を重視していた話など、知らない話が多く出てきた。
それにしても、近ツリのバイブルとなっているこの本を、現代の新入社員が読んだらどんな反応を示すのだろうか。過度な精神主義に傾注し、ブラック・パワハラを黙認・礼賛するようなこの本を読めば、現代人は委縮してしまうのではなかろうか。こんな武勇伝を延々と聞かされて、「お前らは甘えてる、俺の時はもっと大変だった!」などと叫ばれたら、もう一溜りもないし、さっさと辞めたくなるに違いない!続きを読む投稿日:2021.07.17
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