オリンピックと商業主義
小川勝(著)
/集英社新書
作品情報
オリンピックをテレビで観戦していると、他のスポーツイベントとは「風景」が違うことに気づく。それは「会場に広告看板がない」からだ。クーベルタンが理想を掲げて創始した近代オリンピックの「格式」は、そのような形で今も守られている。だが舞台裏では、莫大な放映権料やスポンサー料がIOCの懐を潤し、競技自体にまで影響を及ぼすという実態がある。一方で、その資金のおかげで税金の投入が回避され、途上国の選手が参加できるという現実もある。果たして、オリンピックが「商業主義」を実践するのは是なのか非なのか。本書は、五輪礼賛でも金権批判でもないスタンスで、この問題を深く掘り下げる。【目次】序章 三つのロンドンオリンピック/第一章 「商業主義」の起源と歴史/第二章 「商業主義」の弊害とは何か/第三章 五輪マネーは、どのように分配されるのか/おわりに―オリンピックは誰のためにあるのか
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商品情報
- シリーズ
- オリンピックと商業主義
- 著者
- 小川勝
- ジャンル
- 教養 - ノンフィクション・ドキュメンタリー
- 出版社
- 集英社
- 掲載誌・レーベル
- 集英社新書
- 書籍発売日
- 2012.06.20
- Reader Store発売日
- 2012.12.21
- ファイルサイズ
- 0.4MB
- ページ数
- 224ページ
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この作品のレビュー
平均 3.4 (10件のレビュー)
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変わり目となった84年ロサンゼルスオリンピックに至る道
2020年の東京オリンピックに関して、
どうもきな臭い話ばかりが先行し、
楽しみに思う気持ちが削がれてしまっている。
今年開催のリオも不安定た経済状況を反映して、
なかなか不穏な気配を漂わせている。…
オリンピックとお金の話題は、いったいいつからこんなにも複雑で、
利権まみれのものになってしまったのだろうか。
72年のミュンヘン・オリンピックでエンブレムの商用利用が開始され、
完全民営化された84年のロサンゼルスオリンピックが、
最大のきっかけであったのはよく知られたこと。
アマチュアによる純粋なスポーツの競い合いだった当初から変わり、
オリンピックは完璧に商業主義的なものへと変化してきた。
それを一刀両断に悪だというのではない。
その功罪を問うためにも各大会ごとお金の収支を整理した本書の冷静な記述が役に立つ。
何が変わり目だったのか、国と都市、IOC、企業、選手、国民すべてが複雑に絡み合う。
まずは状況の整理から。続きを読む投稿日:2016.06.01
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オリンピックと「金」の歴史を紐解きながら、「オリンピックにおける商業主義とは何なのか」、「オリンピックは、なぜ商業主義を必要としたのか」、「商業主義による弊害とは、具体的にどういうことなのか」といった…ことを問い直している。
本書では、「オリンピックが商業主義に陥る」とは、オリンピック開催資金として「企業の金」が大きく入り込んだ結果、企業がオリンピックの運営に口を出し始め、オリンピックの価値や質(選手たちが、最高のパフォーマンスを発揮できる環境をつくることなど)が損なわれるという現象だと定義する。一般にオリンピックが商業主義化したのは1984年のロサンゼルス大会だといわれるが、本書では、確かにロサンゼルス大会で「企業の金」が大きく入り込むようになったという意味でオリンピックの「商業化」が進んだことは事実だが、明確な「弊害」はなかったとし、1988年のソウル大会でテレビ中継のために競技時間が変更されたことが「商業主義による弊害」の発端になったとする。そして、現在のオリンピックにおける「商業化の弊害」とは、営利団体ではないはずのIOCが、収入を極大化しようとしているところにあると指摘する。
本書の内容で興味深かったのは、1984年のロサンゼルス大会が空前の黒字になった要因は、徹底した商業化の成果というよりも支出の抑制であったという指摘である。そして、支出を抑制できたポイントとしては、国際競技連盟からの要求に対して一線を引いて屈しなかったことがあったという。一方、モントリオール大会は、当初は質素な大会にすると言っていたのが、当時の市長が自分の任期中に歴史的な建造物を残したいと望んだがために、豪華な施設を濫造し、巨額の赤字を計上することとなったということである。これらのエピソードは、今後のオリンピックをはじめとするメガイベントの開催に当たって大きな教訓となるものだと感じた。
本筋とは離れるが、よく言われるオリンピックの「アマチュアリズム」は、スポーツをジェントルマンの嗜みとみなしていた英国貴族層(草創期のオリンピックの運営に関与)の考えに由来しており、オリンピック草創期には工場労働者等もアマチュアから除外されていたという事実は興味深かった。続きを読む投稿日:2020.05.20
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