楊令伝 五 猩紅の章
北方謙三(著)
/集英社文庫
作品情報
推戴した皇帝が暗殺され、聞煥章の燕国建国の野望は半ばにして潰えた。燕軍は瓦解し、北の戦線は終熄する。梁山泊軍は、楊令の作戦によって河水沿いの地域を一気に制圧した。一方、江南では宋軍による方臘信徒の殺戮が凄惨を極めている。しかし度人の声はなお熄まず、呉用は決死の覚悟で勝利のための秘策を練る。方臘自らが前線に立ち、ついに童貫軍との最後の決戦が始まった。楊令伝、狂瀾の第五巻。
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商品情報
- シリーズ
- 楊令伝
- 著者
- 北方謙三
- 出版社
- 集英社
- 掲載誌・レーベル
- 集英社文庫
- 書籍発売日
- 2011.10.25
- Reader Store発売日
- 2012.11.16
- ファイルサイズ
- 0.5MB
- ページ数
- 400ページ
- シリーズ情報
- 既刊15巻
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この作品のレビュー
平均 4.0 (32件のレビュー)
-
「方臘殿に、お伺いしたい」
燕青は、階を見あげて言った。
「この乱で、血が流れすぎた、とは思われませんか?」
「燕青、叛乱では、血は流れないのか?」
「多すぎたのではないか、と申し上げております」
「…ひとりの血も、百人の血も、同じだ。一万であろうと、百万であろうと、俺の信徒どもは、死ぬほうが幸福だと信じたのだ。大地は血と同時に、信徒の喜悦も吸った」
「わかりません」
「わかる必要はない。俺は叛乱を起こして、面白かった。生きて生きて、生ききった、といま思える。教祖だけやっていては、そんな思いは得られなかったと思う」
「流れた血が多すぎました」
「どれほど多かったのだ。半分だったら、それでよかったのか?」
「いえ」
「血は流れるものだ。生きていれば、血は権力に吸われる。その権力に刃向かって流した血ならば、吸われる血よりましだっただろう、と俺は思う」
「言い訳に聞こえます、方臘殿」
「燕青、言い訳をしているのは、おまえだ。梁山泊は、これから宋と闘うのだろう。その時に流れる血の言い訳を、いまからしているのではないか」
一瞬、そうかもしれないと燕青は思った。志のために流す血、と言える。しかし、方臘は笑い飛ばすだろう。
「流れる血に意味はない。血は、ただ流れるだけだ。それが、連綿と続いた、人の世というものだ」
方臘は再び背を向け、階を上っていった。
方臘対童貫の戦に決着がついた。方臘側の犠牲、70万。ほとんどが信徒で、抵抗もなく死んでいった。燕青は、この小説では珍しく、何度も何度も繰り返し方臘に詰め寄った。ここでの問答は、この巻だけの問題ではなく、所謂「革命」の何たるかを問う永遠のテーマだからだろう。もちろん、ここでは結論は出ない。
この巻で楊令は一挙に「水滸伝」以上の革命拠点を占領してしまう。しかし、それでは終らない。これから、「革命」が始まる。続きを読む投稿日:2011.11.30
童貫対方臘戦、終結。
5巻にして感情持っていかれる、いい戦だった。
方臘の肝が座ったキャラクターが好き。
最後かなり気になる終わり方したな。ぞくぞく。投稿日:2020.12.29
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