【感想】ギリシア人の物語2―民主政の成熟と崩壊―(新潮文庫)

塩野七生 / 新潮文庫
(10件のレビュー)

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    ギリシア人の物語2
    文庫版
    新潮文庫 し 12 47
    民主政の成熟と崩壊
    著:塩野 七生

    第2巻は、ペルシア戦役後のギリシャ世界を描く
    ペリクレスの元、アテネはデロス同盟の盟主として頂点を迎えるが
    その死後、アテネも、スパルタも、何が何でも同盟国を守るという信頼も、
    敗北した兵を許す寛容性も、失っていく。ギリシャ人の教養やゆとりがなくなっていく

    興隆するアテネを支えたのはペリクレス
    ・アテネ市街とピレウス港をつなぐ高速道路
    ・パルテノン神殿の建設
    ・アテネ海軍の創設 

    ペルシャとアテネとの相互不可侵条約 カリアスの平和

    外憂がなくなったギリシャ世界は、アテネとスパルタの2大勢力に
     陸軍 スパルタ ペロポネソス同盟 ペロポネソス半島の防衛
     海軍 アテネ デロス同盟 エーゲ海世界の防衛と経済的発展

    アテネの植民都市の拡大 南イタリア、黒海へ

    同盟の盟主、アテネとスパルタ同士は、直接対決をさけていても、
    傘下の都市国家がトラブルを盟主へ持ち込む
    ⇒誰もが、現実を見ているのではない ほとんどの人は、見たいと思う現実しか見ていない
    ⇒アテネ・スパルタ間で、ペロポネソス戦役が勃発、いずれも戦闘には消極的、終焉まで27年かかる
     アテネは基地設置欲はあっても領土拡大欲はない
     スパルタも、一国平和主義であり、領土拡大欲はもっていない
    ⇒バランス感覚をもつ、ペリクレスと、カルタゴ王アルキダモスがとも不拡大を志向

    ペリクレス後、アテネの衰退がはじまる

    レスポス島の反乱⇒デロス同盟の盟主としてアテネ海軍が出兵、同盟国、プラタイヤを見殺しへ
     アテネは、同盟関係の他の都市国家を助けるとはかぎらない という印象を同盟国に与えてしまった

    ニキアスの平和 アテネとスパルタとの休戦条約

    マンティネアの会戦
     アルゴスからの支援要請で、アテネ・スパルタが会戦、アテネが大敗を喫してしまう

    メロスの攻略
     アテネは、降伏した男をその場で殺害、女子供を奴隷に
     ⇒覇権国にあるまじき行為、以後、エーゲ海では、このスタイルが踏襲されるようになる

    シチリア遠征 シラクサ攻防戦でのアテネ海軍が壊滅

    アイゴスポタモイの海戦 アテネ海軍の消滅
    スパルタ王の武士の情けで、アテネは救われた
    ペロポネソス戦争は、スパルタの勝利で終わる

    目次
    第1部 ペリクレス時代
    前期(紀元前四六一年から四五一年までの十一年間)
    後期(紀元前四五〇年から四二九年までの二十二年間)
    第2部 ペリクレス以後
    前期(紀元前四二九年から四一三年までの十七年間)
    後期(紀元前四一二年から四〇四年までの九年間)
    年表
    図版出典一覧

    ISBN:9784101181134
    出版社:新潮社
    判型:文庫
    ページ数:678ページ
    定価:1200円(本体)
    発売日:2023年09月01日

    全体の構成

    1巻
    第1章 ギリシア人て、誰?
    第2章 それぞれの国づくり
    第3章 侵略者ペルシアに抗して
    第4章 ペルシア戦役以降

    2巻
    第1部 ペリクレス時代
    前期(紀元前四六一年から四五一年までの十一年間)
    後期(紀元前四五〇年から四二九年までの二十二年間)
    第2部 ペリクレス以後
    前期(紀元前四二九年から四一三年までの十七年間)
    後期(紀元前四一二年から四〇四年までの九年間)

    3巻
    第1章 アテネの凋落
    第2章 脱皮できないスパルタ
    第3章 テーベの限界
    第4章 マケドニアの台頭

    4巻
    第1章 息子・アレクサンドロス
    第2章 ヘレニズム世界
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    投稿日:2024.04.20

  • めるこみ

    めるこみ

    ペリクレスすごい。
    この人も英雄だと思います。
    その後のアテネとても残念。
    転がり落ちる速さがひどい。
    ローマはすごかったんだなぁ。

    投稿日:2024.02.10

  • あらたく

    あらたく

    どこのポリスも繁栄と衰退を繰り返す戦争は一時的な手段に過ぎず結果的には負の概念しか生み出さない。 
    国家を築き上げるため民衆を生かすため戦争は避けては通れない事態背景がある事もあり人間の愚かさもあり、それを繰り返さないためには自分達がそこから学ぶしかないんだと思った。
    その代表的な偉人として大哲人であるソクラテスが度々、登場するが精神や知的に豊かで優れても
    先導する者がいなければ成り立たないのも国家だと感じた。
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    投稿日:2023.12.23

  • 1397195番目の読書家

    1397195番目の読書家

    塩野七生のすごいところは、要約能力の高さと文章のライトさだと思っています。
    つまり、600ページ以上あるこの2巻を読んで、長いとは感じないんです。

    古代ギリシアについては、歴史、哲学、文学、芸術などでたくさんの本が書かれてきているので、ネタには事欠かないはずです。
    そんな中で寄り道したのは、プラトン『饗宴』を通じてアルキビアデスに触れたり、悲劇や喜劇を若干取り上げた程度で、あとは戦争と政治の話ばかりです。
    その上、登場人物がかなり少ない。歴史ものは群像劇になりがちなのですが、極力一本道で語っていきます。

    そんなふうに強力に要約されている反面、600ページもかけているので、ギリシア史について詳しくなった気になれます。
    この長さは、結構大事です。
    ペロポネソス戦争でアテネが凋落していくこと自体は読む前から知っていましたが、読書前は腑に落ちないところがありました。
    しかし、本書はシラクサ攻防戦やエーゲ海の東における戦いについて、順を追って語っていくので、分かった気にならずにいられない。

    ただ、普通長い文章を読むのは苦痛なんですが、要約とライトさで読ませてくる。
    文体は、時々変な執着(作者がスパルタのエフォロスを嫌いすぎなことなど)があったり、違和感のある日本語になっているところはあるのですが、全体的にはスラスラ流れていくので不思議です。

    作者はローマの衰退に文庫にして43巻をかけたわけですが、ギリシアについては4巻ということで、スピード感も高まっているかもしれません。

    ところで、スパルタにおけるエフォロスと王による政体は長続きしているし、個人的にはアテネのデマゴーグも同じくらい有害だと思います。
    アテネが凋落していく過程で使われるようになった、ストラテゴスに対する弾劾裁判は死刑直行も多いからアルキビアデスのように逃げるしかないし、議論をふっかけるだけのデマゴーグに有利すぎるといいますか。
    とはいえこの問題は、程度の差こそあれ、現代でも解決できていないことでもあります。
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    投稿日:2023.12.17

  • こうき

    こうき

    塩野先生は「『民主政』も『衆愚政』も、銀で鋳造されているということなら同じの、銀貨の裏表でしかない」と書いておられるが、それにしてもと思う。
    都市国家アテネの凋落ぶりは痛々しいほどで、バブル崩壊後に衰退の一途を辿っている日本の現状と重なる。ギリシア人(日本人)が突然バカになるということはありえないのだから、事実上、国の盛衰はリーダーの資質によって決まるのだ。
    本書におけるリーダーの定義を書き留めておく。
    民主政のリーダー/民衆に自信を持たせることができる人
    衆愚政のリーダー/民衆が心の奥底に持っている漠とした将来の不安を、煽るのが実に巧みな人
    続きを読む

    投稿日:2023.11.25

  • 鴨田

    鴨田

    ペルシア戦役からペロポネソス戦役まで、アテネがエーゲ海に覇権を築いてから失うまで、その間75年。前にも書いたが、明治維新から敗戦まで、ロシア革命からソ連解体まで、も、同じく70数年。爺さんが孫に言って聞かせる形での生き証人を失う年数が経てば人間は同じことを繰り返す。(そう考えると徳川家康はやっぱりすごい人なんだろう。)

    この巻の英雄は、アルキビアデス。あのペリクレスが育ての親。市民から大人気なのだが、状況が悪くなると怨嗟と攻撃の対象となる、ポピュリスト政治家。事情によりスパルタについたり、ペルシアについたり、と忙しい。最後はアテネに返り咲くのだが、また民衆に裏切られる。政治家というのは大変な仕事なのだなあ、とつくづく思う。

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    投稿日:2023.10.28

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