【感想】水を縫う

寺地はるな / 集英社文庫
(147件のレビュー)

総合評価:

平均 4.2
53
65
21
0
0

ブクログレビュー

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  • りゅうしゅう

    りゅうしゅう

    スゴい。今この小説を読めたことに、とても幸福を感じている。

    最初まとまっていなかったものが、まさに水が収まる所に流れ着くような幸福感。

    想うほどうまくいかない家族それぞれの考えに寄り添いながら、あたたかな筆致がそれを包み込む。
     
    話が進むごとに少しずつ自分の中に溜まっていたものが、5章の運動会辺りのクダリで崩壊してしまい(自分の子どもともリンクして)、その先ずっと文字が滲んで涙を我慢しながら読むのに大変だった。

    自分がこの年でこの作品に出会えたことに、運命的なものを感じてしまう程、ほんとに素晴らしい作品だった。
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    投稿日:2024.05.06

  • shi- ◡̈

    shi- ◡̈

    このレビューはネタバレを含みます

    男なのに、裁縫が好き。
    女なのに、可愛いものが嫌い。
    母親なのに、子どもに巾着の一つも作らない。
    いい歳なのに、水着を着てプールに入るなんて。
    そんな"なのに"が人を苦しめる。
    そんな"なのに"から少しずつ解放されていく家族の物語。

    「巾着袋を作ってくれないお母さんは僕のこと愛してないとか、
    そんなこと思ったこともなかったで」
    「でも74歳で始めたら、80歳の時は水泳歴6年になるやん。
    何もせんかったらゼロのままやけど」

    主人公の物事の見方がとても良くて、
    同時に私自身も無意識に"なのに"という見方をしていたことを顧みる(猛省)

    タイトルの意味がわかった瞬間、思わずため息がこぼれた。

    失敗する権利。時に汚れながら、清らかに進む。
    好きなものを好きでいること。
    人それぞれ自由であること。
    自分と違う生き方をする人を否定しないこと。

    どんな人をも掬い上げてくれる優しさが
    たくさん詰まっている一冊でした。

    "普通"に縛られずに生きていたい。
    何を好きで何が苦手か、それは人それぞれの"自由"。

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    投稿日:2024.05.01

  • バムケロ

    バムケロ

    ブグログのフォロワーさんの
    感想を読んだことがきっかけで
    初めて寺地はるなさんの本を読んだ♪
    表紙の青色と水を縫うの題名も良き♪

    昨年からずーーーっと仕事に追われている感じが続いていて、本の活字がなかなか頭に入らなかった(T ^ T) 

    でも休みの日にテレビも音楽も消して
    やっとやっと本を開いた

    最初は 
    読みにくいかな?誰のこと?
    戸惑いながら読んでいくうちに引き込まれて
    1時間ちょいで読了

    一人ひとりの目線で物語が進んでいく

    離婚した父親に
    ウェディングドレスの製作を頼みに行き、
    あらゆる生地を纏わせて出来上がっていく場面と
    名前の由来が語られる場面は、
    何度も読み返したがとても良い、好きな場面♪( ´▽`)

    「普通」って何だろう?  

    「ジェンダー規範」
    「無意識の偏見:アンコンシャスバイアス」
    に捉われている日常、この社会に気づきをくれる作品だと感じた

    優しくてまた読み返したくなる

    次も寺地はるなさんの本を探して読んでみようかな


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    投稿日:2024.04.30

  • E

    E

    寺地はるなさんの本は、『雨夜の星たち』に続いて2冊目です。

    あらすじを見て、「いじめ関連の描写があったら嫌だな」と思っていたのですが、いじめに触れるシーン(「いじめられたらどうすんの」というようなセリフ)はあるものの、実際にいじめ描写があるわけではなく、ほっとしました。

    主体に「ジェンダー」「家族」「役割」などを据えつつも、ストーリーはなめらか~に、ゆ~っくりと進んでいくので、昨今の小説にありがちな「重苦しくてしんどくなる展開」「めまぐるしい心理描写」のようなものはなく(とはいえ、人によってはしんどい描写はあるかも?)、個人的にはテーマの割に意外と読みやすいと感じました。

    まだ二作品しか読んでいないのですが、著者は人の「言語化できないしんどさ」を的確に描写される作家さんだなと思っています。

    連作短編の形をとり、頻繁に話者が変わるため、最初は混乱しますが(私はそれが苦手で短篇は敬遠しがち)、登場人物が少ないお話なので、慣れれば大丈夫でした。

    登場人物それぞれが置かれた立場で悩んでいるお話で、時代背景や生育環境、触れ合った人物などに影響されて、最初は単純だったモヤモヤが次第に複雑になっていくのだろうな、と考えさせられました。
    そして、この作品では、ふとしたきっかけでそのモヤモヤがほどけていく様が、朝日が昇るように自然に描かれています。

    このお話では触れられていませんが、母・さつ子の立場からすれば女性で料理が苦手なことも、まあまあの生きづらさにつながることですよね……。
    女性の愛=手間と愛嬌、と捉えられている風潮は、現代にも色濃く残っていると感じます。

    得意なことを、得意な人がすればいい。
    そんな考えの浸透する社会になったらいいなと改めて思いました。
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    投稿日:2024.04.29

  • koujisan941

    koujisan941

    終始温かい話。

    姉の結婚式のドレスを発端として、各章でそれぞれが周囲の固定観念から脱却していく。
    その中でも清澄の成長は目を見張るものがある。

    理解すること、受け入れることの大切がよくわかる話ではないでしょうか。
    自分にとっての善は他人にとっても善とは限らない、そう思うようにしようとなる一冊でした。

    「川のほとりに立つ者は」を先に読んで、正直あまりはまらなかったので、今回もどうかなと思った読んでしまいましたが、とても素敵な話でした。
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    投稿日:2024.04.21

  • aaayaaa

    aaayaaa

    失敗する権利はあるってなんて素敵な言葉だろう。
    もちろん、手放しにして失敗させるんじゃなく、失敗したとて寄り添いながら、本人も失敗も責めずに成長に結びつけていけるような優しさがおばあちゃんから滲み出ていて、すっごく温かい気持ちになったし、自分もこうでありたいと思った。

    後悔させたくないのはどの親も一緒だけど、自分の“普通“に当てはめちゃいけない。価値観が違う相手を否定しない。いろいろと考えさせられる一冊でした。
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    投稿日:2024.04.18

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