【感想】その名を暴け―#MeTooに火をつけたジャーナリストたちの闘い―(新潮文庫)

ジョディ・カンター, ミーガン・トゥーイー, 古屋美登里 / 新潮文庫
(17件のレビュー)

総合評価:

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ブクログレビュー

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  • sasha89

    sasha89

    日本語訳のタイトルは原書の『SHE SEDI』の方がしっくり
    すると思うのよ。

    大学在学中に設立した映画プロダクション「ミラマックス」の
    成功で、アメリカ・ハリウッドのみならず、世界の映画界で
    押しも押されぬ大プロデューサーとなったハーヴェイ・ワイン
    スタイン。

    彼が手掛けた映画は日本でも多く公開されているので、劇場や
    テレビ放映で目にした人も多い思う。

    そんな大プロデューサーには公にされたら困るいくつもの
    秘密があった。

    自社の女性従業員や役を欲しがっている若い女優たち複数名に
    大しての、性的暴行や性的虐待だ。

    何十年にも渡って続けられたワインスタインの蛮行は、ある日、
    「ニューヨーク・タイムズ」のオンライン版に告発が掲載され
    たことで大反響を呼ぶ。

    本書は、一連のワイスタイン事件を追い、関係者に取材し、掲載
    にまで漕ぎつけたふたりの女性記者を中心に、調査報道の醍醐味を
    感じさてくれる。

    アメリカだろうか日本だろうが、性被害に遭った人が声を上げる
    には高いハードルがある。ましてや相手が富と名声を手にしていれ
    ば猶更だ。

    ワインスタインは事が表沙汰にならぬよう、「映画界で仕事を得られ
    ようにしてやる」と相手を脅し、多額の示談金を支払い、秘密保持
    契約書にサインさせる。

    ふたりの女性記者は公で発言することを躊躇う被害者たちに根気よく
    連絡を取り、証拠を積み重ね、遂にはワインスタイン周辺の関係者
    からの証拠や証言さえも得て、告発に踏み切る。

    取材の過程、ワインスタイン側との駆け引きはまるで極上の
    ミステリーを読んでいるようで、ドキドキワクワクさせられる。

    「ニューヨークタイムズ」の告発が契機となり、性被害に遭いながら
    も声を上げることを躊躇っていた女性たちが、「私もそうだった」
    と声を上げ始め、以降の「#MeToo」に発展していく。

    アメリカの悪口ばかり言っている私だが、アメリカの報道は心底
    凄いと思う。権力を持つ者にさえ、容赦しない告発をするのだから。

    翻って我が日本。時の権力者に近いゴロツキ記者の起こした性加害
    事件を国ぐるみで闇に葬ろうとしたのだからなぁ。アメリカの
    ジャーナリズムの足元にも及びませんわ。

    某タレント事務所の性加害問題だって、30年以上前に告発があった
    時に、後追いしたのは少数の週刊誌と今は亡き月刊誌だったもの。
    今回だって、事の発端はBBCからだったしな。

    ハーヴェイ・ワインスタイン、ニューヨークとロサンゼルスで起訴
    され、禁固39年の刑を受け、現在服役中である。また、被害を受けた
    女性たちには合計で20億円以上の賠償金が支払われる予定だ。

    「ニューヨークタイムズ」の告発記事は、調査報道の部門で
    ピュリッツァー賞を受賞している。

    残念ながら、私は映画された作品を見逃してしまった。
    続きを読む

    投稿日:2023.11.13

  • さぬ

    さぬ

    ハリウッドと政治を絡めて、抑圧についてかかれている。
    文章より映画の方からが、ビジュアルもありわかりやすい。

    投稿日:2023.09.09

  • yumo

    yumo

    映画“SHE SAID”の原作本が文庫化。
    男性中心主義の弊害、報道における信憑性を担保する事や被害者が声をあげることの難しさ、ジャーナリズムとは。
    色々と考えさせられることの多い一冊だった。

    投稿日:2023.06.01

  • ハゐド

    ハゐド

    ハリウッドの有名プロデューサーであるワインスタインが、女優やスタッフに対して数々のセクハラ行為を行っていた。ニューヨーク・タイムズの記者たちがそれを告発する記事を発表するまでの経緯が語られるノンフィクション小説。強大な権力に怯みながら声を上げるべきか悩む女性たち。ワインスタインが雇った一流弁護士からの妨害に対して誠実に着実に前進を続けるジャーナリスト。まるでハリウッドの映画のようで一気に読み通した。

    作品として面白いのは加害者側との丁々発止のやり取りなのだが、私が一番印象的だったのは終章の「集まり」。様々な出自や立場の女性たちが某所に集まり、声を上げたことでどうなったのか、自分たちはいまどう考えているのかを語り合う。個別に被害を受けた被害者たちがお互いを知り、構造的な欠陥を客観的に見通すことができ、連帯することで強くなれる様子が感じられた。

    社会は今でも女性に対して差別的であるようにも思えるし、「#MeToo」運動などもあって徐々に変わって来たようにも思える。私自身は「下駄を履かせてもらっていた」男性の一人だが、過ちに気付いたときには素直にそれを認めて、反省して謝り、残りの人生では少しでも良い未来が訪れるように出来ることをやっていきたいと思う。巻末の「謝辞」で、主人公の一人であるミーガン記者が書いた言葉:

    ❝わたしたちの娘たち、そしてみなさんのお嬢さんたちへ。
    あなたがたが職場やそのほかの場で、必ずや敬意を払われますように。❞
    (p.594)
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    投稿日:2023.04.05

  • 赤木かん子【公式】

    赤木かん子【公式】

    LGBTQ+の本棚から
    第265回 その名を暴け #MeTooに火をつけたジャーナリストたちの闘い

    【映画評】「SHE SAID/シー・セッド その名を暴け」…ハリウッドの大物による性的暴行を暴いた連帯
    読売新聞オンライン 2023/01/20 11:00
    https://www.yomiuri.co.jp/culture/cinema/20230119-OYT1T50187/


    2023年04月10日
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    投稿日:2023.03.26

  • シキモリ

    シキモリ

    同名映画の原作本。映画では描き切れなかったであろう取材の経緯や事件の詳細を知りたくなり、帰り掛けに購入。登場人物が多く、時系列が時折前後するので少々分かり難い部分もあったが、映画を観ていたおかげで十分理解出来た。逆に、映画を観ていなければ読み進めるのに苦戦しただろう。映画では描かれなかった取材記事が掲載された後の世論の動きやMeToo運動の発展を知れたのが良かった。オンレコに同意した女性二人の勇気に只々頭が下がるばかり。しっかりした意味を持つ原題に対し、この邦題はピントを外しているような気がしてならない。続きを読む

    投稿日:2023.01.23

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