【感想】女性差別はどう作られてきたか

中村敏子 / 集英社新書
(12件のレビュー)

総合評価:

平均 4.1
2
6
1
0
0

ブクログレビュー

"powered by"

  • つー

    つー

    近年女性の社会進出が進み、会社に行けば、当たり前だが多くの女性が働いている。結婚して子供が産まれても、産休明けにはまた以前と同じように職場復帰し働ける制度も機会も充実してきた。国による法整備も行われ、役員数を一定以上、女性にする動きも出てきている。会社は頻繁に女性の管理職登用に躍起になっており、後何年後かには沢山の女性管理職が生まれているはずだ。
    一方で、本書の入りに記載される様に、受験で一方的に女性の点数を下げて、男性を優先的に合格させようとする不祥事があったり、世界経済フォーラムの発表するジェンダー・ギャップ指数では先進国G7の中では最低、全体146ヶ国中でも125位と低迷する。特に政治への女性進出を表す「政治」の指標では世界最低クラスの138位と、恐ろしく低い。別の調査では、女性管理職が30%を超える企業は全体の10%そこそこで、働く人数は凡そ男女同数でも、実際に能力とは関係ない、昇進の壁の様なものがあるとしか思えない。これでは国も躍起になって法整備を進める理由もよく分かる。
    本書はそうした現代日本で問題となっている女性への差別的な扱い、現状が過去の人類の歴史の中でもどういった経緯で発生してきたかを紐解く内容である。まずは西洋社会における、アリストテレスの論に始まり、自由平等の社会が確立し始める産業革命前後の法学者や社会学者の言葉を集めて推測していく。更にはそれらが日本の旧来の社会に与えた影響、そして西洋とは異なる形で成立していく日本独自の考え方などを多くの学者の考え方などから紐解いていこうとする。個人的には江戸時代の儒教の影響が強かったと考えていたが、それを否定した上で別の要因に迫っていく。
    女性社会進出の現状改善に向けては、まずその成り立ちや原因を探るところから始めなければならない。全く場違いな改革や施策では本質的な問題を取り除く事は無理だろう。政治家だけでなく、企業経営者、管理職、そして昭和の親父達にも読ませたい一冊である。
    続きを読む

    投稿日:2023.11.12

  • ゆうり。

    ゆうり。

    日本の女性差別は西洋から、西洋の女性差別は聖書から。元凶はアダムとイヴの話で、宗教的な考えを配慮しないで言えば、たかが神話のせいで世の半数の人間が苦しい思いをしてきたと思うと少し悔しい気持ちだった。規模が壮大すぎるけど。
    確かに日本は奈良時代は女性天皇もたくさんいたし、江戸時代もあまり性別というのを意識している感じはしない。その頃の考えのまま時代が流れていたらどうなっていたんだろうとは思う。
    続きを読む

    投稿日:2023.08.15

  • yuki4

    yuki4

    フェミニズムの本は面白い。
    若桑みどりの『戦争とジェンダー』を
    ワクワクしながら一気に読み終えて
    これは名著だなと確信していたが
    本書も学者然とした冷静な語り口が
    印象的だ。理路整然、クール。
    若桑は感情の高まりを隠さなかった。
    対照的で面白い。

    P162
    社会的秩序は男性によって作られているので
    女性たちがそれに反して自分の考えに
    従って行動すると、それは
    無秩序とみなされてしまう。
    しかしそれは女性にとっての秩序なのだ。
    (ペイトマン)

    P165
    「貞操」とは、女子を拘束するための
    男性の希望であり、
    「男子による女子征服の象徴」である。
    (山川菊栄)

    P165
    「女らしさ」という言葉で
    女性の行動を縛ろうとする議論に対して、
    重要なのは「人間らしさ」であると反論
    (与謝野晶子)
    続きを読む

    投稿日:2023.08.02

  • 国立女性教育会館 女性教育情報センター

    国立女性教育会館 女性教育情報センター

    国立女性教育会館 女性教育情報センターOPACへ→https://winet2.nwec.go.jp/bunken/opac_link/bibid/BB11483358

    投稿日:2022.12.27

  • ばきちゃん

    ばきちゃん

    女性差別の原点。アダムとイヴまで遡る。西洋ではやはりキリスト教が根源のようだ。そして我が日本では、民法が作られた明治時代以降。その前はもっと自由だったような。。。いつからこうなったんや!!

    投稿日:2022.10.06

  • nagaking

    nagaking

    実におもしろい!
    帯に小島慶子氏の推薦文が書かれていたので、嫌な予感がよぎったが(笑)、いわゆるフェミニズム本ではなく、丹念に政治思想史を読み解き、西洋と日本でどのように家父長制が浸透していったかを説明した本である。

    著者は、キャロル・ペイトマン(恥ずかしながら本書で初めて知った)の思想をベースに、トマス・ホッブズや福沢諭吉の思想を紹介しながら、西洋と日本の、国家と社会の変遷を説明していく。著書「リヴァイアサン」や「万人の万人に対する闘争」という言葉で知られるホッブズが、17世紀に既に、神の存在を根拠とせず、男女が平等な社会構想を描いていたのには驚いた。対して、学校で「自由主義の父」として教えられるジョン・ロックは、女性の人権を全く考慮していなかったという事実には憤慨。また福沢諭吉は、西洋で学んだ自由主義思想に傾倒して自由や平等を説いたと解釈されがちだが、その社会構想は幼い頃から学んでいた儒学の枠組みにもとづいており、男女の身体的差異をポジティブに評価し、また社会的弱者についても考察の対象としたとのこと。私は諭吉先生の創った学校を出ておきながら、その思想をまったく知らず尊敬もしていなかったことを恥じた(笑)。

    まとめると、西洋の家父長制はキリスト教をベースにしており、男女は一体であると考えられたため、財産権や肉体の所有権は、一体である二人を代表する男性のものとされたのに対して、日本に家父長制が成立するのは明治以降であり、男女が異なる職分を担う協業体制である「家」に、国家による上からの家父長制の押し付けが徐々に浸透していった。それゆえ日本では、西洋に比べて主婦の地位が高く(財産を管理する職分を担う)、それゆえに家父長制構造を打ち壊していく動機づけが強まらなかったことが、ジェンダーギャップ指数121位の現状につながっていると考えられる。

    しかし、性別分業が事実上不可能になっている現代において、社会構造としての「家父長制」を打ち破ることは急務であり、やるべきこと(クオータ制の導入、男女賃金格差の是正など)は明確なのに、明治期以降に成立したに過ぎない「伝統」に固執し腰を上げようとしない政府に苛立ちを感じる。
    続きを読む

    投稿日:2022.01.30

Loading...

クーポンコード登録

登録

Reader Storeをご利用のお客様へ

ご利用ありがとうございます!

エラー(エラーコード: )

本棚に以下の作品が追加されました

追加された作品は本棚から読むことが出来ます

本棚を開くには、画面右上にある「本棚」ボタンをクリック

スマートフォンの場合

パソコンの場合

このレビューを不適切なレビューとして報告します。よろしいですか?

ご協力ありがとうございました
参考にさせていただきます。

レビューを削除してもよろしいですか?
削除すると元に戻すことはできません。