【感想】誰よりもつよく抱きしめて

新堂冬樹 / 光文社文庫
(20件のレビュー)

総合評価:

平均 3.9
8
4
7
0
1

ブクログレビュー

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  • iadutika

    iadutika

    このレビューはネタバレを含みます

    誰よりもつよく抱きしめて

    著者:新堂冬樹
    発行:2008年10月20日
    光文社文庫
    初出:「女性自身」2004年11月30日・12月7月合併号~2005年6月21日号
    単行本:2005年9月(光文社)

    なんともひどい小説だった。ここ1年で読んだなかで、雛倉さりえ「アイリス」と並ぶ駄作。種類の違う駄作。雛倉さりえは若い女性作家だが、完全な勘違い作家で、自分を一人前の文学者だと思い込んで意味不明の文章を弄して自己陶酔しているのに対し、この新堂冬樹は50代後半のオッサンで、自らを小説家とはあまり思っていないのかもしれない。最後に、安っぽいストーリー展開でオチを付けるためだけに、文学の形を借りて3分の2以上を退屈に、稚拙な常套的表現で紙面を潰していく。恋愛エンターテイメント小説という分野らしいが、主人公の心の揺れなど、微塵も感じさせられない表現で、どうしてそうなっていくのか読んでいてわけが分からない。まあ、視聴率取りもたいして期待しないまま作られた2時間もののスペシャルドラマ程度なら、この手のストーリー展開もありかな、という感じ。

    例えば、冒頭はこう。

    結婚生活八年目を迎える仲睦まじい夫婦が、昼メロの放映回数ほどのセックスしかしていないというのは異常なことだろうか?

    昼メロの放映回数って、なんだ?どういう数字の比喩なんだ?昼メロって、月-金で週5回放送されるが、週に5回セックスしているという意味?あるいは、13週放送として、×5回で、合計65回という意味?年に65回セックスするという意味?
    まるで比喩になっていない。
    そして、これ以降を読むとすぐ分かるが、この夫婦は全然仲睦まじくないのである。

    主人公は33歳の水島月菜、父親が経営していた児童専門書を半ば強制的に継がされて経営する。場所は渋谷。店はいつも閑散として、赤字が多い。学生時代からの非常に親しい早智子という友人がいる。

    同じぐらいの年齢の水島良城は児童小説の作家で、2人は8年前に結婚した。良城は子供をつくり、3人の小説を書くことが夢だったが、自分の精子に元気がないとわかり、そのショックで精神を病んで、不潔潔癖症と不完全潔癖症になった。そのため、この7年、2人はセックスレスだった。しかし、良城は毎晩、食事を作って彼女を待っている、そんな仲は保っていた。

    なお、良城の母親が上京して泊まっていくシーンがあるが、母親は孫の期待をしているらしく、ちっとも生まないのは月菜のせいだと思い込んでおり、仕事もいいが子供が優先というようなことをいう、典型的なありふれた展開ネタも盛り込まれている。あんたの息子に原因があるのに、私のせいかよ、というストレス。

    (以下、個人的メモ。ネタ割れ、もろ。読まないで)

    彼女の書店「夢の扉」に、(年齢は後で分かるが)28歳の男性客。彼が携帯を忘れていく。追い掛けたが見当たらない。すると、その携帯に電話がかかってきた。この小説が書かれた時代なら、出てあげて、忘れ物を預かっているから本人に知らせてあげて、ということを相手に伝えるのが普通だ。出ると、相手は若い女性。声を出すのをためらっていると相手が一方的に話し始めた。どうやら、つきあっている2人の別れ話。声を出しそびれて、聞いてしまう。どうやら男性が本当はゲイであることを彼女にカミングアウトしたようで、彼女もそれならと別れを納得した、そんな内容だった。

    28歳の榎克麻が携帯をとりにきたが、お礼に酒をおごりますという。となりのビルの地下にあるバーで働いていた。その日は休みで、客として行って1杯だけおごらせてくれという。彼女が結婚していることも知っている。彼はそこで自分がゲイであることを説明。しかし、予定外に長く飲んでしまった。以降、2人は恋愛関係になっていくが、なぜゲイの男性が彼女と恋愛関係になるのか、その説明はまったくないまま最後まで進んでいく。彼女は結局、良城からの提案で離婚することにし、克麻の誘いにのって一緒にパリで暮らすことに決めた。

    実は、良城と同じ医師にカウンセリングを受けている患者に若い女性、村山千春というのがいて、彼女と良城が親しくしているのを見て激しく嫉妬したのも原因だった。

    一方、親友の木内早智子は、克麻がゲイだとは知らず、2人をけしかける。もう亭主なんかと別れちゃいな、みたいにも。そんな迷惑な女が親友というのもおかしな話。実に不自然だし、登場人物を、人の心を描き結ぶ存在としてではなく、単なるストーリー展開の道具としてしか使っていないのが、小説になってない、安っぽいスペシャルドラマの筋書きにしか過ぎない点でもある。

    パリへ発つ日の前、克麻はあの日と同じ携帯電話を月菜に渡す。これを同じように忘れて帰る、あした迎えに来るから、本当にパリに行っても構わないなら来てくれ、やっぱりだめだというファイナルアンサーならこの携帯を返してくれ、という。結果は、携帯を返した。

    パリに行かなかったが、しかし、良城とは離婚した。実家に帰り、別の仕事を1年で覚え、出張で東京に来る。なお、書店は売り飛ばしていた。
    すると、書店は、そのままの店名で残っていた。買ったのは、良城だった。帰ってくれると信じていた、という具合に、2人は元サヤに。

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    投稿日:2024.02.22

  • 1031nk

    1031nk

    読みにくいなぁ。って想いつつ読み進めた。
    でもきっとこういう問題は世の中に溢れるほどあると思う。

    克麻側の背景や思いがもっと分かればいいのに。これじゃあ、謎のお助けキャラみたいな感じが否めない。

    投稿日:2022.11.01

  • キョウヘイ

    キョウヘイ

    面白くない。ゲイの若者のかませ犬感ハンパないし、グズグズした夫の態度もイラつく。セックスしてみませんか、ってシーンで白けたけどなんとか最後まで読んでやっぱりつまんなかった。

    投稿日:2017.06.29

  • 林檎飴甘

    林檎飴甘

    ちょっとイラッとさせられるけれど、切なくて哀しい恋愛物語。
    愛する人が自分のために苦しんでいる。
    それがわかっているのに離れられない。傍にいてほしいと願ってしまう。
    愛する人を自分が傷つけているんじゃないかと怖れている。
    それでも、どんなに辛くても傍にいたいと思ってしまう。
    良城と月菜の間には、誰にも理解してもらえない絆と溝が横たわっている。
    絆を断ち切る覚悟も、溝を埋める勇気もないままに時間だけが過ぎていく。
    克麻の「この人だったらもしかしたら…」という月菜への強い想い。
    不安定な月菜の心は克麻の存在によって大きく揺れ動き、そのことでまた月菜自身が傷ついていく。
    良城への苛立ち、千春と良城への不信感、支えてくれる何かを求めて目の前にあったものにすがりついてしまう月菜。
    最後の決断を月菜に委ねた克麻は本当に優しくて強くて、カッコいい人だった。
    千春が大嫌いだ。
    良城を自分だけが理解しているという傲慢さ。
    平然と月菜の留守宅へとあがり込んでいる無神経さ。
    良城の気持ちを勝手に憶測し月菜を批難する残酷さ。
    何様なんだと…お前は良城の何なのだと。
    恋心がつい心ない行動を取らせたという人がいるかもしれない。
    けれど、そういう素地があったからこんなにひどいことが出来たのだと思う。
    やっぱり、千春が大嫌いだ。
    長い時間を経て再びめぐり会った月菜と良城。
    きっと以前とは違った形での幸せが待っていると信じている。
    続きを読む

    投稿日:2017.03.01

  • さな

    さな

    感動して物凄く泣いた記憶があります。そりゃないよーってところもあるけど全体的には綺麗なお話です。設定からして泣かせにきてるよね。読み終わったらタイトルだけでもうおおんってなります。
    ぐちゃぐちゃに泣きながら知り合いに薦めたら、「新堂冬樹が書いてる感動ものなんて信用できない」とばっさり切られて悲しかったです。これ書いておきながら真っ黒なのも書ける新堂冬樹は怖い…。続きを読む

    投稿日:2014.08.20

  • chiachiine

    chiachiine

    もう泣き所が多くて多くて・・・
    月ちゃんとよしくんは、本当に愛し合ってたんだなあって、
    二人とも辛かったんだろうなあって思って、
    もうレビュー書きながら泣きそうねんけど・゜・(ノД`)・゜・
    置かれとる状況は月ちゃんたちと全然違うけど、
    なんか自分に置き換えてしまって、そしたらもう切なくって・゜・(ノД`)・゜・
    月ちゃんどんだけかわいいがん!ってなって・゜・(ノД`)・゜・
    今までで一番泣いた小説やったかもしれんw

    あ、あと、地味に月ちゃんの故郷が金沢やったのが嬉しかったw
    続きを読む

    投稿日:2013.10.31

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