【感想】三河吉田藩・お国入り道中記(インターナショナル新書)

久住祐一郎 / 集英社インターナショナル
(7件のレビュー)

総合評価:

平均 3.8
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ブクログレビュー

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  • ko2ba

    ko2ba

    幕末の三河吉田藩(今の豊橋付近)の次期藩主が初めてお国入り(第1回目の参勤交代)する際の記録を紐解くことにより,参勤交代の実態をわかりやすく追っていく.
    実は全6章のうちの第5章のみが本来の道中記で,それ以外の章は準備段階と後日談からなるのだが,当時の小藩の
    実情がうまく描かれていて,非常に面白かった.
    実は,心に残ったのは「時習館」である.
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    投稿日:2023.08.31

  • かおるひめ

    かおるひめ

    若殿のお国入りの大名行列。
    その取りまとめ役の残した記録を中心に、その実態を詳細に
    解き明かし、分かり易く紹介。実情はとにかく大変至極!
    大嶋家略系図 松平伊豆守家略系図
    第一章 若殿と左源太
    第二章 参勤交代アレンジメント
    第三章 “サンキュー”におまかせ
    第四章 必読!参勤交代マニュアル
    第五章 若殿様のお国入り道中
    第六章 その後の三河吉田藩と大嶋家
    〔資料〕三河吉田藩の職制
    主要参考文献有り。
    江戸を出発した三河吉田藩の大名行列は、若殿の初のお国入り。
    その取りまとめ役が書き残した文書を中心に活用し、
    参勤交代の実態を詳細に、分かり易く綴っている。
    松平伊豆守家と大嶋家の歴史で始まり、
    若殿、信宝の初のお国入りへの統括マネージャーとなった
    目付、大嶋左源太の奮闘と大名行列(参勤交代)に関する
    様々な事情を明らかにしています。
    選抜メンバーとなる御供の役割と人数、宿の予約、
    行列の75%は人宿からの派遣「渡り者」、藩主の希望、
    度重なる日程の変更、行列のリハーサル、道中での重要規則、
    経費のチケット制、そして参勤交代のマニュアルの存在。
    それらを加味しての、大嶋左源太による7泊8日の道中記録。
    その一年後の若殿、信宝による江戸への参勤交代の紀行文。
    最後に松平伊豆守家と大嶋家のその後と幕末、明治時代で終わる。
    浅田次郎/作『一路』も面白かったのですが、
    事実は小説よりも奇なり。ともあれ担当者たちの大変なこと。
    先例にとらわれず、臨機応変な対応をしていても、
    献上品の受け取り等、先例が大事なこともあります。
    その返礼は出費・・・如何に節約するかも、藩の財政には必要。
    300人以上が動く道中での宿割だけでも大変なのに、
    他藩の参勤交代や幕府役人の行列との様々なせめぎ合いもある。
    また、道中の行列の割り振り。「惣行列」を組む場所や、
    それ以外の場所での行列の割り振り、吉田に到着後に江戸へ
    引き返す「道中計」の事など、興味惹かれる事柄が多く、
    大いに楽しめました。
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    投稿日:2022.09.19

  • kocul

    kocul

    参勤交代の実情を追った本
    儀礼やルールがプレッシャーとなり、参勤交代がしっかり各藩を弱らせる重荷になっていたことが分かる。
    日本人って昔からこんなことばっかりやっていたんだな、と思わされる。

    投稿日:2021.06.26

  • 駒稲荷

    駒稲荷

    参勤交代の差配を務めた藩士の記録から、大名行列の実態が書かれてます。道中の計画から実施までこんなに具体的に詳しい本は初めて読みました。小説「一路」よりも現実の方が大変です。道中の行程調整、人足の手配、他の大名との本陣の調整、宿割り、宿代の支払い、また突然の日程変更など、やるべき事が多く気が遠くなるほどです。これを全ての大名家でやっていたと思うと感動ものです。ちなみに、「関札」って大名家と宿場のどちらが作ったのか、また本陣に置いたまま使い回したのか以前から疑問でしたが、この本で解決しました。続きを読む

    投稿日:2020.10.11

  • hibiscum

    hibiscum

     江戸時代の参勤交代は、実際にそれを仕切る担当者の仕事すなわち要員の段取りやら日程計画の立案などはちょっと想像するだけで大変だろうなと思うが、それを日記などの記録をもとに実情を紹介してくれる本である。
     参勤交代ではなく若殿のお国入りだが、実際は同じである。本書で表されるのは具体的な事実だけに、初めて知ることも多かった。三河吉田藩松平家にとって最後の戦場である島原の乱に参加した家は、島原扈従として特別視されたとか、道中他家と宿場が重ならないような調整とか、人宿という人材派遣会社があって、参勤交代などの行列の下っ端連中を供給していたとか、役目や日数によって契約を結んでいて天候不順で日程長引いたら割増もらっていたり、明細がちゃんとあったり、日程をコーディネートしていたとか、もう細々したことがとってもおもしろかった。
     やはり細部をきちんと調べると、理解が深まるし自分なりに新たな発見があって、とても充足感があった。
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    投稿日:2019.11.07

  • tetujin

    tetujin

    このレビューはネタバレを含みます

    ・久住祐一郎「三河吉田藩・お国入り道中記」(インターナショナル新書)を読んだ。帯には「古文書から読み解く参勤交代のリアル」とある。「リアル」とは何か、これを知りたくて読んだ。とにかく、私の参勤交代の知識は教科書程度でしかない。本書「はじめに」でも「参勤交代とは」との節が設けられ、そこに「先頭の奴子が槍を振り回しながら云々」(3頁)との説明が載るが、私のもこの類であらう。大名の資金減らしの為に行ふものだとかと聞いたこともあるが、本書から確かにさうであるとも思へる。何しろ吉田は豊橋である。新幹線こだまでも2時間半ほどで東京に行ける。参勤交代だと6泊7日である。これでも金がかかるのだとよく分かる。これが参勤交代のリアルなのかもしれない。帯の裏には「この古文書をもとに参勤交代の驚くべき実情が明らかにされる」(磯田道史)との言葉も載る。さう、実情である。真実などといふものではない。あくまでリアルに実情を記す、これが本書である。だから、この時の参勤交代で若殿様が何をしてとか、本陣の構造はなどといふこともはほとんど書いてない。そんな参勤交代本であつた。さう言へば「はじめに」にはかうも書いてあつた、「江戸時代に何万回と繰り返された参勤交代のうちのたった一回に焦点を当て」た「きわめてミクロな視点の本である。」(5頁)
    ・私は三河吉田藩の三河吉田に住む人間なので気になることがある。これは、もしかしたら、江戸でも地方でも同じやうに関心があるのではないかと思ふ。つまり、参勤交代で移動した人間はどうなるのかといふことである。移動するのは300人程度であつたらしい。例へば吉田に行く時、吉田在の人間はどのくらゐか、逆に江戸に行く時、江戸在の人間はどれくらゐか。これは書いてないのだが、しかし「御供役割帳」(60〜61頁)といふのがあつて、ここの「種別」が「詰切」と「道中計」の2つに分かれてゐる。「詰切(吉田へ着いたら次の江戸参府まで滞在すること)」(62頁)は行つたら江戸に帰れないのである。このツメキリに対してドウチュウバカリといふのがある。「道中計(吉田へ着いたらすぐに江戸へ戻ること)」(同前)はこの参勤交代だけの役割で、終はれば江戸に帰らねばならないのでる。この「役割表」を見ると圧倒的に「道中計」が多い。江戸から吉田に行くのは江戸の人間であるから、吉田にゐても仕事はないといふことである。ただ、すぐ帰ると言つても「とんぼ返りではさすがに体力がもたないので、通常は三日間の休暇が与えられた。」(190頁)といふ。用事有りで五〜二〇日間の延長休暇を申請する者が多かった。」(同前)といふ。親類や知人を訪ねたらしい。三河から行く場合はこの逆になるのであらうか。いづれにしろ、参勤交代の問題はここにあるのではなく金の問題なのであらう。とにかく金がかかるのでる。総勢300人のうち、現在で言ふ派遣が何人ゐるのであらうか。それも含めて人件費が高い。これ以外に献上品も多かつた。一々返礼金を渡してゐるとばかにならない。といふわけで、一回の参勤交代にかかる費用は、三河吉田藩で600〜700両(119頁)であつたらしい。こんなことをしてゐれば金もかかるよなと思ふ。いくら年貢が納められても足りない。文久三年の借財は「総額金五万両であ」(213頁)つたといふ。大名といふ者、ああだかうだと何かと物入りであつたらしい。そんなわけで、私は参勤交代の「リアル」を人と金中心に見たのだが、本書にはその他が具体的に出てくる。とにかく準備と金がかかるのが参勤交代であつた。教科書には決して書いてないことである。おもしろい。

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    投稿日:2019.05.02

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