【感想】殺人者の顔

ヘニング・マンケル, 柳沢由実子 / 創元推理文庫
(75件のレビュー)

総合評価:

平均 3.6
10
30
22
5
2

ブクログレビュー

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  • フィドラー

    フィドラー

    このレビューはネタバレを含みます

    星3,7です。スウェーデンの片田舎で起こった老夫婦の殺人事件を追う推理小説。中だるみがなくすごいスピードで読めた。訳者も上手なのだろう。
     けど、事情があって途中、読書を中断したら登場人物が錯綜してしまって、少し困惑した。外国の本を読むといつもそうではある。けど、ストーリーはしっかりと頭の中に残った。意外な展開というわけでもなく、作中に頻繁に登場する人物が犯人という設定でもなかった。人間臭さのある刑事も良かった。んでも、旦那がいる女の人に「分かれて俺と一緒になってくれ」なんて…いけませんよ。ねぇ

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    投稿日:2023.05.14

  • luvlondon

    luvlondon

    オリジナルのタイトル”Mördare Utan Ansikte”、どういう意味なんだろうと思って辞書を引いたところ、顔のない殺人者、という意味だった。
    犯人はいて勿論『顔』がある。けれど、犯人をそうするように駆り立てたものーー国の制度、仕組み、移民問題ーーもある意味では『犯人(原因)』で、それには『顔』がない。……よな、とか考えたりした。

    国が抱えている問題を軸にして展開される重厚な物語。読み終えた時の(いい意味での)疲労感。
    ヴァランダーのシリーズをもっと読みたくなった。

    しかし、クルト・ヴァランダー、プライベートがとことん行き詰まっているし、ひどい怪我をするし、急いでご飯食べたりして結構お腹こわしてるし……大丈夫か!?と心配になった。これで職場の人間関係がギスギスしてたら(辛すぎてとても読み進められなかった)……そうじゃなくてよかった。

    父親の問題のくだり、それについて姉と話している場面はとても苦しくなってしまった。
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    投稿日:2023.03.08

  • たこすけ

    たこすけ

    このレビューはネタバレを含みます

    何年ぶりかの再読。スウェーデンといえば独自のコロナ対策であるが、私はそれは「老いたら死を受け入れる」というポジティブな死生観に裏打ちされたものだと思っていたけれど、本作での若い記者の発言「今日のスウェーデンで老人のことをかまう人間などいないということですよ」を読み、若干印象が変わった。移民問題がクローズアップされている本作であるが、サブテーマは「老い」と言っても良いだろう。〈死ぬのも生きることのうち〉。

    人口890万人の国で(東京都は約1400万人)200万部を売れたのは、やはり移民問題への関心の高さの現れなのだろうな。我々日本人は遠い国のエンタメとして消費しているけれど、本国ではもっと重くデリケートな読まれ方をしていた(いる)作品なのではないかと思った。

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    投稿日:2023.01.09

  • ikezawa

    ikezawa

    北欧ミステリーは有名どころは読んでいる方なので
    ・グレーンス警部
    ・特捜部Q
    ・ミレニアム
    ・その他警察モノなど
    なんというか北欧作品的なヤツ、というか警察モノのあるあるが揃ってる(この作品というかもっと前の刑事マルティン・ベックが元?)

    当然ヴァランダーは離婚してるし、未練たらたら…子供は独立してるし親の介護もあるし
    同僚は体が不調気味…
    捜査では怪我ばかりして進展無し…なんともかっこ悪いのだけども、どうも嫌いになれない。
    (もっと最低な刑事を見かけてるのもあるけど…)

    事件自体は携帯電話やインターネット普及前の事件なので、劇的な展開やどんでん返しは期待せずに読み進めた。

    平凡な農夫が何故とても残虐な方法で夫婦ごと殺されてしまったのかを追う。
    追う中での主人公の内面に重点を置いてる。
    (合わない人は合わないと思う。私は好き。)
    土地の描写も寒そうで、読んでいる今の季節に合っていた。

    ヴァランダーを"カッコよく"したのがマルティンベックらしいので、そちらも読み比べてみようと思う。
    シリーズどちらを追うかはそのあと決める。
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    投稿日:2022.12.08

  • じゅう

    じゅう

    スウェーデンの作家「ヘニング・マンケル」の長篇ミステリ作品『殺人者の顔(原題:Mordare utan ansikte)』を読みました。
    「アンナ・ヤンソン」の『死を歌う孤島』に続き、スウェーデン作品です… 北欧ミステリが続いています。

    -----story-------------
    ●「関口苑生」氏推薦――「これは世界のミステリー史上においても瞠目すべきシリーズとなることは間違いない」

    【CWAゴールドダガー受賞シリーズ/スウェーデン推理小説アカデミー最優秀賞受賞】
    雪の予感がする早朝、動機不明の二重殺人が発生した。
    男は惨殺され、女も「外国の」と言い残して事切れる。
    片隅で暮らす老夫婦を、誰がかくも残虐に殺害したのか。
    燎原の火のように燃えひろがる外国人排斥運動の行方は? 
    人間味溢れる中年刑事「ヴァランダー」登場。
    スウェーデン警察小説に新たな歴史を刻む名シリーズの開幕!

    *第10位『IN★POCKET』文庫翻訳ミステリーベスト10/評論家部門
    -----------------------

    本作品は、第1回ガラスの鍵賞を受賞した「ヘニング・マンケル」の処女作で、警察小説「クルト・ヴァランダー」シリーズの記念すべき第1作、、、

    意に反した離婚から立ち直れず、娘は家出し、老いた父親との関係もうまくいかず、不規則な食生活がたたって中年太りで、飲酒運転を同僚に見逃してもらったり、酒に酔った勢いで既婚の女性検察官にセクハラまがいの迫り方をしてふられるという、格好良くない中年の刑事「クルト・ヴァランダー」が主人公なのですが、その人間的に弱い部分に、何とも言えない人間味あふれる魅力があるんですよね… このシリーズ、愉しく読めそうです。


    1990年1月8日、スウェーデン南部のスコーネ地方レンナルプ村に住む農家の老夫婦が何者かに襲われた… 隣人の通報によりイースタ警察署の「クルト・ヴァランダー」らが現地に到着すると夫「ヨハネス・ルーヴグレン」は既に死亡し、妻「マリア・ルーヴグレン」は瀕死の状態であった、、、

    強盗の仕業と思われたが負った傷の状態から両者共に拷問を受けており、奪われた物も不明であった… 目ぼしい財産を持っていそうにない田舎に住む老夫婦に犯行の動機となりえるものがあるとは思えない中、重傷を負った「マリア」が「外国の」と言い残し死亡した。

    被害者を縛っていた縄の特徴ある縛り方と外国人という手掛かりで捜査を進めようとした「ヴァランダー」と相棒の「リードベリ」は、外国人に対して人種差別的な反感を持つ一部の人々を刺激することを恐れて、外国人容疑者の線を伏せるが、この配慮は警察内部の何者かにより裏切られ、犯人は外国人という噂がマスコミに流れ、報道されてしまった… 国外から流入する外国人との軋轢を抱える社会情勢を知る「ヴァランダー」等は、不安な思いを抱えながらも捜査を続けるが、案の定、これをきっかけに移民排斥運動を強めようという不穏な動きが始まった、、、

    「3日以内に老夫婦惨殺事件を解決しなければ、移民地区から死人が出る」という脅迫電話が「ヴァランダー」にかかる… その後、「マリア」の兄「ラース・ヘルディン」から、妻も知らなかった「ヨハネス」の一面に関する情報提供があり、その背後関係を調べている最中に移民の収容所が放火され、更には移民逗留所でソマリアから来た移民の1人が射殺され、「ヴァランダー」等は二つの事件を追うことになる。

    車の音から犯行に使われた車種を特定したことをきっかけにして、ソマリア人の殺害事件を解決した「ヴァランダー」等は、再び、レンナルプ村の事件の捜査に戻る、、、

    捜査を進めるうちに、「ヨハネス」が第二次大戦時にドイツ相手に密かに稼いだ巨額の資産や、愛人と息子の存在が明らかになるとともに、競馬好きの刑事「ハンソン」の情報から、息子の経済的な窮状が判明し、「ヴァランダー」は、その線を追うが… 真相究明のきっかけとなり、犯人特定の決め手となったのは、フレーニングス銀行の窓口担当「ブリッタ=レーナ・ボデーン」の素晴らしい記憶力でしたね。

    結果的には、「外国の」というダイイングメッセージが、的確に犯人を指示していたことがわかるのですが… 「ブリッタ=レーナ・ボデーン」の存在がなければ迷宮入りしていたかもしれませんね、、、

    スウェーデンの人口の約五分の一が移民、または親が外国生まれ、あるいはスウェーデンに帰化した外国人らしいです… スウェーデン社会が抱える、流入する移民に関する問題がテーマとして扱われていますが、現在では世界的な課題になっており、他人事ではないですね。



    以下、主な登場人物です。

    「クルト・ヴァランダー」
     イースタ警察署の刑事。主人公

    「リンダ」
     クルトの娘

    「モナ」
     クルトの元妻

    「クリスティーナ」
     クルトの姉

    「ステン・ヴィデーン」
     クルトの旧友

    「ヘルマン・ムボヤ」
     リンダの恋人

    「リードベリ」
     イースタ警察署の鑑識担当刑事

    「マーティンソン」
     イースタ警察署の実習中の巡査

    「トーマス・ネスルンド」
     イースタ警察署の刑事

    「ハンソン」
     イースタ警察署の刑事

    「スヴェードベリ」
     イースタ警察署の刑事

    「ビュルク」
     イースタ警察署の警察署長

    「エッバ」
     イースタ警察署の交換手

    「アネッテ・ブロリン」
     イースタ検事局の新任検察官

    「ユーラン・ボーマン」
     クリシャンスタ郡警本部の刑事

    「ヨハネス・ルーヴグレン」
     農民

    「マリア・ルーヴグレン」
     ヨハネスの妻

    「ニーストルム」
     ルーヴグレンの隣人夫婦(夫)

    「ハンナ」
     ルーヴグレンの隣人夫婦(妻)

    「ラース・ヘルディン」
     マリアの兄

    「ブリッタ=レーナ・ボデーン」
     フレーニングス銀行の窓口担当

    「アニタ・ヨアンソン」
     主婦

    「マルガレータ・ヴェランダー」
     美容師

    「ニルス・ヴェランダー」
     マルガレータの息子

    「エレン・マグヌソン」
     薬局勤務

    「エリック・マグヌソン」
     エレンの息子

    「ルネ・ベルマン」
     元警察官

    「ヴァリフルド・ストルム」
     ルンドの男
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    投稿日:2022.12.07

  • ひまわりめろん

    ひまわりめろん

    また、新しいシリーズに手を出してしまった

    とっ散らかった本棚だ
    一人の作家さんや、一つのシリーズを集中的に読むということが出来ない
    たまに変な決意の元にそんなことをしてみると、しばらくその作家さんに手を出さなくなったりする
    うーんやっかい(自分で言うな!)

    さて今回手を出したのは『刑事クルト・ヴァランダーシリーズ』
    なんとデンマークのミステリーでイギリスでドラマシリーズが放送されていたという代物
    そしてこの刑事ヴァランダーが良い!

    一言で言うと「情けない」
    別れた妻に未練たらたらたが、突然現れた若い美人の検察官も気になる、一人娘はかわいくて心配だがどう接していいかわからずにおろおろする
    父親の問題からは目を背けてぐずぐずして事態を悪くして、最終的には姉に頼る
    奥さんに出ていかれたとたんに食生活は乱れて太り出し、酒に逃げて失敗する

    もう!こりゃあダメだ
    こんなんもう男なら絶対に自分を重ねちゃうよ!w

    だけど警察の仕事は真面目にコツコツ諦めずに犯人を追い、仲間と協力して証拠を積み重ねて行く
    猛烈な忙しさの中でも休まず働き続ける
    うーん、仕事に逃げてるなw

    多くの男たちにとって「刑事ヴァランダー」は「自分」なんじゃなかろうか?ほんとは目を背けたくなるようなだらしない「自分」だけど、そこそこ真面目に頑張ってそれなりに成果をあげたら誇ってあげたい「自分」

    そんな「自分」を追って、このシリーズも読み続けていきましょうか
    続きを読む

    投稿日:2022.11.25

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