【感想】メノン

プラトン, 藤沢令夫 / 岩波文庫
(46件のレビュー)

総合評価:

平均 4.2
15
16
5
1
0

ブクログレビュー

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  • 河野雪隠

    河野雪隠

    "メノン「あなたという人は、顔かたちその他、どこから見てもまったく、海にいるあの平べったいシビレエイにそっくりのような気がしますね。なぜなら、あのシビレエイも、近づいて触れる者を誰でもしびれさせるのですが、あなたが私に対してしたことも、何かそれと同じようなことのように思われるからです」"


    彼は何事かを知っていると思い込んでいるものに対してユーモアや皮肉を織り混ぜながら問いを投げ掛け、遂には行き詰まらせてしまう。

    人の魂には「それ」は既に内在している。
    必要なのは学ぶことではなく、想い出すことだ。
    彼は教師ではなく、ともに探し求める者なのだ。

    「それから、ぼくのことだが」

    「もしそのシビレエイが、自分自身がしびれているからこそ、他人もしびれさせるというものなら、いかにもぼくはシビレエイに似ているだろう」

    読書メモ
    001 徳は教えられうるか
    002 徳とは何か
    003 徳の本質的特性とは
    004 徳が何かは実は僕にも分からない
    005 「学ぶ」とは想起すること
    006 従者を使った証明
    007 この子はそれを知っていると思い込んでいたのだ
    008 質問するだけで教えはしないのだが
    009 ものを知らない彼の中にも正しい思わくは内在している
    010 彼は生涯以外の他の時において既にそれを持っていた
    011 魂は既に学んでいる
    012 魂とは不死のもの
    013 想い出していないならそれを探求し想起するよう努めよ
    014 「徳は教えられうるか」、再び
    015 「徳というものが魂に関わる色々なもののなかでもとくにどのような性格を持ったものであるならば、それは教えられうるものだということになりもしくは教えられえないものだということになるか」
    016 徳は知識の性格を有するか
    017 徳は善であるか
    018 善きものは有益なものであるか
    019 【仮説】魂の性質が有害であるか有益であるかは知性が伴うか否かによる
    020 【仮説】徳が有益なものである以上それは知でなければならない
    021 【仮説】知であるならば徳は教えられうる
    022 靴職人になりたければ靴職人の元へ行け
    023 徳の教師の不在
    024 徳は教えられうるものではない
    025 優れた人物たちは有益な人物であるべき
    026 有益な人間たらしめている条件は我々を正しく導くこと
    027 正しく導くことに「知」は必要か
    028 正しい思わくは想起によって縛りつけられ知識となり永続的なものとなる
    029 正しい思わくと知識が正しい方向へ導く
    030 正しい思わくも知識も生まれつき備わるものではない
    031 徳は教えられうるものではない以上知識でない
    032 徳は神の恵みによって備わるものである
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    投稿日:2020.05.17

  • サイトム

    サイトム

    プラトンの入門にちょうどいいかと思う。「徳について」という副題があるが、「探索のアポリア」のところは、教育論やメディア・リテラシーとも関わるなと思う。

    「人間は、自分が知っているものも知らないものも、これを探求することはできない。というのは、まず知っているものを探求するということはありえないだろう。なぜなら、知っているのだし、ひいてはその人には探求の必要がまったくないわけだから。また、知らないものを探求するということもありえないだろう。なぜならその場合は、何を探索すべきかということも知らないはずだから」(pp.45-46)

    ソクラテス裁判で原告になるアニュトスもでてきて、「弁明」につながるところもある。
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    投稿日:2020.05.15

  • fky

    fky

    (Mixiより, 2011年)
    プラトンの対話篇の一つ「プロタゴラス」が楽しく読めたので、続けて一作読んでみた。ここに提示されている「想起説」という考え方はなかなか面白く、"生まれ変わり"というなんとも飲み込み辛い考え方を裏付けているのかな?と感じた。一部論理に大きな破綻があるのも、"文学"である事が幸いして逆にふくらみを持たせる部分になっている。良い。続きを読む

    投稿日:2020.04.18

  • katohiroki

    katohiroki

    このレビューはネタバレを含みます

    ソクラテス とすると、有益であるという点にかけては、正しい思わくは、知識に何ら劣らないわけなのだ。
    メノン しかし、ソクラテス、これだけの差はあるでしょう。つまり、知識をもっている者はつねに成功するけれども、正しい思わくをもつ者のほうは、うまくいくときと、そうでないときがあるという点です。
    ソクラテス どうして?つねに正しい思わくをもっている者は、いやしくもその思うところが正しいあいだは、つねにうまくいくのではないかね。
    メノン そうでなければならないようですね。すると、どうも私には不思議になるのですが、ソクラテス、もしそうなら、いったいぜんたいなぜ知識は、正しい思わくよりもずっと高く評価されるのでしょう?またこの二つが、それぞれ別のものとして区別される理由はどこにあるのでしょう?
    ソクラテス どうしてそれが君に不思議に思えるかわかるかね。それとも、ぼくが言ってあげようか?
    メノン ぜひ教えて下さい。
    ソクラテス それはね、君がダイダロスのつくった彫像に注意したことがないからだよ。もっとも、君たちに国にはもともとないもかもしれないが。
    メノン いったい何を考えて、そんなことを言われるのですか?
    ソクラテス あの彫像もやはり、しっかりと縛りつけておかないと、逃げて走り去ってしまうが、縛っておけば、じっとしているということさ。
    メノン それで?
    ソクラテス ダイダロスの作品を所有していても、それが縛りつけられていないならば、ちょうどすぐ逃亡する召使と同じことで、あまりたいした値打ちはない。じっとしていないのだからね。しかし、縛り付けられている場合は、たいした値打ちものだ。なにしろ、たいへん立派な作品だから。―ところで、何のつもりでこういうことを言うかというと、ぼくは正しい思わくのことを考えているのだ。つまり、正しい思わくというものも、やはり、われわれの中にとどまっているあいだは価値があり、あらゆるよいことを成就させてくれる。だがそれは、長い間じっとしていようとはせず、人間の魂の中から逃げ出してしまうものであるから、それほどたいした価値があるとは言えない―ひとがそうした思わくを原因(根拠)の思考によって縛りつけてしまわないうちはね。しかるにこのことこそ、親愛なるメノン、先にわれわれが同意したように、早期にほかならないのだ。そして、こうして縛りつけられると、それまで思わくだったものは、まず第一に知識となり、さらには、永続的なものとなる。こうした点こそ、知識が正しい思わくよりも高く評価されているゆえんであり、知識は、縛りつけられているという点において、正しい思わくとは異なるわけなのだ。
    メノン ほんとうに、ソクラテス、何かそういった事情にあるもののようですね。

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    投稿日:2020.03.08

  • Pompeii

    Pompeii

    今までの読んだプラトンの作品に比べて、反論なく円滑に議論が進んでいくので分量も少なく読みやすい。

    「徳とは教えられるのか」についての議論だが、そもそも「徳とは何か」に議論がすり替わる。

    というのも、それがどうであるかはそれがどのような性質のものかを定義づけなければ語ることができない。これは日常的な会話にも言える。

    例えば旅について語っても、「一人なのか複数なのか」、「どこにいくのか」、「目的は何か」と性質を限定して定義づけなければ、議論は想定違いの結論を生みかねない。

    話がずれたが、本書では『パイドン』で語られていた想起説やイデア論について述べられており、合わせて読むとプラトン哲学をより深く理解できる。

    個人的に最近「直感」が実在することに気づき、自分の奥底に眠るイデアがある特定の物事に触れると思い出されるかのような、まさしくプラトンの言う想起説で説明がついてしまう興味深い発見をした。最初は想起説なんて机上の空論だとたかをくくっていたが、そうでもないのかも知れない...。
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    投稿日:2020.02.20

  • マタン

    マタン

    このレビューはネタバレを含みます

    哲学というものはやはり難しい…
    だけれどもこれぐらいだと、
    とっつきやすくはなるのかな…
    ただやはりそれでも独自の表現はあるけど

    確かに、徳は残念なことに
    教えることはできない代物でしょう。
    結局のところ教えられても
    それを自分で会得しなければ意味ないわけで
    それをしない人には意味がないのです。

    それは悪人を善人に変えることが難しいのと
    一緒なのかもしれませんね。

    この中にはあ、と思えることが多いと思います。
    先入観がいかに危険か、
    それはこの貴重な知の源を
    処刑により消し去った
    ある人物の発言がまさにそれでしょう。

    ただ哲学ですので…

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    投稿日:2019.07.23

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