【感想】真夏の犬

宮本輝 / 文春文庫
(5件のレビュー)

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ブクログレビュー

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  • Sintola

    Sintola

    戦後間もない頃(高度成長期くらいか)の阪神地区(主に海側)の下町を舞台とする短編集。生まれ育った環境との「地縁」と、人間の「性(さが)」を強烈に描いた作品。
    その日暮らしが精一杯の少年時代・少女時代を過ごした登場人物たちが、大人になって昔を思い出したり、再会したりする話。当然、大人になるまでの間に、彼らは人生の辛苦を舐めているのだが、まだ10代前半くらいの段階で世の中のいろいろな場面を知ってしまうのである。
    彼らは子供の頃に、日雇い労働、イカサマ詐欺師、水商売、ギャンブルなどなど、さまざまな職業の大人たちを見て育つ。仕事内容だけならまだしも、お金の使い方、ドロドロした人間関係、窃盗・嘘・恐喝など、大人たちの背徳も知ってしまう。そして、そのような大人にならじと「反発心」を抱いていたはずが、大人になってみれば同じような振る舞いを繰り返してしまうもの。(例:親の不倫を知って嫌悪感を抱きつつ、いざ自分が大人になったら不倫してしまう)

    次の言葉が印象に残った。
    「俺がお前たちの年齢の頃はな、世の中の裏の裏までとうに知っとったんやで」

    暗いテーマの短編集なのだが、思わずページが進んでしまう、ぞっとする一冊であった。
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    投稿日:2023.08.30

  • htaku14

    htaku14

    九篇の小説が収められている短篇集。阪神尼崎駅が舞台の作品がいくつか収録されている。かつての「煤煙と汚物の街」尼崎は猥雑な街だったようで描写が強烈で、すっかり小綺麗になった今の街との違いに驚いた。

    庫版巻末の「解説」で作家の森絵都氏が語る宮本文学への愛着についての記述が、自分が普段宮本作品について思っていることがうまく言語化されていて腑に落ちた。
    「清も濁もなみなみ湛えた底なし沼みたいな、比類なきその作品世界にときどき無性に浸かりたくなる」
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    投稿日:2021.12.21

  • わぉ!

    わぉ!

     男は五寸釘を持ち、それを両方の指で曲げて折った。すると、私の近くにいた痩せた老人が、
    「アホクサ!」
     と怒鳴ったので、群衆は口を閉ざして、その老人を見つめた。
    「力道山の弟? アホぬかせ、力道山に弟がいてるなんて、わしは聞いたことがないわ。お前、警察に訴えるぞォ」

    なんやら面白そうな展開になりそうだ。

    この短編集を読んでいると、すっかり忘れてしまっていた、自分の若かりし時代を思い出す。

    そうか宮田輝・・・・じゃなかった宮本輝はこんな作家だったんかあ
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    投稿日:2021.04.19

  • 谷山志村

    谷山志村

    関東の地方都市にまだスーパーアリーナなんてなかった頃、町には普通に野犬がいた。
    あの頃のムッとした暑い夏の匂いとか、雑然とした商店街とかを思い出す小説。

    投稿日:2020.07.22

  • 文藝春秋公式

    文藝春秋公式

    【人間の悲しみと苦しみとやさしさを描いた心打つ人生の物語】野犬に囲まれた夏の日の恐怖、アル中の母と住んだ少年期。歳月を突き抜けて甦える記憶と人生の深い思いを浮かび上らせた九つの短篇。

    投稿日:2018.03.27

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