【感想】パイドロス

プラトン, 藤沢令夫 / 岩波文庫
(25件のレビュー)

総合評価:

平均 4.0
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ブクログレビュー

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  • rafmon

    rafmon

    パイドロスは教養として読んでみたかったので、その目的は達したが、面白いとか思索に繋がるかというと、それ程でもなかった。寧ろ、プラトンの生きた紀元前の社会を想像する好奇心が満たされる楽しさ勝る。その時代の価値観である。

    つまり、これは解説で触れられる事だが、言論の自由と法のもとにおける平等をたてまえとする民主制下のアテナイでは、人は国民全体の集会である国民議会や陪審法廷の世論を動かすことによって国政を支配し、あるいは身の保全と立身をはかることができたという。そのために言論技術が重要であった。弁論術とは、まさに時代の要請であった。

    そこでその弁論術。ソクラテスと恋人のパイドロスの対話形式で、愛や美について、思索を深めていくのである。その会話の舞台が川のほとりである事、ソクラテスもパイドロスも男性である事がまた思考の背景を考えさせるものがある。

    ー 真の美は魂の美であり、物質的な美よりも価値がある。美しいものに対する愛情は、魂の成長と向上の源である。愛することの真の意味は、愛する対象の美に共感し、それに従って行動すること。真の愛は相手の魂の美しさに根ざしており、肉体的な要素には依存しない。

    ー 美と愛は、人間の魂の最も高尚な部分を喚起し、それを向上させる力を持っている。愛は自己超越と他者への奉仕の手段として機能し、個人の成長に重要な役割を果たす。美と愛は、個々の人間だけでなく、社会全体の発展にも貢献する。美と愛は人間の生において根源的な喜びをもたらし、生の意義を明らかにする。

    ソクラテスの考えによれば、美と愛は人間の魂の修練と成長のための重要な要素である。これらの概念は、人間の精神的な探求と深化において不可欠なものであり、人間の本質を理解するための鍵を提供する。『パイドロス』は、美と愛に関するソクラテスの深い洞察と啓示を通じて、読者を啓発する。

    哲学的な探求の至宝。まさに、原典であり原点。
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    投稿日:2024.04.13

  • サマ

    サマ

    このレビューはネタバレを含みます

    「自分を恋するものより恋していない人に身を任せる方が良い」という一見常識に反するリュシアスの言説を聴くことを発端に、恋することについて、そして弁論術批判についてソクラテスがミュートス(神話)を交えながら滔々と語るという内容。魂がかつて見た美のイデアへの欲求(エロース)の芽生えとしての恋を語り、弁論術に本当に必要なのは哲学により物事の真の姿を問答することであると語ることでどちらの主題も哲学礼賛へとつながるようになっている。
    一読した感じだと最後の方の弁論術批判の辺りがよくわからず、うーん?となってしまった。しかし解説はさすがのさすがで過不足なく要点と解釈がまとまっており、そうだったのか、なるほどと唸らされる。今までの著作の内容も盛り込み、充実した内容を余裕を持って語っている姿が分かるようになってきた…と思う。最初は面食らったミュートスもだんだん癖になってくるというか、壮大さとロマンを感じられるようになってきた気がする。この調子で後期の作品も読んでいきたい。

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    投稿日:2023.12.21

  • La_y3

    La_y3

    ソフィストによる弁論術が隆盛していた時代に一石を投じた対話篇。

    最もらしく語るためには、語られる内容の真理を把握している必要があるだろうか?

    弁舌の内容とその本質に差異があるほど、嘘を見抜くのは容易くなる。しかし、語りの内容と真理が漸近するほど、その微差を見抜くのは困難になる。後者の近接性を生み出すには、本来的な真実の把握なくしては不可能だと説かれていく。続きを読む

    投稿日:2023.05.07

  • ykikuchi

    ykikuchi

    ソクラテスとパイドロスとの対話で、弁論術についてをやりとりしている。前半は恋を主題にやりとりがされ、後半は当時巷で流行っている弁論について考察を重ねるような構成だった。しっかりと、注釈を読み込んでいないので、理解していないままの語もあり、内容を得心したわけではない。
    分割と統合を重ねる方法を説明しているところ(130ページあたり)が、私がなるほどなぁと思えたところだった。
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    投稿日:2023.03.29

  • クマオ

    クマオ

    後半に打ちのめされた。「饗宴の続編とも言うべき」なんてとんでもないじゃないか。

    「読むこと」によって知ろうとすることは無知ゆえに危険だろうし、愚かなことかもしれない。しかしソクラテスのような人と議論できる訳でもない場合、本以外にどんな手段が望めるというのだ。せめてプラトンが対話式で書いてくれていることが希望の救い。よくよく考えてみなければ。続きを読む

    投稿日:2021.07.24

  • 子どもの生活と発達研究室

    子どもの生活と発達研究室

     共通教育科目「教育の思想と歴史」でテキスト指定。このあと、ルソー『エミール』(岩波文庫中巻)、マルクス『資本論』(新日本出版社新書版第3分冊)にすすみました。1回、オンデマンドにしたのでご批判下さい
     『資本論』解説動画(57分)
       https://youtu.be/RaLwv3vxTJk
       レジュメ http://kodomo.kitanagoya.org/2014z2/img/499.pdf
      (20200817追記)
    --------------------------------------
     『パイドロス』には、3つの話が挿入されている 。
     〈第1の話〉:パイドロスがリュシアスの話の演説原稿を読み上げた話
            『20ページ後ろから3行目~30ページ8行目』
     〈第2の話〉:リュシアスの話を批判して語るソクラテスの話
            『39ページ6行目~53ページ後ろから4行目』
     〈第3の話〉:リュシアスの話とは別に本当に語りたいことを語ったソクラテスの話
            『62ページ2行目~103ページ後ろから5行目』
    である。その後、いわば総合的な考察の話が続くが、その対話を一つのまとまった話とみるならば、『パイドロス』は4つの話で構成されているとみてよい。
     まず、3つの話がどこからどこまでか確認しましょう(背表紙反対側にマーカーで印をつける)。第1の話から読みましょう!
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    投稿日:2020.05.18

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