【感想】老いる家 崩れる街 住宅過剰社会の末路

野澤千絵 / 講談社現代新書
(43件のレビュー)

総合評価:

平均 3.6
8
12
15
4
0

ブクログレビュー

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  • Mr.G

    Mr.G

    このレビューはネタバレを含みます

    現代日本において無秩序に建てられ続ける住宅群、超高層マンション。空き家が増えているにも関わらず何故建てられ続けるのかという解説と、都市計画法等の法律や地方自治体の考え方や姿勢への問題提起、改善方策を示した一冊。

    都市部では空き家がどんどん増えているにも関わらず法規制の緩和や企業、地権者の思惑から郊外に新築住宅が建てられ続け、都市部でも一定の地域に超高層マンションが建てられ続ける。そのことによりインフラへ等への問題が出てきて効率の悪い街が出来上がる。例えば無秩序に郊外に住宅が広がっていった場合には公共下水道、電気、ガス、ゴミ収集、学校、病院、橋などの公共施設のメンテナンスなど対応しなければならない範囲がどんどん広がっていってしまう。地方都市郊外の市町村では人口が増えれば税収が増してその街が豊かになるという考えのもと周りの市町村から人口を奪うような形で市街化調整区域での法的緩和を行なっている。それらの緩和をやめない限りは今後も調整区域に住宅は建て続けられるだろう。

    都市部に一極集中で超高層マンションが乱立した場合にはそのエリアのみ小学生の数が一気に増えてキャパオーバーになって増設したり、駅のホームが混雑しすぎるなど諸問題が起こってくる。
    これらが問題なのは高度経済成長きなどとは違い今は人口減少社会なのに、という点である。インフラや施設は徐々に不要となっていく時代にむしろそれらを拡大しなければ成り立たないというのは都市計画がうまく機能していないとも言える。
    また、超高層マンションに代表される分譲マンション自体にも問題がある。分譲マンションは管理会社があるわけではなく居住者同士のコミュニティーによって成り立っている。こうしたマンションの終末期のことを考えると解体する、建て替えをするとして一体誰がそれらの費用を出すのか、等の問題も出てくる。そのような問題を抱えたマンションを何も考えずに作り続けるというのはいかがなものかと筆者は訴えている。

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    投稿日:2022.09.14

  • itomona

    itomona

    自分の住んでいる街の様子をずっと見ていて漠然と感じていたことをきっちり説明してもらった気分。このままでは絶対まずいことも、だからといってすぐ解決できる問題でないことも、

    投稿日:2021.11.07

  • たかお

    たかお

    日本は空き家も老いた住宅も右肩上がりに増加し続けている。しかし、タワーマンションや地方郊外での新築住宅は増えている。
    これは新築住宅に対して積極的に支援してきた日本の長い歴史が関係していると述べる。(経済危機のたびに、税金を投入して住宅ローン減税を行ったり、固定資産税等の税制上の優遇処置を拡大するなど。)
    最後に筆者の思う方策が書かれてるがどれも抽象的すぎて記憶に残らないのが残念。
    海外の例でアメリカデトロイトで2003年にランドバンクが設立され、放棄される空き家を管理している例があげられていた。
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    投稿日:2021.10.03

  • dattsu

    dattsu

    住宅ではなく、住めない空き家が過剰なのではないだろうか。問題意識には同意するが、ミクロ経済学的な視点がもう少し前提にあれば、建設的なインプリケーションにまで到達できると思うのだが

    【感想】
     大学の研究者による本なのだが、ややイシューを洗練させ切れていないというか、ホットな問題トピックをつらつら並列で書いているような本。ジャーナリスティックな書きっぷり。新書で、手広く問題を取り扱いたいからだろう、と思える。やや言葉の選び方、現象の描き方がミスリーディングチックに思えた。例えば、再三「日本は人口が減少しているのに、住宅が作られ続けているのはおかしい(問題)」と語られるのに違和感がある。確かに、その文を読めば、なんだかおかしいような気がするが、このセンテンス自体がミスリードであると思う。もう少し現象を正しく記述するなら、「一部の人気の地域には住宅が増やされ続けている。一方、人気の無い地域からは人が減り続け、元の住居は放置されている」ということである。これは長年言われ続けている現象「都市への一極集中」「田舎の過疎化(建物放置)」とほぼ同義だと思う。それを、あえて俯瞰して眺めることで、別の問題を浮き彫り?にしたいという事だろうか。ただ、そのマクロ的視点を持ち込んで、どのようなインプリケーションが生まれるのか?私には掴みきれなかった。

     「住宅の供給過剰」という言葉もミスリーディングに思う。正しくは市場に流通しない持ち手も不明な空き家がたくさんある一方で、新しいマンションや住宅が作られ続けている、という事だろう。市場に出てきていない、もしくは買い手がつかないような空き家・家はそもそも経済学上「供給」されていないに等しい。それらを含めて「住宅」として括ってしまうのは、現象を誤認しているように思う。問題の本質は「空き家」や「古い家」が市場供給されていないことではないか。研究者であれば、ではいかにそのマーケットデザインをするのか、政策デザインをするか、という話があるかと思ったが、そのような記述は少なかった。どちらかというと、ルポ的な記述が中心である。「建設業界はどうしても短期的な利益を追い求めて、家を建て続けてしまう。」「需要があるからといってタワーマンションを建て続けている、それで付近の景観が悪くなっている。」「不動産は『負』動産になってきた」などのような悪い現象の記述に文を割きがちである。本書を読むと、どうしても今の住宅企業や、自治体が都市計画・条例を整備していないのが悪いように感じてしまう。ただ、彼らはきちんと自己利益の最大化をはかっているだけなので、それを外から批判してもインプリケーションは弱い。もう少し、当たり前のミクロ経済学的視点があれば、面白くなるのになぁ、と思った(研究者の本に期待するコトとしては)
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    投稿日:2021.09.05

  • あいちゅう

    あいちゅう

    過剰に住宅を供給することで回り続けることをやめられない社会。政策の問題はよく分かったけれど、個人としてはどうしたら良いのだろうか?

    投稿日:2020.09.08

  • kmbmasa

    kmbmasa

    規制緩和による現代的なスプロールや住宅の供給過剰が、社会にとって中長期的にいかに悪影響になるかということを、一般読者向けにわかりやすく(ややセンセーショナルに)解説された本。
    論文成果や自治体保有のデータに基づいて、誠実な著述がされているな、という印象でした。
    当方は都市計画コンサルながら、住民活動的なまちづくり分野に関心が偏っており、土地利用計画分野の素養が薄かったため手に取りましたが、期待以上の勉強になりました。
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    投稿日:2020.05.05

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