【感想】雪之丞事件簿4 ヴィーナスの迷宮

あさぎり夕, あさぎり夕 / 集英社コバルト文庫
(1件のレビュー)

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  • yukiserigaya

    yukiserigaya

    確認先:稲城市立中央図書館

    わたしたち(セクシュアル・マイノリティ)は「成り上がり者」として生きるのか、それとも「パーリア」として生きるのか――「ユダヤ性」なるものをめぐって思考し続けたハンナ・アーレントのような問いを突きつけられる。無論、それはあさぎりの読みと宿題ではない。しかしながら、そうした観点から眺める時、とても荒涼とした何かを感じずにはいられないだろう。

    前作である『ガブリエルの遺言』で表面化するカミングアウトとホモホビックな世界から「逸脱者」としてつまみ出されるシーンは、主人公に降りかかるというわけではない(主人公のいとこに降りかかる)ので、読者の中には他人事として眺めることができただろう。しかし本書ではそういってしまうことは困難である。あさぎりは軽い気持ちで書いたのだろう。しかしこの問題は重要である。評者はこのシーンで頭をガンとやられてしまった。

    繰り返す。わたしたち(セクシュアル・マイノリティ)は「成り上がり者」として生きるのか、それとも「パーリア」として生きるのか、と。
    おそらく、その向こう側を描くことがあさぎりにはできなかったのだ(このシリーズが5巻で止まってしまっている要因の一つに、こうした問題を安易に入れてしまって自分の答えが導けなかったという側面は否定しきれないだろう)。しかし彼女が出来なかったからといって「わたしたち(ここには異性愛者も含まれる)」ができないということを簡単に口に出すことはできない。

    なぜならば、「成り上がり者」として生きるか、それともパーリアとして生きるのかということは、誰もが悶えながら問いに答え続けなくてはならないのだから。
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    投稿日:2009.11.16

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