【感想】疲労とはなにか すべてはウイルスが知っていた

近藤一博 / ブルーバックス
(17件のレビュー)

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ブクログレビュー

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  • rosy

    rosy

    ヘルペスウイルスを研究していた著者が、「疲れるとヘルペスが出る」という現象を利用して行った疲労に関する研究とそこから発展していった研究、それらの研究から考察されることをまとめた一冊。
    疲労の種類や、うつ病の危険因子であると考えられる遺伝子「SITH-1」、新型コロナウイルス後遺症など、様々な観点で疲労について述べている。

    聞いたことのない用語が多く、自分には本の内容の5,6割しか理解はできなかったかもしれない。
    しかし要点は繰り返し解説されていて巻末には用語の索引もあり、読者が分かりやすいように工夫されているのが感じられた。
    疲労への対処に関する情報は多くなかったけれど、疲労回復力を高めるために必要なこと等、参考になる部分があって良かった。
    また、ヘルペスのウイルス研究がうつ病の研究へと繋がっていったことをはじめ、様々な研究が繋がりながら進展していくのがとても興味深い。
    今後研究が進み、うつ病の治療法や予防法が確立されることを期待したいと思えた。
    疲労の研究に限らず様々な分野の研究が大切に扱われ、より大きく発展していくと良いなと感じた。
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    投稿日:2024.05.05

  • ボンベべ

    ボンベべ

    生理的疲労と病的疲労という2種類の疲労があり、後者は脳内炎症を伴うことが特徴とのことです。病的疲労の代表がうつ病であり、そのメカニズムは新型コロナウイルス後遺症と深い関連があることが述べられています。
    結論から言えば、うつ病の原因とされるウイルス由来の遺伝子SITH-1が発現して作られるタンパク質と、新型コロナウイルスのスパイクタンパク質に含まれるS1が、似たような経路で脳内炎症を起こすとのこと。

    かなり分かりやすく解説されていますが、専門用語も多く、ある程度背景を知っていないとなかなか読むのに苦労しそうです。
    エナジードリンク(というか抗酸化物質?)に頼って無理をすることが危険な理由や、軽い運動が本当に疲労を軽減させるメカニズムが書かれており、普段の生活の参考にしようと思いました。



    まず生理的疲労の「疲労感」とは体の各所で起こる炎症によって産生された炎症性サイトカインが(血液脳関門を通って)脳に届くことによって生じます。特に肝臓で産生される炎症性サイトカインが疲労感に影響しているとのことです。
    一方で、疲労感の原因、すなわち「疲労」は、eIF2αというタンパク質がリン酸化されることが発端です。労働・訓練などの負荷やストレスによってリン酸化酵素が誘導されると、結果的に炎症性サイトカイン産生やアポトーシスにつながっていきます。

    ところで、我々の体にはHHV-6というヘルペスウイルスが潜んでおり、これもeIF2αのリン酸化によって再活性化し、唾液中に増加します。
    このHHV-6が嗅球のアストロサイトに感染し、それが持つ遺伝子SITH-1(シスワン)が発現すると、細胞内のカルシウム濃度を増加させます。すると嗅球のアポトーシスが起こり、脳内でアセチルコリン産生が低下します。アセチルコリンが減ると抗炎症経路が効かなくなってしまいます。いわばブレーキを失った状態です。さらに、疲労によって産生された炎症性サイトカインが脳内に到達すると、炎症のブレーキが効かずに脳内炎症が発生します。

    新型コロナウイルスのS1も同じで、嗅球のアポトーシスを引き起こしてアセチルコリン産生を低下させ、抗炎症経路が効かなくなったところに、コロナウイルス感染によって起きた肺での炎症に由来する炎症性サイトカインが供給され、脳内炎症が起こります。
    コロナウイルスにかかると前述のHHV-6も再活性化するので、コロナウイルスがなくなった後も、HHV-6のSITH-1のせいで先ほどと同じメカニズムで後遺症として症状が長引くとされています。
    いわばS1とSITH-1による脳内炎症のリレーです。

    現在、新型コロナウイルス後遺症の治療薬として治験中のドネペジルが、抗うつ薬としても使えるのではないかと期待されています。
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    投稿日:2024.05.05

  • kun92

    kun92

    ウイルスが知ってるっつうから、疲労はウイルスが引き起こすのかと思ってたら、疲労によりウイルスが活発に活動するようになるので、それを調べれば疲労の程度が測れるということかと思ってたら、究極の疲労、うつ病の原因がウイルスであるという大転換。

    そもそも、疲労と疲労感は違う。
    疲労感を抑えることで疲労が進行し、下手すりゃ過労死する。

    生理的疲労と、病的疲労も違う。

    疲労に関わる炎症性サイトカインという物質が疲労感の原因であるが、これがまた、口唇ヘルペスのウイルスを活性化して、そいつがうつ病の因子となる。
    うつ病発症して、仕事辞めるより自死を選んだりすることも、脳の炎症を抑える機能がまず低下した後で、疲労により脳が炎症を起こすのでもう、正常な判断が出来ない。

    武漢肺炎による倦怠感、後遺症も、実は仕組みがそっくりなんだそうだ。

    言葉濁しているが、悪名高いコロナワクチンもこれを引き起こす原因になると、言っちゃってますよね?

    実に興味深い内容だった。当たりのブルーバックス。
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    投稿日:2024.05.02

  • あんこ

    あんこ

    疲労と疲労感の違いさえ、よく分かっていなかったのでとても勉強になった。
    コロナの後遺症やウツなど、身近な例が挙げられていて分かりやすかった。疲労とは脳の炎症だった。
    真面目な部分も良かったけれど、SF的な見解と前置きして語られていた箇所が特に面白かった。ロマンがあふれていた。この部分だけで本を出して欲しいと思った。続きを読む

    投稿日:2024.04.27

  • Masahiro Sera

    Masahiro Sera

    疲労って、身体や精神に負荷を与えると感じるもので、それは人の感受性でレベルは変わるし、例えばきつい仕事でも、自分のためになると言うポジティブな気持ちでいたら、疲労なんて感じないでしょ、と思っていたが、どうやらそんな単純なものではないようだ。
    疲労には、①生理的疲労 ②病的疲労 があり、生理的疲労の疲労感は、末梢組織の炎症性サイトカインが脳に入ることで生じるとのこと。
    「疲労は精神の持ちよう」と言う考えは「疲労感がマスクされる」と言い、これも心身疲労を気付かずに無理をし、心筋梗塞や脳卒中等で急死する原因となるようだ。

    専門的な単語が多く、説明もついていけないところは多かったが、それは著者がSITH-6と言う疲労やうつ病の原因となる遺伝子を発見したと言うことで、それなりの説明を要したのだろう。
    一般の人は、あまり専門的なことより、題名「疲労とはなにか」にある通り、そのメカニズムがイメージ出来るだけで充分。なので、詳しく述べているところは飛びし読み。

    学べたこと
    うつ病の定義で、次のどちらかがあることは必須。
    ・殆ど一日中、抑うつ気分を感じる
    ・殆ど一日中、すべての活動に興味や喜びを感じない

    うつ病は病的疲労であり、主な症状の一つは疲労感。それは脳内炎症によって生じる。
    そしてS1TH-1と言う遺伝子は、うつ病を引き起こす原因とみられる。

    うつ病になりやすい性格の特徴は、真面目、仕事熱心、秩序やルールに忠実、献身的、責任感が強い、頼まれると嫌とは言えない、といったものが挙げられ、ストレス耐性が低い性格ともいえるが、ストレス耐性の高い人の性格を見ると、対人関係に極めて鈍感で戦力にならないという結果が出るようだ。

    脳の抗炎症機構が正常に働いていれば、労働や運動による疲労で炎症性サイトカインが大量に産生されても、脳内炎症は起こらず、病的疲労にまでは至らない。

    疲労感は組織に危機が近づいていることを知らせる「生体アラーム」なので、疲労感を弱めてしまってはいけない一方、身の危険から逃げる時は疲労感による行動抑制は、死に直結する。そこで役に立つのが、ストレス応答によって疲労感を抑制するシステム。
    しかしこの状態は、副腎皮質ホルモンとアドレナリンやノルアドレナリンによって「疲労感」が抑制されているだけなので、「疲労」即ちeIF2αのリン酸化による細胞の障害は、どんどん蓄積され過労死に至る。

    怖いエナジードリンク
    酸化ストレスは、生理的疲労の原因であるeIF2αのリン酸化を誘導する因子の一つ。
    エナジードリンクに入っている抗酸化成分は、このeIF2αリン酸化を抑制する可能性がある。ところが実験の結果、疲労感のもととなる炎症性サイトカインが最も強く起こる肝臓ではeIF2αリン酸化は抑制されたが、他の組織では全く抑制されていなかった。
    恐ろしいのは、抗酸化剤によって疲労感のもとになる肝臓で産生される炎症性サイトカインが減少するため、脳は「疲れていない」と解釈し、体を休ませるシグナルを出さないことだ。このため、他の組織を使って過剰なeIF2αリン酸化を生じさせてしまい、組織の障害や、ひいては突然死を招いてしまう可能性があるのだ。
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    投稿日:2024.04.21

  • かたくり

    かたくり

    生理的疲労 疲労により細胞に負荷をかけるとIRSが反応細胞の動きを止めm炎症性サイトカインを産生、脳に伝わり疲労感をもたらす。

    疲労感:ISRにより生産された炎症性サイトカインが脳に伝わり生じる感覚
    疲労:ISRを引き起こすeIF2aのリン酸化による細胞の停止や細胞死
    ISRによる炎症性サイトカインの発生量は疲労により量が変わる。疲労が強いといときは生産を減少させ、過剰な炎症や自己免疫性疾患に進展させないよう生成を抑える。

    略語 
    HHV-6 ヒトヘルペスウイルス6
    統合的ストレス応答 ISR 酸化ストレス、小胞体ストレス、アミノ酸不足、ウイルス感染などの様々なストレスに対応し、mRNAでのたんぱく質合成をする際にeIF2aをリン酸化するこれによりたんぱく質合成ができなくなっている。強く反応した時はアポトーシスを引き起こすことも。先の合成できなくなったたんぱく質と葉別の、ストレスに応答するためのたんぱく質も作られる。これによりHHV-6 の遺伝子に働きかけ再活性化を引き起こす。
    HPA軸と疲労感 ノルアドレナリン、アドレナリンは興奮すると疲労感を抑制する。副腎皮質ホルモン(一尾庵的にステロイドホルモン)は炎症性サイトカインを抑制するこれにより疲労感を弱める。ストレス反応は「闘争・逃避反応」とも言われ、いざというときに疲労感で動けなくなるのを防ぐため、疲労感が少なくされると考えられている。疲労感をあまり感じていなくても、HPA軸によるeIF2aのリン酸化による細胞の障害は蓄積されて行っている。この蓄積が過労死(心不全などの臓器障害)につながっていると考えられている。

    ストレス応答は疲憊期(ヒハイキ)ももたらす。HPA軸の細胞が疲れ切り、」副腎皮質ホルモンが出なくなる。炎症性サイトカインを抑制できなくなり濃度上昇。疲労感も一気に高まり、疲労困憊状態になる。

    エナジードリンクによる疲労軽減 ドリンクに入っている抗酸化成分はリン酸化を抑え疲労もよくせいできる。心臓、脳、きんにくなど体の組織では抑制されないことが分かってきている。
    抗酸化剤により肝臓で生成される疲労感の元、炎症性サイトカインは抑制され、脳は疲れていないと判断し、体を休ませるシグナルを出せなくなる。→体の組織を使い過剰なリン酸化を引き起こす。
    →組織の障害・・・過労死へと続く。

    生理的疲労から回復するには、リン酸化eIF2a脱リン酸化酵素の生成を促せばよい。→軽い運動で促せる。
    ビタミンB1は不足すると疲労回復力が大きく低下する。
    下記栄養成分は、リン酸化eIF2a脱リン酸化酵素を増加作用、疲労回復指数をぞうかさせる作用がある(=生理的疲労を回復させる)また心臓での炎症性サイトカインの抑制もしている。かんぞうにおける炎症性サイトカインの抑制は抗酸化性物質よりもつよくはない。(摂取しても疲労感の低減、疲れが取れたとは感じにくい。
    ・ガンマ・オリザノール 米糖に含ませる成分
    ・ケルセチン 卵やリンゴに多く含まれる
    ・アンセリン イミダゾールペプチドの一種。持久力のある肉類に多く含まれる(マス・カツオ・鶏むねにくなどあ9
    ・ベータ・アラニン 哺乳類の筋肉に含まれるカルノシンの分解によって生じる。

    慢性疲労症候群
    その原因はほとんど不明


    うつ病の診断 喜びの消失、抑うつ気分 疲労感
    原因として最も重要視されているのは、脳の炎症(脳内の炎症性サイトカイン)
    この炎症の原因は何か=うつ病の原因は何か と考えられている。うつ秒は遺伝性があり、30から50パーセントとされる。これは高血圧の遺伝率とほぼ同じ。腸内マイクロバイオームが関係しているのではともされていたが影響されるのはアレルギーと脂質異常症=肥満とわかり、腸内の炎症が脳の炎症を亢進するのではないかとの仮説の段階になっている。以前の研究ででた腸内細菌とうつ病に関係があるのでないかは、無菌マウスを利用した実験で、腸内細菌を0にするとうつ病になるとい現象を観察したに過ぎなかった。
    筆者はうつ病を引き起こす原因とされる、「SITH-1」を発見。これはHHV-6が宿主のアストロサイトに潜伏感染しているときに発言する。環境因はストレスと疲労。SITH-1を発現させたマウスは小さなストレスでもHPA軸が過剰に反応し打つ症状を引き起こした。が脳内炎症は見られなかった。うつ病が遺伝するように見られるのは、HHV-6が親から子へ感染するためとみられている。

    SITH-1はアセチルコリンを不足を引き起こすことが分かっている。

    新型コロナ後遺症は脳の炎症が原因と考えられている。通常の抗炎症薬では改善されず、認知症治療薬の「アリセプト」が使用されている。この薬は脳内のアセチルコリン生成を促す作用がある。脳内の
    アセチルコリン減少は脳ない炎症を引きおこしていた。

    うつ病患者 脳内炎症はSITH-1+炎症性サイトカインの火種、疲労が引き起こされる。

    新型コロナ後遺症の長期化のメカニズムは不明
    新型コロナ後遺症で検出される自己抗体は慢性疲労症候群で検出される自己抗体も多く含まれている。が自己免疫がどのように誘導されいるかそしてドノヨウニ疾患を引き起こすかはよくわかっていない。多く含まれているのは観察できるがこの自己抗体が何をしているのかまではわかっていない。


    生理的疲労と病的疲労の差は脳内に炎症があるか。
    生理的疲労が病的疲労に変わるときの流れ
    運動による生理的疲労はeIF2aのリン酸化を亢進、HHV-6 を活性化→SITH-1が発現。脳のコリン作動性抗炎症(アセチルコリンの抑制)がおこり、ここに生理的疲労からくる炎症性サイトカインがプラスされて行的疲労となる。
    病的疲労と生理的疲労を見分ける方法 唾液中のHHV-6 の量を調べる。病的疲労ではこの量が減少しているのが分かっている。疲れているときはHHV=6 を調べるといいが検査している病院は少なく、検査料も高額となっている。

    第6章は著者の空想が多く、ここには残さない。



    プレパルス・インひびしょん 双極性障害の検査でも行わせるおとの敏感性の
    を調べるテスト


    ストレス 強い刺激を受けたときに、対抗するために体に備わった抵抗反応。
    ストレッサー ストレスの強い刺激ののこと
    ストレス応答 抵抗反応

    HPA軸 ストレス反応一種 視床下部→脳下垂体→副腎が関係するストレス反応。いわゆる仕事のストレスを言われるものだと考えられている。
    CSH 副腎皮質刺激ホルモン 
    ACTH 副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン 
    副腎皮質ホルモン:コルチゾールなど
    PEM 労作後倦怠感 軽い労作やストレスのあと数時間から24時間後に急激に強い倦怠感(だるさ)が出てしまう症状
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    投稿日:2024.04.03

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