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永井龍男 / 講談社文芸文庫 (1件のレビュー)
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setsusan3
このレビューはネタバレを含みます
皿皿皿と皿の途中の章を読んでいる時、今すごいものを読んでいるという思いになった。それなのに後半、自分の気持ちが離れていって、そのまま読み終えてしまった。 惚れ込むほどに上手さのある作家だ。けれどもこの作家を上手い作家として見てはいけないように思う。皿皿皿と皿を肯定するためには、批評が必要だ。この作品解説では四季折々の季語を織り交ぜた、俳句的な要素のある作品だと書かれているが、それもそうとして、永井の奥底に迫るような切り口を見つけなければならない。コチャバンバ行きの終わり方には、作品全体を包み込むような(そのような終わり方を、終わりというのだと僕は思う)確かな力があった。だから好きだったのだ。僕は、小説というのは終わり方がほんとうに大切だと思っている。 けれども、この作品集から良い言葉をたくさん知ることもできた。良い言葉を知ると、そこから良いものに出会える。「落葉松」という単語が出てきて調べてみたら、島倉千代子の「哀愁のから松林」という歌を知ることができた。島倉千代子のことが好きだと気づいた。こんなふうな贈り物をしてくれるから、やっぱり本を読むって素敵なことだ。
投稿日:2023.06.18
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