【感想】誤配書簡

ウォルター・S・マスターマン, 夏来健次 / 扶桑社BOOKS
(1件のレビュー)

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ブクログレビュー

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  • Konstanze

    Konstanze

    この世にはまだまだ読むべき面白い本が、たくさんあるらしい。
    ウォルター・S・マスターマンの名は、初めて聞いた。
    その著作を初めて読んだ。
    面白い!
    私はなぜマスターマンの名を今まで知らなかったのだろう

    1920年代のイギリスが舞台である。
    ロンドン警視庁警視アーサー・シンクレアの元に、ある日、電話があった。
    女性の声で、ある要人を殺害したと言う。
    たちの悪いいたずらかと思っていたが、私立探偵で、友人でもあるシルヴェスター・コリンズがやってきた。
    シンクレアからの電話で呼ばれたという。
    もちろん、シンクレアにはそんな覚えがない。

    そうなると、さきほどの殺害報告の電話がいたずらと思えなくなる。
    シンクレアとコリンズは、急いでその人物の家へと向かった。

    男性二人組でミステリーとなると、ホームズ(探偵)と、ワトソン(記録者)という定番の分担を思い浮かべるのだが、これはそうではない。
    二人それぞれが、時に同じに、時に離れて捜査をすすめていく。
    それぞれ得意な分野があるのと、二人の自由度合い――探偵は自由に動けるが、公僕の刑事はそうもいかない、などの理由もある。

    読者は二人に連れられて、ロンドンとデボンシャーを行き来することになる。

    これが、おどろくほど、するする読めるのだ。
    17にわけられたこまかな章立てが、解りやすさの助けになるのか、原文がよいのか、翻訳がよいのか、両方がよいのか、序文の"煽り"にのせられて読む勢いがいやましているのか――

    そう、この序文もまた一つの大きな読みどころなのだ。

    『わたしは己が真正な心情のすべてにかけて、のみならず厳正な責任のすべてにかけても、この探偵小説にはみごとに欺かれたと公言することができる。』(序文)

    なんともたいそうな小難しく態度のでかい一文ではじまるこの序文は、G・K・チェスタトン(チェスタートン)によるものなのだ。

    『傑作は序文など必要ないとしても』と断りをいれながら『序文を書かせていただくことを自ら進んで望むものである』とへりくだった後、チェスタトン御大のペンは、この『往復書簡』への熱い讃辞へと発展するのだ。
    あの、G・K・チェスタトンがここまで述べるとは!
    驚きとともにページをめくれば「第一章 事件」、そしてすぐさまあの電話である。
    これが読みすすめられずにおくものか。 

    ページを次々にめくり、驚いたり、うなったりしながらも、さて、頭の隅では常に疑問がちらついているのだ。

    私はなぜマスターマンの名を今まで知らなかったのだろう?

    ウォルター・S・マスターマン(1876~1946)はイギリスの作家である。
    ミステリーだけでなく、ファンタジー、ホラー、SFなど、多岐にわたる作品を書いていた。
    この『誤配書簡』は1926年に書かれたもので、かなり初期の作品らしい。
    マスターマンの執筆時期はおよそ1926年から46年とみえる。
    同じ頃にデビューしたのは、アガサ・クリスティーだ。
    1920年にデビューした彼女は、1926年『アクロイド殺し』を発表し、これから"女王"へと階段を上っていくところだ。
    1927年、コナン・ドイルは『シャーロック・ホームズの事件簿』、ホームズものの最後の短編集を出した。
    G・K・チェスタトンは、ブラウン神父シリーズを、次々と発表している最中だ。
    豪華絢爛、群雄割拠する時代にあって、マスターマンの作品は、埋もれてしまったのかもしれない。 

    まったく残念なことである。

    けれども、今日現代もまた、豪華で恵まれた時代であるのだ。
    こうした埋もれた名作を丹念に掘り起こして、私たちの目の前に、どうぞと広げてくれるありがたい人達がいる。
    そうして、私たちは、それを電子書籍やオンデマンド書籍という方法で受け取るのだ。

    つまり、この『誤配書簡』という本は、本屋の書棚には並んでいない。
    Amazon、楽天ブックス、三省堂書店に注文することで、1冊1冊そのたびに印刷され、送られてくる。
    (三省堂では、書店にて注文、受取の形になる。くわしくは三省堂オンデマンドページへ)

    では、立ち読みができないのか、買うのに躊躇するなあという方もいるだろうが、問題ない。
    恵まれた時代であるところの現代は、居ながらにして立ち読み試し読みができるのだ。
    Amazonの試し読みもあるのだが、驚くほど短く、傷つくほどむごいところで終わっている。

    それにくらべて、BOOK☆WALKERは読みやすい。
    チェスタトンの序文がすべて読め、第一章の冒頭まで読める。
    そのまま、電子書籍で買うこともできる。

    ともあれ、こちらで試し読みはしていただきたい。
    序文が、当然ながら、素晴しいのだ。
    その上で、どう手にするかを決めていただきたい。

    Amazon、楽天ブックスでも、電子書籍として読むこともできる。
    紙の本にくらべて、かなり安くなるのも魅力である。
    ウォルター・S・マスターマンは読むべきだ。
    埋もれたままでは、著者にとっても、読者にとっても、悲しいではないか。

    BOOK☆WALKER 『往復書簡』はこちら
    https://viewer-trial.bookwalker.jp/03/9/viewer.html?cid=90dac600-9a48-4bbb-8195-b73251c0c999&cty=0

    三省堂オンデマンドページはこちら
    https://www.books-sanseido.co.jp/service/ondemand/
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    投稿日:2021.04.02

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