【感想】花に舞う・日本遊民伝 深沢七郎音楽小説選

深沢七郎 / 講談社文芸文庫
(1件のレビュー)

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    深沢七郎の、音楽に関連する小説を集めた短編集。
    深沢七郎は小説を書くよりも前からずっとギターを弾き、歌ったり作曲したりもしていた。彼の音楽上のスタイルはよくわからないが、たぶん、民謡系/歌謡曲系/本来の意味での日本フォーク系だったようだ。
    この短編集に収められている作品には、既読のものもあり、相変わらず妙な味を残すもののどうということもない小品もあるが、最後の2編にとりわけ惹かれた。
    「変化草」は中学生のとりとめもない日常を描き、なるほど深沢の語り口は、思考のまとまりのない中学生的光景をうつしだすのに適していたんだな、と気づいた。イデオロギーとも芸術とも「内面」とも関係なく、ひたすらに生き続け、最後にはどうということもない反抗・暴力の小爆発があって、淡々としたなかにカタストロフの予感を秘めている。
    最後の「日本遊民伝」はいっそうとりとめのない構成で、退屈な生の遊びが庶民のなかに繰り広げられていくのを茫漠と描き出した作品。
    興味深いのはラスト近くで、「前衛」芸術家のグループが登場するところ。たとえばフランスパンに絵の具を塗って、ウンコのように見せて壁にぺたぺた貼るというような、オブジェ的な美術が描写されている。
    「不思議にこれらの作品は汚くない。不思議に、思いもよらない感銘を受ける何かを持っている。これらは、きっと、この現代から逃れようとしている若者たちが作るからだろう。」(P251)
    深沢七郎はくそ真面目な芸術論をぶつタイプではないし、理論も思想もなく、自身の音楽は(広い意味での)民俗的、大衆的な音楽であったが、このように、「前衛的」現代芸術にも何かを感じていたようなのである。それは理屈をはなれた皮膚感覚的な、時代のセンスへの共感であったのだろう。
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    投稿日:2013.07.29

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