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長岡求 / ビジュアルだいわ文庫 (1件のレビュー)
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touxia
この植物図鑑は、おもしろい。著者は、植物が好きで、千葉大学園芸学部を卒業後、鉢物専門市場(現・フラワーオークションジャパン)に入社し、以後花き市場一筋で、花について「歩く植物図鑑」とも言われる。仕事の…一つに「植物の名前を調べる」ことがある。商品名として植物の名前をコンピュータに登録することからきている。NHKテレビ「趣味の園芸」の講師をしており、「趣味の園芸」のホームページでは、ブログも掲載している。著者は、実にたくさんの植物図鑑を出しているのだ。植物図鑑を出すことをライフワークにしているような人だ。いまの時代は、ネットでググれば、植物の情報は得られる。もともと、図鑑を読むことはなく、知りたい情報を得られれば、図鑑の役割は終えたことになる。だから、植物図鑑のブックレビューは、やりにくいというかしない。 ところが、「マニアが教える」ときた。著者自身を「マニア」と呼び、「マニア」が植物を紹介するのだ。著者は「マニアとは、自分な好きなモノやコトに集中して取り組む、あるいはモノを収集する人たち」である。まさに、植物好きの変人とも言える。昔の言葉を使えば「道楽」とも言える。その道楽は、文化を作ってきた。著者は球根好きなので、「玉マニア」(ちょっときわどい)というそうだ。 アマゾンのレビューでは、「カラー写真がふんだんに使われているのは結構なのですが、内容についてはまず図鑑として成立していません」などと書かれている。いいぞ。そういう図鑑として成立していないことに、意味がある。自分の好きな植物や興味のある植物を説明することに良さがある。 結局は植物の情報とは、一般人には、名前がわかり、どのような育てやすいかどうかがわかればいい。著者は、仕事の傍に植物を栽培するには、管理が容易で、水やりの回数が少なく、日本の気候にあったものを育てるとすると球根がよいと思って、球根を栽培し、育種している。そのために、世界中を駆け巡り、情報を集め、タネや球根を取り寄せる。その結果が、この本だ。 著者の興味を持っている球根とは、ブルンスビギア(葉がおもしろい。花が圧巻というが画像がない)、マッソニア(花の咲き方がおもしろい)、アルブカ(葉がバネのようにカールする。葉がなぜカールするのか?)、ハエマンツス、レデボウリア(開花に10年かかる)、ネリネ、リコリス(曼珠沙華)、キルタンサス、テコフィレア(ブルーの花が美しい)、キアネラ、シラー、アネモネが挙げられている。 次に、愛好家の全国組織がある植物を挙げているが、日本の花文化は江戸時代に花開いた。アイリス、ギボウシ、ツバキ、ヘレボルス(クリスマスローズ)、サクラソウ、ユキワリソウ、ヤマアジサイ、シャクナゲ、クンシラン(緑の花があるのだ)、スミレ、サクラ、ボタンなどを紹介する。なるほど、いま江戸の花文化に興味を持っているので、ちょうどいい。花に対して「かわいい」というのは、なぜか?という話もいいなぁ。 熱帯植物は、観葉植物となる。山野草は確かに趣味の世界だ。「青軸、白花」が趣味家の中では欲しがられるという。そして、サボテンの世界へ。うーん。今は、サボテンブームになっている感じがある。サボテンは、やはり花に意外性がある。 この本の編集力には、感心する。時折あるコラムがいい。わたしは、このコラムだけで本を作って欲しいと願っているのだが。 本書は、「マニアによるへんな植物たち」と言っていい。植物における分脈やストーリーを語る本がもっとあっていいと思う。本書は、ヘンタイ的な好書である。続きを読む
投稿日:2021.09.26
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