【感想】富士

武田泰淳 / 中公文庫
(5件のレビュー)

総合評価:

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ブクログレビュー

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  • おびのり

    おびのり

    戦時下の富士の麓の精神病院(どちらでも良いけど、静岡県側)が舞台。
    精神病患者、医師、その家族、時として軍側の人間の狂気と正常が濃密に入り混じる。
    その精神世界の中心は、研修医の医師。
    それぞれの立場からの意思と感情の対話で成り立つ。その会話の主体が、読んでいると不明確になってくる。
    本作の紹介には、深い人間哲学を繰り広げる武田文学の最高傑作とあるが、そこまで読み取れたとは思えないです。
    堀江敏幸解説 神の言葉はいつも遅れて届けられる に樹海に足を踏み入れるというような表現があるが、なかなかの大作で飲み込まれしまって、レビューを残せるほど理解していない。
    とはいえ、そこには精神論のようなものや心理学的なものはなく、狂気だけでなく死までもコミカルに語る娯楽性があると思う。
    珍しく図書館の期間延長をして読みました。狂気と正常の境界という精神世界を描くというより、混沌に迷い込ませながら、果てない人間の意思の謎を掘り下げながら、突き放す、心地良く気持ち悪い感じ。
    評価できるほど読み取れなかったけれど、なんかすっごいと思うので、高評価です。
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    投稿日:2023.10.07

  • 英語ワクワク

    英語ワクワク

    この小説は同調圧力や、声の強いものに対して無自覚・無批判に順応していく我々を描いていると思った。私は私なりに(それが正しいかどうかは別にして)この結論にたどり着いたが、そこに至るには能動的な作業が必要だった。武田泰淳の狙いはソコにあるのではないだろうか。

    戦時下の精神病院を舞台にした小説なので、正常と対になる「患者」たちの存在が、患者以外の人間を浮き彫りにする。「富士」や「宮様」と紐づけられた価値観を前に、思考停止している我々のほうが病んでいるのかも。この世は茶番なり。


    「一つの恍惚状態に向かって統一されていく、昇華されていく」P553
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    投稿日:2022.02.12

  • cxcnishimura

    cxcnishimura

    このレビューはネタバレを含みます

    「戦時下」の「富士山麓」の「精神病院」を舞台に設定し、描かれた小説。武田泰淳の代表作と評される小説で、「狂気とは何か」「性欲とは何か」「この世に生まれ死んでいくということはどういうことなのか」等、人間の根源に迫る問いを発する小説となっている。テーマは難解も、「登場人物間の対話」が魅力的で、かつ事件も複数発生し、多くの人が死んでいく。さながら、ドストエフスキーの世界にも似た世界も、東洋風曼陀羅の世界。武田泰淳の富士山荘の実体験も反映されており、武田百合子氏の富士日記に書かれている犬の死も百合子氏とともに出てくる。主人公の名前の大島も、もともとは武田泰淳のもとの姓。武田ファミリーの世界を知っている人たちには、より身近に感じられる世界でもある。描かれている世界は、「仮想世界」で奥深いが、「遊び」があり、それがこの小説をより現実世界に近いものに感じられるようにしている。一生の中で必ず読んでおいた方がいい本の中の1冊。

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    投稿日:2020.07.14

  • 中央公論新社

    中央公論新社

    悠揚たる富士に見おろされる精神病院を舞台に、人間の狂気と正常の謎にいどみ、深い人間哲学をくりひろげる武田文学の最高傑作。〈解説〉堀江敏幸

    投稿日:2019.03.11

  • toca

    toca

    新装版で再読。
    本書はかなりクォリティの高い『幻想小説』でもある……と思っているのだが、賛同してくれる人はいるのだろうかw

    投稿日:2018.09.01

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