【感想】闘争領域の拡大

ミシェル・ウエルベック, 中村佳子 / 河出文庫
(18件のレビュー)

総合評価:

平均 3.6
2
7
6
1
0

ブクログレビュー

"powered by"

  • ふみ子

    ふみ子

    初ウエルベックなので読み方が手探りだった。
    主人公の「僕」と醜男ティスランが主流になり、恋愛という自由主義を求めて彼らの世界が「拡大」していく。
    そう信じていたにも関わらず、その拡大の仕方が頑張れば頑張る程に良くない方向へと転落してしまう。
    ウエルベックを読むにあたり、登場人物に同情(共感)する事によって読み手の世界も拡大していくとあとがきで分かった。
    仕事、恋愛、性生活とテーマが3つあるけど、登場人物全てが日常に潜む人間ばかりでよりリアリティを帯びる。
    主人公は観察者であり、観察する事により自分の内部で噛み砕いて分析をするけれど、取り込むことはせず、だけど敏感に感じやすい体質なのかマイナス面ではかなり感化されて苦しそうに感じた。
    最初はうっすらとだけど進めていくと、その感情や分析が重く苦しいものに様変わりしてしまう。
    哲学的描写なのでもっと色々考えたりしたいけど、あと何冊かウエルベックを読まないとそこら辺はなんとも言えない。
    確かに面白かったけど、その先にまだまだ何か色んなものが隠されている感じがした。
    時には含みを持っていた書き方だったりしたから、作品をもっと読んでそれが何かを加味していきたい一冊だった。
    続きを読む

    投稿日:2024.03.24

  • 公園

    公園

    闘争領域で闘う同僚など、身の回りの人物を、主人公のシニカルでありつつも同情に満ちた目線で描く。最後、主人公は鬱になって闘争領域を完全に脱落するのだけれど、何故か清々しい。現代人に向けた、いい小説だ。

    投稿日:2024.03.15

  • miu

    miu

    このレビューはネタバレを含みます

    現代社会は、経済だけでなく、「性愛」も自由化され、富めるものとそうでないものの格差が拡大している。このような話は、しばしばSNSで話題になっている「弱者男性」問題にもつながっており、ここ数年は熱をもって議論されていることだが、ウェルベックがこの問題を30年も前に小説のテーマにしている点が興味深い。主人公は容姿がよくない同僚のティスランを心の中では散々馬鹿にしており、実際にティスランは性愛に関してひどい目に遭ってしまう。ただ、主人公の心情描写から、自由恋愛の世の中に果敢に立ち向かっていき、最後には不慮の死を遂げる彼を、著者は心の奥底では敬意を払っているのではないかという印象を受けた。愛を得られない者の哀れさを描きつつも、そういった者に対して寄り添いを感じる不思議な作品だった。

    フランスでも話題になったようだが、現代の日本で広まればそこそこ議論を生みそうな一作である。

    レビューの続きを読む

    投稿日:2023.12.25

  • wren

    wren

    このレビューはネタバレを含みます

    23.3.25〜4.10

    この作品の語り手は、後のウエルベック作品の主人公とはちょっと饒舌さの趣向が違うように感じた。
    自分の中で死にゆくものへの愛が溢れ出てくる最後で感動した。

    レビューの続きを読む

    投稿日:2023.04.27

  • grpcd

    grpcd

    初ウエルベック。インセル鬱病エンジニアの主人公が同僚の非モテ醜男と旅に出る。小説の形態をとりながらその中身はエッセイのような、論文のような、アジテーションのような。厭世的ではあるが世界を観察する眼差しを捨てることは決してできない。そんな哀しさに満ちている。皮肉たっぷりの持ってまわった言い回しは痛快で面白いけど物語として面白いかと言われると…??続きを読む

    投稿日:2023.01.27

  • captain

    captain

    服従を読んでコイツとは全く理解し合えない、と突き放しかけたんだけどちょっぴりそうなのねって寄り添えた

    投稿日:2021.12.08

Loading...

クーポンコード登録

登録

Reader Storeをご利用のお客様へ

ご利用ありがとうございます!

エラー(エラーコード: )

本棚に以下の作品が追加されました

追加された作品は本棚から読むことが出来ます

本棚を開くには、画面右上にある「本棚」ボタンをクリック

スマートフォンの場合

パソコンの場合

このレビューを不適切なレビューとして報告します。よろしいですか?

ご協力ありがとうございました
参考にさせていただきます。

レビューを削除してもよろしいですか?
削除すると元に戻すことはできません。