【感想】九龍城探訪

グレッグ・ジラード, イアン・ランボット, 尾原美保, 吉田一郎 / イースト・プレス
(34件のレビュー)

総合評価:

平均 4.2
11
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ブクログレビュー

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  • 雨こんこ

    雨こんこ

    廃墟に関する本を探していた際にAmazonのお勧めに出てきた本。

    世界でも最大規模のスラム街として名の知れた香港の九龍城。1994年に残念ながら取壊しとなったが27000㎡の敷地に約350棟の建物がぎゅうぎゅうに立ち並び最盛期は約33,000人が住んでいたらしい。

    実は建物の構造等ハード面に興味を持ち購入したのだが、どちらかといえば城での生活事情や住人の半生が中心だった。しかしながらこれはこれでとても面白かった。

    「食べるものだと思われているから鳩にお金をかけるのは馬鹿らしいと思われている。」と鳩ブリーダーのチャンクァンリョン氏がサラッと発言し自国との食文化の違いを感じた。犬肉ヘビ肉はまだしも鳩も食うのか。


    本書を執筆したのは写真家2人。
    九龍城の住人や店子へ取材をしたもので今はもう決して目にすることが叶わない城内部の写真がふんだんに掲載されている。

    いや~、写真を見る限り不衛生でごちゃごちゃしている。カオス。
    福利会(175頁)やチェンクーンイウ氏の歯科医院(190頁)、城外では普通かも知れないがとても衛生的に見える。

    潔癖には絶対住めないけど、建物自体が生物のようなその妖しさに魅かれてしまう。
    ベランダには洗濯物や植木鉢が好き勝手に吊るされている。
    最近の綺麗な建物にはどこか無機質な感じを受けるが九龍城からは人間の営みを濃く感じる。
    159頁のキャプションにもあるが、ベランダは無茶苦茶に取り付けられており柵に統一感が無く、つぎはぎ手作り感が見える。
    (というかまずベランダの高さが揃っていない!)

    無秩序なのは勿論ベランダだけではなく、九龍城内の店舗では従業員の保険加入義務もない、休日手当も出さない、営業許可不要(税金を納めない)、その他諸々の許可(衛生や消防など)も不要。着色料の使用基準も知らずに使っていたようだ。

    唯一の規制が45メートル以下の高さ制限。これは啓徳空港が近かった為らしい。

    しかしそんな無法地帯でもそれなりの秩序があったらしく、泥棒と麻薬所持は多いものの、意外にも大きな犯罪は香港の他地域に比べてむしろ少なかったらしい。
    警察がきちんと定期巡回をおこなっていたのも驚きだ。買収されていた警官も多かったようで効果はなかったらしいが、少しは抑止力になったのでは。
    ここの住人はここにしかない居場所を守るため、近隣同士のつながりが強く、犯罪が起きにくかったのだろうか。
    日本でも治安が悪いとされている地域、実際の犯罪率を見ると他地域よりも低かったりするものだ。


    インタビューを受けていた32人の内、歯科医のウォンユーミンさんが印象に残った。

    他の住人は補償額に納得いかず不満たらたらの中、この人も満足とはいかないようだが、何も変えることはできないと、政府の言うことを受け入れるという。

    「誰にも迷惑をかけないから誰も迷惑をかけないでくれ。」
    「これまでここを出ることがなかったから、外の世界のことなんてわからないんだよ。」

    無欲さと諦観と。
    こんなこと思うのも偏見で失礼ではあるが、中国の方には珍しいタイプだなと少し思った。
    続きを読む

    投稿日:2023.11.18

  • まつお

    まつお

    「東洋の魔窟」を大解剖した一冊。
    九龍城に魅了された人達には是非手に取ってもらいたい。当時九龍城砦に住んでいた人へのインタビュー、内装や生活の様子が写真付きで詳しく書かれている。
    住人の私生活メインで、今や取り壊されてしまった建物なのでしかたがないが、外観の写真がもっと沢山あれば良いと感じた。続きを読む

    投稿日:2022.11.08

  • ぽろしり

    ぽろしり

     九龍城が好きな人なら持っていて損はないバイブル的な本だと思います。写真が多いのはもちろん、当時お住みになっていた方たちのお話や成り立ちの歴史なども書かれていて勉強になる一冊です。

    投稿日:2022.02.16

  • もるがな

    もるがな

    謎に包まれた政治のブラックボックス、香港最大のスラムであった九龍城で過ごす人々の生活をリアルに描いた一冊。当時、香港はイギリスの統治下でありながら、九龍城の領有権は中国側にあり、九龍城とはその政治的空白と権利の曖昧さにより誕生した20世紀最後の魔窟なのである。犯罪が横行する無法地帯のイメージが根強いが、それは以前の話で、実態は外と比較しても犯罪は少なく、住民の自己決定による独自のルールで成り立った自律性のある一つの社会なのだ。ピーク時は3万人が暮らしていたと言われる九龍城の外観は圧巻の一語であり、建築基準法をガン無視した行き当たりばったりの建物が犇いており、子供がブロック遊びをしたかのように自己増殖していく自由かつ悪夢的な九龍城のビジュアルは素晴らしく、写真だけでもその雰囲気がひしひしと伝わってくる。天井から滴る汚水。ネットにうず高く積まれたゴミ。九龍城内で精製された魚肉団子に無免許の歯医者、学校にストリップ劇場と、まさに自由奔放であり、その世界は凄まじい。水源が貴重であるというのは非常に面白く、ギャングのような集団が管理していたのは中々に興味深かった。九龍城自体の怪しさに反比例して住民の生活は穏やかで、だからこそ取り壊しに対する怒りの言葉は生々しく、その感情の行き所のなさには深く同情すると同時に一抹の哀愁を感じてしまう。個人的に刺さったのは日の光の刺さない九龍城の屋上の写真で、抜けるような空と足元のアンテナの残骸、そして住民の子供の笑顔とのコントラストが素晴らしく、団地住まいだった幼少期のことを思い出してしまった。続きを読む

    投稿日:2020.12.01

  • rinako

    rinako

    九龍城を退去することになると、もう城外では営業が難しいのが主に医者・歯医者・食品含む工場、という点が後半繰り返されている。

    投稿日:2019.06.16

  • なっちゃま

    なっちゃま

    現代日本に暮らしていては決して見る事のできない建物群に衝撃。写真を眺めているだけで面白いしワクワクする。

    投稿日:2019.01.06

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